Alvaro×Lulu

※ルルはアルバロの本性を知りません。
アルバロがまだ隠している状態です。



探さなくても大体わかる。
どこにいても目立つピンクの髪。
そういうところは俺と一緒かも知れない。

けど、そういう『目立つ』で見つけるんじゃなくて。
そこにいたら、ルルに照準が合うように、彼女だけを見つけるからだ―

それは恋、とかではなくて。
興味からだと思っているが―


「ルルちゃん」

突然かけられた声に驚いてから、その声に納得してゆっくり振り向いた。
振り向くのを待ち構えていたように、アルバロが笑顔をちらつかせていた。

「なあに?」
「いや、ちょっとね・・・あ、そうそう。夏バテはもう治ったの?」
「うんっもうすっかり!ビラールにも色々教えてもらったし…もう大丈夫よ!」

ルルはアルバロの心配を信じて疑わないように、元気な姿を見せようと体を動かして。
アルバロはその動きを見て、ルルが思ってもみないことを口に出した。

「そっか、残念」
「・・・・・・・・残念?」
「わからない?言葉通りの意味だよ、俺も君の様子を見ていてもたってもいられなくなって…」

若干大袈裟に思えるような言葉の後、アルバロはまた笑顔に戻って。

「疲労回復の栄養剤、調合していたんだ。…ルルちゃんの為に特別製。どう?」
「どうって…アルバロはそんなこともできるのね!ありがとう」

素直に受け取るルルに、アルバロはふっと苦笑いを浮かべて。
他の生徒なら毒が混入しているんじゃ…とか、何かの実験体か…とか疑われそうな感じはするのだが。

「ルルちゃんは疑うことを覚えた方がいいかもね」
「え?どうして?」
「いや…それ、本当に効くから、疲れた時に飲んでみてくれる?御礼はその時に貰おうかな」

うん、わかったわ!ありがとう!と…
また、素直に御礼を述べるルルに、笑顔を張り付けたまま。

栄養剤は本当に怪しいものでなく、きちんと作っている。
何か混ぜて、遊んでみてもよかったのだが…

今はまだ―早い――

もう少し、仲良くなったと思わせて。
もう少し、ルルの気持ちが傾いたら―

そんなことを考えながら、アルバロは「そうそう、もう一つ」とルルにかわいいロゴの入った袋を渡した。

「え?・・これも夏バテの・・?」
「それはただのプレゼント。俺から、君へのね」

ゆっくり、じっと目を見つめて告げれば、初なルルでもそれなりの反応があって。

「で、でもっどうして?受け取る理由なんてないもの」
「あれ、冷たいなあルルちゃん。殿下からの衣装は受け取って、俺のは受け取ってくれないのかな」
「それは…だって、私が着てみたいって言ってたから・・・」

戸惑いながら言葉を返すルル。
でも心底困っているようではないとわかる。

受け取る理由なんて、いくらでもあるって教えてあげるよ―

「俺のプレゼントは、着てみたくない?」
「そんなことっ・・ない、けど…」
「ルルちゃん、男が服を贈る意味を知ってる?」

一歩、また一歩。
確実に距離をつめて。
アルバロの姿がルルの視界に入りきらなくなる。

ドキドキが止まらなくて、言葉がでなくなって。
首を振ることで、知らない、と返事をした。

三日月のピンクが、深紅に染まった気がした―

「自分の選んだものを着せて、自分の好きなように、自分の色に染めて―」

ゆっくり伸びる腕。逃げないように、退路を断たれて。

「他の男に、それを見せつけて」

ゆっくりかかり重なる前髪が、二人の距離を如実に教えてくれる。

「二人きりになったら、その服を・・・」

そこまで言って、意味深に含んだ笑みを見せるだけ。

「ね、着てくれるよね。ルルちゃん―」

いつの間にか抱きしめられた体。
顔が見えない、声だけのアルバロ。

からかっているのか、本気なのか、わからない。

声はとても甘くて優しくて、信じたくなるのに。
時折漏れる吐息が、今を楽しんでいるだけのように思えるから。

ねえ、どっちなの―




END











「おまえは俺だけの玩具―」