15万hit御礼SS
Wand of Fortune
※
・オールです!
・誰かとCPとかではありませんが…ルルのことがお気に入りな面々ですv
・ミルスクレアは夏です!暑いという前提です。
・SSのED後に、キャラ別の後日談もつけてますv
『Dedicated magic&love』
「ビラール!ラギ!」
ビラールとラギの二人が一日の授業を終え、寮に戻る途中。
後ろからルルの今に跳ねとびそうな明るい声がかかった。
つい先日まで「暑い・・」と明らかに夏バテを起こしていたとは思えないほどの、元気な声。
「・・お前、いつでも元気だな。夏バテだーとかぬかしてたのはどこのどいつだ」
「元気なのはいいことだわ!ね、ビラールもそう思うでしょう?」
「ハイ。ルルはやはり、笑顔が一番素敵デスね」
ふふっと笑うビラールに、ルルも満更でもなさそうに笑みを返した後、あ、と思いついたようにビラールの顔を見上げた。
「あのね、ビラール。今日・・いいかな?」
「今日・・・ハイ。大丈夫デス。楽しみデスね」
今日、何をするのか。
何が、楽しみなのか…
主語が抜けてんだろーが!!おい!何だその含んだ言い方は!!
いつものように、ツッコんでいいのだろうか。
でも、何かツッコんでしまえば致命的に自分が傷つくような気がする。
む、と黙りこんで素知らぬ振りをして先に「オレは戻るぞ」と一言だけ声をかけるラギに。
ビラールもルルも、いつもならラギもどう?どうデスか?としつこいくらいに誘いをかけるのに、今日は二人ともがそのまま手を振って。
釈然としない気持ちでラギは寮に戻っていたのだが…
角を曲がり、二人の視界から隠れたところで、ガシっと肩を掴まれた。
「っ!!何しやが・・・アルバロ・・何だよ。何か用か」
うすら笑いを浮かべる胡散臭いアルバロに、ラギは露骨に迷惑そうな顔をしたのだが…
「つれないねえラギ君。君が落ち込んでいるようだったから、相談に乗ろうとしただけなんだけど」
「は?誰が、何に落ち込んでんだよ」
「ラギも落ち込んでいるんだ!それって俺と同じ理由からかな?何だか面白くないんだよね、それに不安で仕方ないんだ。ルルはどうしたのかな・・・」
「だあっ!?ユリウス!てめーいきなり背後から現れんな!!」
アルバロに捕まり、振り向いた隙に背後にいたらしい。
なかなか油断ならねー奴だな、とまだブツブツ言うユリウスにラギは怪訝な視線を送ったのだが…
「ユリウス。貴様が口を出すと本題がわかりにくくなる。ここは僕の出番だな!」
「よかったですね、ノエル。こういう時にはあなたの出番がぴったりですよ。…で、僕はもう戻ってもいいですか」
「・・・気のせいだろうか、エスト…何だかものすごく厭味を言われたような気がしてならないんだが・・・」
ひくっと頬をひきつらせるノエルに、今にも戻ろうとばかりに足を飜すエスト。
けれど、まあまあエスト君、とアルバロが引き止めている。
・・・・一体何で揃ってんだよ。
こいつら揃うとロクなことにならねーんだよな。
ラギは自分もその一人である、という認識を忘れているようです。
そんな中、僕が話すと意気込んでいた筈のノエルを自然にスルーして、アルバロが説明を始めた。
「まあ、かいつまんで言うと・・最近ルルちゃんの様子おかしいよねって話なんだよね」
「・・・彼女がおかしいのはまあ、いつもの事ですが」
「ルルの魔法は属性の枠に入りきらない、不思議なところが魅力なんだよ、うん」
「ユリウス、魔法のことじゃないだろう!もっと真面目に心配したらどうなんだ」
すぐに魔法に結びつけるユリウスに、ノエルはこんな時に、と顔を顰めたのだが。
「え?真面目じゃない心配なんてあるのかな?不真面目な心配?それってどういうことだろう…う〜ん…」
「・・・・・・・・・・・・」
「あれ?ラギ君、ノエルくん、どうして俺を見ているのかなあ」
「アルバロ、理由はあなたが一番ご存じでは・・・それにしても話が見事に進みませんね。元に戻しましょう」
「おー、あいつが夏バテしてるって話だろ?」
いちいち全員話して鬱陶しいけれど、確かに・・ずっとバテて元気がなかったルル。
いつも笑顔で足取り軽く、そこいらを駆けまわっていそうなルルである。
ぐだっと机に伏せている姿は、どうしても目につきやすかった。
「そうだね、いつも楽しませてくれるルルちゃんが、あんなにへばって・・つまらないから治してあげようと色々考えていたんだよね」
「あっそれは俺も!彼女が喜ぶような魔法を一生懸命考えていたんだ、けど・・」
「考えていたのは僕もだ!まあ、何をするわけでもなく元気になったのなら・・それは良いことなんだが・・・」
「・・・早く話を進めましょう。気になるのはこの先ですよね」
ルルの夏バテはもう解消されているようである。
なら何故ここに、こそこそ集まっているのか…?
エストの言葉だと、他にも何かあるようで、ラギは次の言葉を待っていたのだが―
「うん、そうなんだ!元気になったのはすごく嬉しいことだし、彼女のまた魅力的な魔法が見れるんだって、ワクワクして。それに失敗しても成功しても、どちらにしても見せてくれる顔はすごくかわいいし。だから真っ先にルルと一緒に魔法実験しようと思ったんだけど、でもせっかくだから一生懸命考えたルルを喜ばせる魔法を見せたくって、だからルルを誘おうと思ったんだけど・・見ての通りビラールビラールってずっとビラールの傍にいて。それだけじゃなくて彼女は何か魔力の…「ユリウス、わかった。すげー伝わったから、黙れ」
ラギが延々と続く言葉を中断させれば、ええ、これからが本題なのに、と口を曲げるユリウス。
ノエルがピリピリして、、エストももはや背中を向けているのだが、まるで堪えていない様子。
「ルルちゃんが元気になったことと、殿下に懐きすぎているのと、時期が重なるんだよね。今も二人でこそこそ何かしているみたいだし。」
気になるよね、ラギ君と含んだ笑みを浮かべて、アルバロが様子を覗ってくる。
「・・別に、元気ならいーじゃねーか」
特に問題はないだろー?と気が乗らない声でラギが曖昧に相槌を打つと、ええ、まあそうなんですが、と珍しくエストが口を挟んできた。
「彼女が元気になる前に手にしていた荷。それが少し引っかかるんです」
「荷?どんな・・・」
「いえ、見た目は普通の荷でした。・・ですが、厳重に魔法でロックがかかっていたようです」
「魔法で…?」
やはり話がややこしくなってきた、と思いつつ。
ラギは皆が集まった理由がわかった気がして、言葉の続きを待った。
「俺もすごい魔力を感じて…それがルルの荷なのか、かけられたロックのものなのか・・そこまではわからなかったんだけど」
「ああ、その場には僕もいたんだが。声をかけようとする前に・・それを大事そうに抱えて、人目を避けるようにいなくなってしまったんだ」
その時のルルの様子を思い出したのか、二人の顔が曇って。
「…俺も似たようなものを見かけたことがあるんだ、闇で取り扱うような品ばかりを納品する時によく目にするロックだよ」
「少なくとも、彼女が手にする機会があるようなものではない、ということです。また厄介な事に手を出しているのかもしれませんが…」
そういうことにおいての彼女の才能は天性のものですから、と付けくわえながらも。
エストは渋々、と言ったような表情で…
「放っておくと、かつてない大問題に巻き込まれそうですからね」
と諦めた体である。
「・・・それと・・・ビラールは何か関係あんのか?」
「ない、とは断言しにくいかな。時期的に被るし、二人で何か隠しているのは一目瞭然だからね」
アルバロの言葉に、ラギは思わず二人がいる道が見えるように顔を少しだけ出してみた。
けれど、二人は寮に戻った様子でもなく、どこかに行ったようだった。
「・・・いなくなってんぞ。いーのか?」
「い、いいわけないだろうっ!?そもそも二人の様子を見るためにここにいたんであってだな」
「ビラールと何か約束してたようだし…もしかしたら…その荷のロックを外すつもりかな?」
「・・・ユリウス、期待を込めた目を見せないでください。・・・はあ、それでは人目のつかないような場所を探すのが定石ですね。アルバロ――」
アルバロに道を譲るようにエストが一歩後ろに下がった。
「あれ、エスト君も探すんだよね」
「ええ、ですがこういうことにはあなたが一番詳しいでしょう」
それはそうだ、とエスト以外の3人もじっとアルバロに目を向けた。
人任せはよくないと思うけどね、と苦笑いを浮かべながらも・・・
「まあ、面白いことを見逃すのは勘弁だしね」
と皆に背中を向けて、誘導しつつ、アルバロは瞳を冷たく輝かせた。
一方ルルとビラールは――
「わあっ!これね!すごく楽しみだわっ!!」
「ハイ。私も楽しみデス。・・・それにしても、ルルも災難でシタね」
皆が怪しんでいた荷物と思われる包みを、ルルは嬉しそうに両手で抱いている。
そんなルルに、ビラールは何故かルルを気遣うような笑顔を見せていた。
「うん・・私も最初部屋に届いた時はどうしてか全くわからなくて…すごいものだっていうのはわかったから余計に」
「でもすぐに解決してよかったデス。あのまま開封していたら大変でシタ。フフっ」
「ビ、ビラール??そこは笑うところじゃないと思うの!」
ルルはさっきまでニコニコさせていた笑顔を一変させた。
もし、万が一、一人で開けていたら…想像するだけで恐ろしい――
「大丈夫、大丈夫。あのロックは到底開けられない代物デス。もしも―という事にはならなかったと思いマス」
「・・・それはそうかも。うんっとにかく・・これ、開けてみてもいい?」
「ええ、どうぞ。そのために取り寄せたのデスから」
ルルがドキドキしながらその包みに手をかけて開けようとしたところで「ダメだーーー!!!」とものすごい叫び声が聞こえて。
「・・え?ノ、ノエル?今のノエルの声だよね?」
「ええ、そのようです。ですが…どうやら全員揃っているようデスね」
「え?」
ルルが辺りを見渡せば、隠れるように二人が座り込んでいた茂みの中を、探るようにかきわけて…
1・・・2、3…4人が…いや、関わりたくないように5人目もこっそり陰にいるようだった。
「ユリウス、ノエル、ラギ・・アルバロにエストも!!な、何でみんなここにっ!?」
ささっと包みを後ろに隠すルルの行動。
・・・・・・・怪しいにも程がある
加えてビラールのしれっとした態度である。
怪しさも増す、というものだろう。
「ルル。その荷物は何なんだ?君が話したくないなら無理にとは言わないが…」
「・・え?これ・・これは――」
ノエルの言葉にルルが言葉に詰まる。
ラギはそんなルルを見て、ビラールに咎めるような視線を送った。
「おい、ビラール。てめーが何しようと勝手だけどな、こいつにややこしーもん渡すんじゃねーよ!巻き込まれるオレらの身にもなってみろ!!」
「ややこしーもん・・・デスか?ワタシはルルにそのようなものは贈っていまセンよ」
「じゃーその荷物は・・・「ちょっと待って、ラギ」
ユリウスがラギの言葉を制して、じっとルルを通して、背中に隠した包みの気配を探るようにした後…
「魔力が消えてる…ロックを外したから?」
「――いえ、痕跡が全て消えるには早すぎます。それほどの魔磁力で固めたロックでしたから…」
「そうだね、それに・・・この二人に外せるものだとは思えない。どういうことかな」
3人の言葉に、ルルとビラールは暫くきょとんとしていたのだが…
「・・・ルル、どうやら勘違いされているようデス」
「そうみたいね。でもどうしてあっちの荷物のことを知っているの?」
私、必死で隠していたのに、と言うルルに、皆の無言の訴えを込めた視線が集まった。
「・・・・・な、何?」
あれで隠し通せていたつもりだから、やっぱりルルだなあと皆が納得する。
「ルル、ということは…あの時の荷物と、今君が隠している荷物は違う、ということだろうか?」
「うんうんっ!あれは間違いで届いたものなの!ちゃんと本当の受取人に返したから!」
「あ、あれが間違いで届くようなものなのか!?」
君はよくよく騒ぎに巻き込まれるなあ、ハハハとノエルがから笑いをして。
何にせよ、違ったんならよかった、とほっとした空気が流れた中。
「でも、何で間違えなんて起きるんだよ。あーいう厳重な荷物は普通、チェックも厳しいんじゃねーのかよ」
「それは…包装紙が一緒だったから、かな」
「いや、それくらいじゃならねーだろ!」
間髪いれずにツッコむラギに、それはそうだと頷いたのはビラールだった。
「ファランバルドの王室の取引に使う包装紙を使用していまシタ。王室の印が施されているものはそうはないデス」
だからでショウね、とにこっと笑顔で、あっさり言うビラールにアルバロが目を細めて口元だけを笑わせた。
「へえ、王室御用立つの便を利用してまで、殿下は君に何を贈ったのかな。」
「・・・あ、これは・・・あの・・・」
皆には色々と勘違いさせてしまったらしい。
心配させたのだから、きちんと話さないと…と、ルルがその包みを手に取り、そっと開けると一同の前に現れたのは…
「これは…何かの衣装か?僕は見たこともないものだが…」
「これはね、ファランバルドの衣装なの!前に聞いて…すごく着てみたくって!」
「へえ、どちらかと言うと、踊り子の衣装…に見えるけど、殿下」
「よくご存じデスね、アルバロ」
にこにこと微笑み合二人に、何だか触れてはいけない気がする。そんな直感が残る5人に働いたらしい。
「つーか、これのせいで振り回されていたのかよ…」
ガクっと肩を落とすラギに、心配かけてごめんなさいっ!とルルが平謝りしていたのだが。
「ルル、君がビラールの傍にずっといたのは…これの為?」
「え?そうなのかな。最近はビラールにこんな衣装がいいって・・色合いとかいろいろ話していたから・・・」
ルルの言葉に、もう帰りかけた足を一度止めて、エストが確認するようにルルに問いかけた。
「あなたの夏バテは…そんなことで治るんですか。単純で羨ましいです」
「エストも夏バテなの!?それなら私に任せて!ビラールに色々暑さ対策を教えてもらったから!」
「結構です。僕を気遣うなら放っておいてください」
放っておいたら、野菜ばかり食べて倒れてしまうわ!と詰め寄るルル。
逃げようとするエスト。
いつもの光景に、ようやく戻りましたとさ。
おしまい。
・・・・・・・・・・・
「ちょおおっと待て!!結局、あのものすごい荷物は誰宛てだったんだ!?」
「あ、それは俺も気になる。あのロックの解除するところ、見てみたかったなあ」
「物騒なことぬかすんじゃねーよ!!・・・・・・・まさかおまえじゃないよ、な?」
「・・ラギ?私がそんなこと出来るように見えマスか?」
「今の殿下を見てると、納得できそうだけどね。まあ、考えれば簡単かな。ファランバルドの王室と極秘密裏にやり取りしてそうで…」
「・・・・・あのロックが解除できる学院内の人物。まあ、2人のうちのどちらかでしょうね」
・・・・・くしゅっ
「あら、また誰かがあたくしの噂をしているのかしら?」
「何を言っておる。どうせ罵詈雑言の類いであろう」
知らないところで、世にも恐ろしい兄妹喧嘩が始まろうとしていた。
「・・・・なるほど、それでルルはこそこそと・・・ようやく納得出来たな」
「でも、今日もこっそりだったよね。どうして?ルル」
「え?・・・だって、一人でこっそり着ようと思って。見せてって言われたらちょっと恥ずかしいし。見せるなら・・一度着てみてからと思って」
「結局見せる気かよ!!いちいち行動がややこしんだよ!てめーは!!」
だって〜と言うルルに、だってじゃねー!!とラギのお怒りが飛ぶ。
「まあまあ、ラギ?本当は安心したのではありまセンか?」
「そうそう、本当は見たいんでしょ。ルルちゃんの衣装着た姿」
「・・・・・どうでもいいですけど、ルル。僕には見せなくてもいいですから。失礼します」
瞬く間に、いつもの喧騒が戻ったのでありました。
今度こそおしまい!!
ワンドオールSS、久々で楽しく書かせて頂きましたv
読んだらわかる方たくさんだと思うのですが、スタッフブログの夏バテの各キャラの様子が面白かったので、ベースにしてます。
これだけじゃ足りない。
CPぽい話が読みたいって方は…(そんなに甘くはないかと…)
SSの続き(後日談)が個別にありますので、下からお選びになってお進みください。
風 土 水 火 光 闇