Julius×Lulu



「ユリウス、どうしたの?すっごく困った顔してるけど」
「あ、ルル…う〜ん、どうしても仕上がらなくて」
「仕上げる?何かの課題?」

ルルがユリウスの傍に座ると、ユリウスはうんと頷きながら、媒介の杖を持つ手に力を込めた。

「君が暑さにまいっているみたいだったから、何かできないかなって思ったんだ」
「え、そんなこと考えてくれていたの?ありがとう!ユリウス!」

その気持ちがすごく嬉しいわ!とルルが満面の笑顔で返したのだが、ユリウスはう〜んと曖昧な笑顔を浮かべて。

「うまく出来たって思ってたのに、どうやら失敗みたいで…やっぱり同時に2つの魔法を御するのは無理だな」
「そ、そんな難しいこと考えてたの!?・・・でもちょっと興味あるかも…ううん、すごくあるかも!」

どんな魔法なの?と目をキラキラさせて覗きこむルルに、ユリウスは少し恥ずかしそうに微笑んで。

「うん、やっぱり涼しくならないとって思って…大気中の水分を集めて、冷やした後、風属性の魔法で分散させてそれを一気に霧散させて…」
「ご、ごめんなさい、ユリウス。言い方が難しくてよく…」
「あ、ごめん。ええと、つまり氷の粒の霧…みたいなものを出そうとしたんだけど」

一度うまくいったと思ったんだけど、ちょっと結果が違ってたんだ、と杖を手に悩むユリウス。
ルルの夏バテは治ったようだけど、それだけじゃなくて、喜ばせたくて考えた魔法。
何とか見せたいと、ずっと四苦八苦していたのだった。

「そうなんだ!すごいっ!氷の霧だなんて…見てみたいっ!!」
「ごめん、ルル。見せてあげたいんだけど…粒子が粗くて…霧にはならないんだ」
「・・そうなの?でも・・ユリウスがせっかく考えてくれたんだから・・失敗したっていいの!ユリウスの魔法は素敵だもの!見てみたいな」

いつもユリウスに言われる言葉。
同じことを返したい。
それに、自分を思っての魔法なんて・・・

これ以上、素敵な魔法はないと思う――

「ルル――…うん、じゃあしてみるよ。少しでもうまくいくように・・・じゃあルルも手伝ってくれる?」
「え!?私?私が手伝ってもいいの?」
「うん。君が一緒の方がきっと素敵なことになるって思うから」

笑顔で、そんなこと言われたら・・・断れる筈なんてない。

うん、頑張ると頷き返して。
ユリウスに手順を教えてもらう。

二人で順を追って、唱えていく魔法。

真っ青な空が白い壁のようなもので遮られ辺りが暗くなる。
白い壁のようなものは…氷!?

すでに予想外のことが起こっているが、そのまま続けると…


「キャーーー!!冷たいっ!!」
「すごいっ!!やっぱり君が一緒だとすっごく意味がわからなくて、素敵だよ!!」

まるで巨大なかき氷機の下にいるように、シャーッと次から次へ氷が降り注ぐ。
このままだとかき氷の中に埋まってしまうかもしれない。

「ユ、ユリウスっ!!喜んでないで逃げないと!!」
「あ、ごめんっそうだね。ルル、こっち!」

急いでその場を離れたが、しばしかき氷はやみそうにない。

「・・(やっぱり私のせい・・なのかしら?)それにしても・・あの氷のおかげですごく涼しくなったわね!」
「うん・・でも、ルル。手が冷たくて・・赤くなってる」

逃げる時に咄嗟に繋いだ手は、しもやけでも起こしたように赤い。

「暖かくなるといいけど」

その手を自分の手で包み込んで、はあっと温かい息を吹きかけるユリウスに、ルルは気恥ずかしそうにしながらもそのままで。

「・・夏にこんな体験できるの、すっごく素敵ね!」
「・・うん。君とずっと、こうしていろんなことを一緒にしたい」





END












君と繋いだ俺の手は、どんどん熱くなるのに―