みく様Happy Biruthday!!

大変遅くなりましたが、お誕生日祝いのスタスカSSです。
一樹→月子←錫也の三つ巴!
……になっているか、大変不安ですが、受け取ってやってください^^;





『parents’ revolutions days』

starry☆sky
一樹→月子←錫也SS

春が終わって、部活の夏くらいのお話ということで!
(上記3人以外は出てきませんが汗)






チャイムの音がようやく今日の終わりを告げる。
月子はふ〜と息を吐きながら、手に持っていたペンをしまった。
今日から始まった期末試験は一日目がようやく終わりを告げたばかり。
明日は苦手な教科だと思うと、帰ってからの復習の時間がもうすでに重荷になってくる。

これさえ終われば夏休みが目の前だと、窓から覗く高く青い空を見上げながらも。
何度復習しても中々頭に入らない天体物理学のことを考えると、つい顔が伏せってしまう。
机に突っ伏した形になった月子の頭をぽん、と優しく撫でる手と共に、いつも自分を気遣ってくれる幼馴染の声がかけられた。

「こら、月子。まだ試験は終わってないんだぞ?」
「わかってるよ。錫也は今日の試験出来た?」
「出来たってほどでもないけど、いつも通りだと思うよ」

話しながら前の席に移動して、向かい合うように座る錫也に月子はいいなあ、と小さく呟いた。

「錫也のいつも通りは私にとってすごい点だよ。私は今日の……どうだったかなあ」
「ほら、終わったことは振り返らない。月子の憂鬱は明日の物理学だろ?」
「……うん。何度問題を解いても間違えちゃうから」

何でもお見通しの錫也に、月子は素直に弱音を零した。
そんな月子に錫也は目元をふっと和らげる。

「よかったら、俺が教えるよ。一人でするよりはきっと頭に入るんじゃないかな」
「……いいの?だって錫也だって他の勉強が……」
「気にしなくていいよ。むしろ月子がそんな顔して俯いてたら、俺はそっちの方が集中できないしな」

いつも真綿で包んでくれるような、この温かい好意に月子は笑顔を返した後、頭を下げた。

「じゃあ、お願いします。錫也先生」
「ははっ先生か。……はい、わかりました」

頭を下げた拍子にまた、ぽんと手を置かれる。
小さい頃から変わらない、慣れた手つきで優しく撫でられて。
すぐに手が離れるかと思ったのに、中々離れない指先に少し意識してしまった月子は慌てて顔をあげた。

「ど、どこで勉強しようか、……教室?」
「ああ、そうだな。でも、教室は……(何だか邪魔が入りそうだしな……)」
「え?」
「いや、図書館行かないか?そっちの方が静かだし、参考書も色々あるし」

ああでも、そこまで行く時間が勿体ないか?と考え込む錫也に、月子はカタンと音を鳴らして立ち上がった。

「うん、賛成!行こ?錫也。図書館で勉強するなら早く行かないと」
「……ん、行こうか」

うん!と元気に答えて颯爽と足を踏み出す月子に、錫也がおかしそうに笑い出した。

「さっきまで俯いてたとは思えないな」
「だって、優秀な先生が教えてくれるから。安心したら元気が出てきたみたい」
「ははっ月子は単純だな。……でも、それでお前の元気が出てくれるなら、俺はそれが嬉しいよ」

甘い声で、なんでもないことでも嬉しくなる囁きに変えてくる錫也に月子は慌てて足を早めた。

「あ、こら。危ないぞ。慌てると……」

バランスを失った身体を、いとも簡単に腕一本で優しく支えてくれる。

「――ほら、ちゃんと前見て歩けよ?」
「うん……ありがとう錫也」

支えてくれる細い腕が、全く揺れなくて。
男の子なんだな、と思うとつい今の状況が恥ずかしくなってくる。

「……このまま、危なっかしいからな、月子と手を繋いで行きたいところなんだけど。……職員室にちょっと寄らなきゃいけないんだ。ごめんな、すぐに済ませるから」
「ううん、いいよ。私待ってるから気にしないで行って来て?」

パッと身体を離すと、どこか寂しそうに錫也が笑う。

「ん……じゃあ行って来る。すぐに戻るから」
「うん」

『廊下を走らない』とか、いつも規律に厳しい錫也が、今日はパタパタとかけて職員室に向かっていく。
その小さくなっていく背中を笑って見送ると、月子は廊下の壁に背を預けてそのまま廊下にペタンっと座り込んだ。
鞄の中をさっと見て、一冊の教科書を手に取る。

「……あ、ここ合ってた。ここは……」

今日行われた試験の答えあわせを順々にしていくことに没頭しかけていた月子は、「そこで何してるっ!!」と一気に身体を誰かに引き寄せられるまで近付いた人に気付くことなく。
声を出すまもなく、ボスッと音を立てて抱きしめられたまま、「なんだ?こんな所で勉強か?寮に戻ってやれ、寮に」と後ろから教科書を奪われる。

こんな事を躊躇なくする人は―――

「……っやっぱり!一樹会長〜何するんですか、もうっ!」
「はっはー!悪い、驚いたか?月子が座り込んでピクリとも動いてなかったからなあ、父ちゃんは心配で心配で……」
「心配してる人の態度に見えませんけど」
「のわっ!?人の心配をお前ってヤツは〜……っ!!」

軽く頭をグリグリっとする一樹は、楽しそうに一層月子を引き寄せた。

「きゃっ!か、一樹会長!!近すぎです、近すぎ!」
「あ〜……まあいいじゃねぇか。月子は俺専用のカイロだろ?」
「今は夏です」

少し抗議めいた口調で、ひっついた身体のせいで暑く感じる体温に加え、ドキドキが熱をもたらせるこの状況を訴える。

「ばーか、だからだよ。こんな時でもないと、お前をこうして抱きしめられないからな――」
「……?一樹会長?もう少し大きな声で――」

突然小さくなった声に月子が一樹の様子を窺うと、それを避けるように抱きしめていた手で、頭を優しくわしゃわしゃとされた。

「素直に心配されてろって言ったんだよ。いいか、暑いといらんことするバカが増えるんだ。さっさと帰ってテスト勉強でもしてろ。明日は苦手な天体物理学だろ?」
「……どうして知ってるんですか?同じ学年でもないのに」
「そりゃ当たり前だろ。俺は大切な月子のことなら何でも知ってるんだからな」
「……そうか、颯斗君に聞いたんですね?」
「おい、俺様の言葉を華麗にスルーするなよ」

からかいまじりにまた頭を撫でられて。
近い距離にドキドキするけれど、それがいつもの生徒会の日常を思い出して落ち着いたりもする。

そんな中、タタッと廊下を走って来る音が聞こえてきて――

「月子……っ!遅くなってごめ、ん―――」

その声に月子は錫也の声の方向に顔を向けた。
呼ばれたのは月子なのに、錫也は月子ではなく苦々しい思いを必死に押し隠したような面持ちで一樹を見ていた。
錫也の視線に一樹があ〜……と気まずそうに立ち上がる。

「錫也と約束してたんだな、ほら、騎士の登場だ!……ちゃんと送ってもらえよ?」
「一樹会長は、まだ帰らないんですか?」
「俺ももう少ししたら帰るが、まだちょっと用があってな。んじゃ錫也、月子頼むな」
「…………」

挨拶のように手をあげた一樹に、錫也は軽く頷いただけでそれ以上の返事はなかった。
あげた手を苦笑いしながらおろし、錫也が来た方、職員室の方に向かって一樹が歩き出す。

「勉強、頑張れよ。生徒会メンバーとして追試なんかになったら許さんぞ〜!!」
「ふふっわかってます!」
「……じゃあな」

背中を向けたまま手を振った後、一樹が歩きながらポケットから何かを取り出して廊下を進んでいくのを月子はじっと見ていたのだが。
取り出したものが、見覚えのある鍵のように見えた。

……用って生徒会の用事?昨日まででとりあえず期限のあるものは終わらせたと思うんだけどな――
もしかして、まだ何か――

「……月子、月子?」
「っあ、うん。何?錫也」
「……いや、帰らないか?ごめん、遅くなって――」
「ううん、錫也が謝ることないよ。全然待ってないし、それに……教えてもらう事で錫也の時間使っちゃうのは私の方なんだよ」

月子の言葉に、錫也が翳りのある笑顔を浮かべる。
何とも言い難い想いを耐え切れなくて、月子を傷つけないように、ポツッと漏らす。

「……待たせないで、一緒に連れて行けばよかった――」
「え?」
「仲、いいんだな。月子が生徒会の仕事頑張ってるのは知ってるけど、ああして……ああいう……何ていうのかな、見るのは……初めてだったからちょっと驚いた」
「一樹会長のこと?うん、生徒会はみんな仲がいいんだよ。一樹会長はみんなのお父さんな役回りで……」

隣に並んで歩いている月子が、嬉しそうに言葉を続ける。
錫也はいつものように、「そっか」と笑顔で頷けなくて、うまく笑顔を浮かべられなくて。

「……お父さん、か――」
「うん、錫也もしっかり者のお母さんだし、私は幸せ者だね」
「……さっき、不知火先輩は俺のこと、騎士って言ってたけど。俺は月子の騎士にはなれないのか?」

お母さん、お母さんってそればかりの役割を嵌める月子に、錫也は少し拗ねたように言葉を続ける。

お母さんでも、幼馴染でも、月子の傍にいられるなら何でもいい――
月子を守れるなら、ずっと守る為に――

そう思っていた気持ちは、今はそう思えなくて。
同じようにお父さん、と言われて同じように見守って、傍にいる一樹を見れば余計に、強く願うことがある。

月子のたった一人に、なりたいと――

「……もうなってるよ。だって錫也はいつも私のこと、見守ってくれてる」

月子の言葉には深い意味なんてなくて、きっとまだ「お父さん」と同じ位置にいる騎士。

「……それじゃ、足りないんだ――」
「……?」
「……いや、なんでもない。それより月子、いいのか?おかんっていうのは……月子が今何を考えてるか、どうしたいのかって、わかっちゃうんだぞ」

錫也の言葉にう〜ん、と考え込みながら、月子が階段を先に駆け下りる。

「早く試験を終わらせて、夏休みになればいい!と思ってる事とか?」

そうでしょう?と見上げてくる月子に追いつくように、段を飛ばして駆け下りて、軽く額を小突く。

「不正解。……不知火先輩、気になるんだろ?勉強は後でも教えてやれるから行って来い」
「……錫也は、何でもわかるんだね」
「当たり前だろ、何年月子の幼馴染してると思ってるんだ?」
「ふふっそうだね……生徒会の仕事、もしまだ終わりきってないなら手伝いたいと思うんだ。一人より二人の方が早く終わるから」

錫也の言葉に甘えて、少しお手伝いして来ようかなと足を止める月子に、錫也は平静を装っていた表情を安堵に崩した。

「…………はは……なんだ、力抜ける――」
「錫也!?」

一樹の傍にいたいから、とかじゃなくて。
仕事があるなら手伝いたい、という月子の言葉。
決定的な言葉を突きつけられなかったことに、ホッとしたのか錫也は膝に手をついてしまった。

「どうしたの?具合悪いの?」
「違う違う、ごめん。大丈夫」

だから、行って来い――

その言葉をかける代わりに、月子の手を許可なしに遠慮がちに握る。

「なあ、お昼まだだろ?一緒に食べようと思ってたんだ。だから……昼、俺が用意してもいいかな」
「お昼?錫也が作ってくれるの?本当っ!?」

手を繋いだことよりも、お弁当のことで頬を上気させる月子に、まったくお前は、と笑顔を向けて。

「邪魔にならないように作ったら持って行って、終わるまで別の教室で待ってるから……いいか?」
「うん、邪魔だなんてそんな事ないよ。錫也のお弁当、食べたいっ!あ、でも錫也も一緒に食べるんだよ。その方が一樹会長も喜ぶと思う」
「はは……それは、どうかな」

いつもなら、幼馴染の枠を抜け出さないように月子の背中を押してあげるけれど。
今日はそんな気持ちになれなくて、少しでも傍に居たいという気持ちが先行する。

寮で待つこともままならないなんて、これから、どれだけ……日々月子に想いを募らせていくのだろう――

「……俺も、まだまだ子供だな」
「?」
「じゃあ、作ってくる。月子の好きなタコさんウィンナーに、野菜炒めも入れるから」
「うん、……ありがとう、錫也」

感謝の気持ちを込めてか、繋がった手にキュッと力が込められる。
小さく錫也の手に収まる月子の手を、錫也は愛おしそうに包んだ――




「こんにちは!」
「……お前っ……何してるんだ?錫也と帰ったんじゃなかったのか?」
「一樹会長が仕事をまだ終わらせてなかったみたいだから、書記としては見逃せなくって」

机の上にある書類に目を落として、やっぱり、と呟く月子に一樹はバツが悪そうに頭をかいた。

「いや、なあ。期日が間違っていたんだ。試験後で間に合う予定だとばかり思っててな」
「言ってくれればいいのに、どうして一人でしようとするんですか?」
「これは俺の確認ミスだろ?それに今は期末真っ只中。俺のように成績優秀な生徒じゃないと、時間的に無理だろ?」

自身の立場を上にあげて、だからお前は帰れ、と続ける一樹に、月子はすぐに首を横に振る。

「おい、明日は苦手な天体物理学だぞ〜人のことより、自分のこと気にしろって」
「それなら、一樹会長だっていつも人のことばかり考えているじゃないですか。たまには、素直に頼ってください。私、そんなに役に立ちませんか?」
「……んな事、あるわけないだろう?月子は優秀な書記だよ、お前がいなくなったら生徒会が回らなくなるぞ」
「だったら……「でもな、錫也と約束してんだろ?こっちのことはいい。だから、帰れ」

心に棘が刺さったように感じながら、一樹は月子に言葉を吐いた。
本当は、傍に、居て欲しいと思う気持ちを押し留めようとするのに―――
騎士の邪魔はしちゃいけない、そう思うのに―――

どこかで傷ついている心から、棘が刺さった場所からそんな気持ちが流れていってしまいそうで―――

「錫也が言ったんです。一樹会長の手伝い先にしてこいって」
「……錫也、が―――?」
「はい。それに一樹会長もお昼まだですよね?お弁当作って来てくれるって!錫也のお弁当はすっごく美味しいですよ」

もう仕事を手伝うと決めたのか、自分の机に書類を一部預かって、腰を下ろして作業を始めながら月子が自慢気に言って。
あーはいはい、と頷きつつ一樹は眼鏡を一度外し、曇りを取るようにしながら努めて普通に返事をした。

「……おかんっていうのも、大変だな。……食い意地張ったヤツがいて」
「一樹会長っ!!」
「バカ、冗談だ。…………でも、錫也が……そうか――んじゃあいつが来る前に気合で終わらせて飯にしたいな」
「はいっ!」

にこっと柔らかいその微笑みをすぐに書記たる顔に引き締めて。
仕事を進める月子に負けじとばかりに、一樹も複雑な予算の計算に手を伸ばしながら、ふと調理室で今頃作っているであろう錫也のことを考える。

自分に対して、いい印象は持っていないだろう錫也が、それでも月子の為にここに足を運ぶという。
お弁当まで作って―――

それだけ、月子への想いが強いのだろうと思うと、父ちゃんとしては、不知火一樹としては喜ぶべきことだった。
月子を見守る男はいっぱいいるだろうけれど、錫也なら、と思える……思えるのに――

喜びきれずに、月子が自分の腕からすり抜けていくような感覚を覚えて。
いつか、この感覚を常に味わうのかと思うと……すり抜けていく月子をそうならないように、強く引き止めたくなる―――

「……見守るっていうのも、楽じゃあない、か」
「…………一樹会長、ブツブツ言わないで仕事ですよ、仕事」
「わ〜かってるって!お前、俺はやるときゃやる男って知ってんだろ?」
「ふふっはいはい。わかってますから手を動かしてくださいね」
「…………おおぅ、颯斗に似てきたな、月子」


いつかは誰かに決まる一人。

今はわからないけれど―――

ずっと月子を見守り続けてきた「おとん」と「おかん」にとって、その一人が決まっても決まらなくても続く……長い、長い恋時間を受け入れられる筈だった。

月子が幸せであるなら、あるように、と―――願い続けた二人の男の、今日は心に僅かな革命が起こった日―――





***




「錫也のご飯は本当に美味しいっ!!いくらでも食べられるから困るよ」
「そう言ってもらえると、俺は作った甲斐があるよ。月子の為に作ったんだからな」
「おっこの卵焼きもすっごい美味いぞー!…………って俺の感想、聞いてるかー!?錫也〜」
「ああ、そうだ。デザートも作って来たんだ。甘いものは別腹だろ?」
「本当っ!!わ〜一樹会長の仕事の確認ミスのおかげで、いい思いしちゃった」
「……お〜そーだな、絶品だな(やっぱり俺は無視か?)……そういや月子、書類作成中にぐぅぐぅ腹の虫鳴かせていたもんなあ。一際美味いだろ?」
「わっそれは…っだって、もう14時だから〜っ」
「俺は鳴かせてなかったぞ?はははっ!……ま、お前は腹の虫も可愛いから心配するなって」
「またそういう事……」
「…………そうだな、お腹の音も寝息も、月子は何だって可愛いよ。俺のお姫様なんだからな」
「ええっす、錫也!?」
「錫也、お前いっつもそんな事さらっと言うのか?(……翼もこれ聞いたら唸るんじゃないか?)父ちゃんちょっと聞いてて恥ずかしくなるっつーか……」
「あはは、不知火先輩には言っていませんから、恥ずかしがらなくてもいいです」
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
「二人とも……?」






END








最後の会話のみのは余計だったでしょうか(不安っ)
すみません、3人の会話もやっぱり、もうちょっと入れておきたくって〜><
でもこれ以上は、錫也が怖くなりそうだったので止めました^^;

二人の月子好きっぷりが伝わったでしょうか??
何より、ちゃんとスタスカの小説になってるのかそれが怖いですが…っ(滝汗)
これでお祝いとさせてくださいv