「future!!」


前編!!



「ああ、急がないともうみんな集まってるよね!せっかくみんなが協力してくれるって言ったのに!!」
廊下を急ぐルルの目指す先、不機嫌そうにゆっくり歩くのは…?

「・・・この私の授業でこんなものに気を捉われるなんて、全く・・・」

ブツブツ歩いて、その生徒から取り上げた小さなピンクのマカロンを見つめる。

「・・・面白いから、愚兄にでも差し上げようかしら?」

ふふっと微笑む瞳は本気に見える。誰かが見ていたら、ひっ!と怯えたことだろう。
ゆっくりと廊下を曲がろうとした時、

ドシン!!

…勢いよく走ってきたルルとぶつかった。

「ルル!前に注意をお払いなさい!」
「キャッ!!ヴァニア先生ごめんなさい!!〜〜〜でも急いでいるので!!」

ぴゅ〜っと瞬く間に小さくなって見えなくなるルルの後ろ姿を、呆れたように少しだけ微笑みながら見送る。

「あの娘は相変わらず元気だこと……あら?あのマカロン…落ちたのかしら?」

辺りを見回すけれど、どこにもない。
・・・・・ルルとぶつかって・・・・もしかしてルルが?

別に放っておいても食べなければ問題ないのだけど。
・・・・・・・・なんだかルルは食べてしまうような気が・・・・・

ああ、と小さな溜息をついて、仕方なくヴァニアはルルの後を追って行ったのだった。



「お待たせ!!ごめんね!!」

息を切らせて自習室に駆けこむルルに、集まる視線は様々で。

「ルル!大丈夫、本を読んでいたらすぐだったよ!」
「それはおまえだけだろーが!時計を見てみろ!」
「まあまあ、ラギ、ラギは時計を見過ぎダト思いマスよ?」
「それは言えるかな、ルルちゃんに早く会いたかったんだよね?俺も同じ気持ちだからよくわかるよ」
「なっ!?アアアアルバロ!そういうことを軽々しく口にするのは僕はどうかと思うのだが!」
「・・・・・・・・・話はそれくらいで、本題に入りませんか?」

瞬く間に騒ぎだし、静かだった自習室は一気に賑やかに。

今日集まったのはルルに出された課題を手伝う為。

出された課題に難航して、図書室で頭を悩ませていたルルを、パルーとの格闘を終えたノエルが見つけて。
手伝おうと声をかけてみれば、思ったよりも難しい。
一緒に頭を悩ませていれば、そこに通りかかったのはユリウス。
何してるの?と声をかけられて、俺も手伝うよとは言ってくれたけど、脱線脱線・・・。

それをどうにか軌道修正しようと躍起になるノエルに、救いの手はビラール。
二人でもとの課題に論点を戻し、教えていこうとした時、またもその軌道を巧みに変えようとしてきたのはアルバロ。
どうにもこうにも進まなくなったのを、放っておけなくなり、仕方ないと助け船を出したのはエスト。
その課題では魔法耐性のあるラギにも協力を頼みたいと言う話しになり・・・・

取り敢えず、今日はここまで。また明日。ということで今に至る。


「みんなごめんね?もう少しだから・・・終わったらマカロンでも食べよう!持って来たの!」
「ルル・・・・もう終わった後の話ですか?まずは終わらせるのが先だと思いますが」
「いや、先に食う方がよくねーか?」

そしてまたがやがやと脱線気味になる一同。そんな中、ビラールはおや?とルルのマントのフードから何かを取り出した。

「ルル、よほど慌てていたんデスね?マカロン、ココにもありまシタよ?」

くすっと笑いながらピンクの小さなマカロンをルルに渡す。

「あっ!本当だ・・・どうしてこんなところ・・・・・・うん、美味しい!」
「食うなよ!!おまえ考えなしだな・・・毒でも入っていたらどーすんだ」
「俺は、ラギには言われたくないと思うけど」
「ユリウス!てめー!どーいう意味「あのマカロン、食べましたの!?」
「どわっ!?」

急に背後から話しかけられて、驚いてラギが飛び退くと、そこには困ったような…でも何故か面白そうにこちらを見つめるヴァニア先生がいた。

「あのマカロンって…もしかしてヴァニア先生の?ごめんなさい・・食べちゃって・・・」
「いいのよ、ルル」

言いながらヴァニア先生は何故かルルの目にくるくると布で目隠しをする。

「・・・・・・・?あの・・・・・・・」
「・・・何か、本当に毒でも?」

ルルの様子を見る限り、そんなに強い毒はないように見えるけど・・・それでも不安になりエストが尋ねれば、ヴァニアは一言。

「惚れ薬、らしいですわ」
「「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」

「症状が出るのに一日。最初に見た者を熱烈に愛す。そう聞きましたけど・・・ここにいたのはあなた達だけね?」

何故か面白そうに瞳をどんどん輝かせていくヴァニア先生。
この事態を楽しんでいるようにしか見えない。

「ルル、誰を見たかわかりまして?」
「えっ・・・・・・・わからないです。みんなここにいたし」
「そう・・・・まあ、でも明日になればわかりますわね」

・・・・・・・え・・・・・・・・・

ヴァニア先生の言葉に固まる者数名。楽しそうに頷くもの数名。

「・・・解毒の方法、探せば見つかるのでないでしょうか?」
「エスト…生憎これは生徒が作ったもので・・・」
「それならわからないよね、うん、仕方ないんじゃないかな?ところで効果はどれくらい続くのかな?・・・一生、とか?」

・・・・アルバロさん、目が怖いです。

「アルバロ、一生、とかな訳ないでしょう?それなら放っておくことなどしませんわ・・・そういうものは生徒が作るものなら、一日程度でしょう?ルル?今日は大人しく寮に戻りなさいな」
「でも・・・課題が・・・イヴァン先生ので・・・」
「愚兄の?・・・・大丈夫、私が事情を話しておきますから」
「そうですか、えっとじゃあ・・・帰ります」

立ち上がったルルはフラフラ歩くとそのままバン!とドアにぶつかった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ルル、送りマス。」「ルルちゃん送るよ」
同時に声をかけたのは・・・・ビラールとアルバロ・・・・・・なんだか・・・・・・

「おまえら、目隠し取ろーなんて思ってねーだろーな?」
「・・・・・・なるほど。そんな風な考えも・・・「いや、ユリウス!そこは納得するところじゃない!」
「・・・・・・不安ですね。僕達も送りましょう」

そうして、ルルは六人に見送られて(なんだか大袈裟だと思うの!)、寮に戻って行った。

「・・・誰を好きになってるかな・・・俺だといいな。」
「ユリウス!貴様そんなことで嬉しいと思えるのか!?僕は薬に頼るなんてそんな卑怯なこと…」
「ノエルくん、薬に頼ろうだなんてことじゃないよ…一日だけだよ?好かれるのは悪い気はしないと思うけど、君は違うのかな?」
「そ、それは・・・ううっ・・・」
「・・・始めカラ、その人のコトをスキだった場合、態度は変わらナイんじゃないでショウか?」
「・・・・そーか、それなら、問題ねーし、いいことじゃねーの?」
「ビラール、ラギ、あの手の薬は過剰に反応するんですよ…解毒の方法を調べた方がいいと思いますが」

そのエストの言葉に、皆がシンとなる。

「・・・過剰に反応って、どんなのだろうね?あの子の場合想像出来ないな?」
「想像しなくていいです。そうならない為にも解毒の方法を・・・」

頑なに言い張るエストに、アルバロは何故かにっこり笑う。

「そうだね…じゃあ、俺も手伝うよ・・ユリウスくんも、お願い出来るかな」
「え?俺?・・・・う〜んでもルルが・・・でも好きでもない人好きになったら可哀想だし、そうだね」
「いえ、いいです。アルバロ。その人選に悪意を感じますが」
「嫌だな、そんなことないよ?じゃあ行こうか・・・」

そのアルバロの笑みを見た時に、ユリウス以外の皆が思った。

・・・・・解毒の方法を見つけるのは無理だ。と・・・・・・


・・・・そしてやはり見つかることなく・・・・翌朝!!!


期待に胸を躍らせて?興味ありありな人も、興味なさ気にしていた人も、なんだかんだで…玄関ホールには6人が勢ぞろいしていた。





後編へ!!