見つめる先には。

あるのどかな昼下がり、新選組屯所内では新八と左之が二人揃って縁側で休憩中だった。
その日も、特別何かあるわけでもなく、繰り返される日常の何でもない午後のひとコマのはずだったが・・・

「あ〜・・・任務任務…仕方がないってわかっていても気が急くな」
「だから、おまえの勘違いだろう?俺にはそう見えなかったがな」
「いや!そんなことはない!左之、おまえ・・・俺に嫉妬しているな!?」
「・・・ば〜か、何でそうなるんだよ、俺は別に興味ないからな」
「本当か?」
「ああ、全く・・・向こうが俺に興味持ってるかもしれないけどな」
「!?左之!!おまえが言うと冗談にならないからやめろ!」

二人仲よくお話してる・・・お茶でも出そうかな?
千鶴が気を使って二人にお茶を淹れて、二人の背後まで近付いた瞬間、新八が勢いよく怒鳴りながら立ちあがったものだから、当然千鶴はびっくりして・・・

ガチャン!!

「どわっ!?ち、千鶴ちゃん!大丈夫か!?」
「は、はい・・・私は大丈夫ですけど・・・っすみません。新八さんにお茶掛かりませんでした?火傷とかっ」
「や、俺は大丈夫・・・悪いな〜気がつかなくて」
「それより、千鶴は大丈夫なのか?」
「原田さん、大丈夫です。すみません、すぐ片付けます」

てきぱきと片付けしながらきれいにしていく千鶴に、左之は、

「千鶴、終わったらもう一回茶を淹れてくれるか?おまえも一緒に休もうぜ」
「ご一緒していいんですか?」
「ああ、かまわねえよ!・・・そうだ!千鶴ちゃんに聞きたいことあるんだよな!」
「?聞きたいこと、ですか?」
「千鶴に聞くのか?ていうかそもそも勘違いなんじゃ・・・」
「うるせい!左之はちっと黙ってろ!」
「・・・・よ、よくわからないけど、じゃあ、ご一緒させていただきます」



仕切り直しにお茶を淹れて、もう一度三人で縁側に座って。
その時新八が千鶴に聞いてきたこととは・・・

「・・・というわけで、それって俺のこと好きってことだと思わねえか!?」
「・・・・え〜と・・・」

新八曰く、島原のお気に入りの芸者が最近自分のことを何かにつけて見つめてくる。
それは、自分のことを好きなんじゃないか?ということで・・・

「俺は新八ばかり見てるようには見えなかったけどな」
「うるさい!左之!・・・千鶴ちゃんどう思う?」

期待を込めた目でじっと見られて、千鶴はほとほと困っていた。
千鶴も恋愛に関しては初心者で・・・今も、好きな人に自分の気持ちを伝えられずに困っているのに。

「・・・あの、断言はできないけど、少なくても気になる人だから、見つめてしまう。というのはあると思います」
「そうだろ!そうだろ!?」
「だから・・・見つめられてないって・・・勘違いだろ?」
「ふっ左之の方が勘違いってこともあるぞ」

見るからに嬉しそうに、子供のようにはしゃぎながら、さて!仕事仕事!と立ち上がってうきうきな足取りで去っていく新八。
そんな新八の背中に全く・・・・と呆れたように視線を向ける左之に、でも、と千鶴は
言葉を返す。

「一概に勘違いとは言えないと思いますよ?」
「見つめるってほどじゃなくて、ただ一瞬目が合った・・・くらいだと思うぜ?」
「・・・そ、そうなんですか・・・」
「むしろ、見つめられたってこんなに舞いあがってる新八の方が、熱上げてるっってことだな」
「・・・な、なるほど・・・・」

確かに、好きな人に見つめられたら・・・ドキドキして、嬉しいし・・・他の人とは違う反応になるよね・・・
見つめる、か・・・

左之の言葉はとても信憑性がある。
自分も淡い恋心を抱いている相手にどう接していいかわからなかったけれど、見つめるというのはいいかも・・・
もしかしたら・・・自分にも同じような恋心を抱いてくれていたら、新八のように態度に出るかもしれない。
今までは恥ずかしくて、避けるように目をそらしていたけど・・・でも・・・あの人の気持ちを知りたい!・・・よし!

私が想いを伝えたい相手は・・・・・





土方さん

沖田さん

斎藤さん

平助君

原田さん