お礼SS

斎藤VS沖田@




「キャッ!!!!」
「千鶴!!」「千鶴ちゃん!!」

伸ばした手は無情にも届かずに、千鶴は派手に音を立てて池の中へ…
一体どうしてこうなったのか??
話は寸刻戻って…


「くっ!ふっ!」
何やらビュッっと風を切る音ととぎれとぎれに声が聞こえる。
誰かが稽古でもしているのかな?
手伝いもすまし、一息いれようと思っていた千鶴は音のする方へ足を向けた。

中庭の池のほとりでひたすらに木刀を振る斎藤が、そこにはいた。
上の衣服を全部はだけて汗が腕を振る度にキラキラ光っている。
来たばかりの時はどうにもこの上半身だけでも裸になられると
顔が勝手に赤くなって困ったものだけど、今ではその光景にもだいぶ慣れてきた。

稽古の邪魔にならないようにそっと近づくけど、
土を踏みしめる少しの音に気づいて斎藤さんはすぐに振り向いた。

「千鶴、何か用か」
「あっいえ、休憩しようと思ったら声が聞こえて、誰かなと思ったものですから」

「あの、お邪魔じゃなければ少しここで見ていてもいいですか?」
「・・・構わないが、見ていても退屈だと思うが」
「いえ、斎藤さんの稽古の様子ってきれいで、見惚れちゃうんです」

さらっと何でもないことのように言う千鶴に反して、ほんのり頬を赤める斎藤に

「?顔、少し赤いですね、風邪とかじゃないですよね?」
「い、いや、違う」

余計に顔が熱くなってきて、見られまいとクルっと千鶴に背を向けると
また、そのままさっきの続きを始めた。が・・・・・・

ジ〜〜〜〜〜

・・・・・・・・・・・見られている。。

視線を痛いほどに感じてチラッと後ろを見ると千鶴とばっちり目があって。
ニコっとほほ笑まれれば温度が急上昇する。

「くっ!!」
あまり考えないように、考えないようにと無心で木刀を振るも
後ろの千鶴から見ても見えるくらいに、耳まで真っ赤になっていて。
先ほどの稽古の凛とした様子はなく、むしろヒュッと鳴っていた音がブンブンと鈍い音を立てていて。

ふふ、斎藤さんのこういうところ、かわいいな〜
普段無口で、無愛想な分、こういうところがみられると嬉しいんだよね、かわいい。

本人が聞いたら顔から火が出るようなことを考えていたら急に視界が閉ざされて。

「だ〜れだ?」
「・・・・・こんなことするのは沖田さんです」

ぱっと視界が開けたとたんにすぐ目の前に嬉しそうに口の端をあげる沖田さん。

「すぐにわかっちゃうのもつまらないけど、でも何だか僕のことよくわかってるって感じだね〜」
「わからない人、いないと思いますよ?」
「そうかな〜でもこんなことするの千鶴ちゃんにだけなんだよ?」

無邪気に微笑んでくる沖田さんを見るとかわいい。
「子供っぽいいたずら、私以外にもよくしてると思いますけど」
「そうかな・・・してないよ」

今度はムキになって、かわいいな〜
「そういうところ、最初は苦手だったけど、今はかわいいと思いますよ」

またまたさらっと何でもないように言う千鶴に、満足げな沖田。

「で、何か言いたげな斎藤君、何?」
「・・・・いや、別に。少し休もうとこちらに来ただけだ。」
「ふうん、僕が来たとたん休憩?じゃあそこ座れば」

ついと千鶴の横をさして、座ればという沖田の行動に少し疑わしく思いながらも座ろうとすると、

「じゃあ千鶴ちゃん、僕たちは池のほとりで涼んでこようよ」
「・・・・総司、きたないぞ」
「何が。ね、千鶴ちゃん行こう」

そういって千鶴の手をつかもうとする沖田をさえぎろうと斎藤が手をのばす…

はしっ!!

手をつなぎあった状態になったのは沖田と斎藤で。

「・・・・・・・・何してんの」
「・・・・・・・お前が手を伸ばすから」

急いで二人で手をほどこうとしたとき

「ふふ、仲いいんですね〜じゃあ三人で涼みましょう」
「「ちが〜う!!!」」
心の中で泣きたいほどに叫んだ二人であったが、千鶴と一緒にいたい気持ちは同じで。


一人楽しそうに大きな鯉〜とかはしゃいでる千鶴を横目に火花散らす二人。
(いいかげん向こういきなよ、邪魔だよ)
(もとはといえば、お前が邪魔したんだ。総司こそ、部屋へ戻れ)

目でバチバチ会話する二人に気づいて
仲がいいんだか、悪いんだか。放っておいたらひどくなるよね、きっと…よし。

「斎藤さん、沖田さんいい加減に・・・」
「やるの!?」「やるか!?」

急に大声出した二人にびっくりして体をのけぞらせてバランスを崩した千鶴は、
派手な音をたてて池に落ちてしまったわけで。


「すまない。こんなことになって」
急いで引き上げた千鶴の姿をみて己の不甲斐なさに落ち込んでしまうが
「いいんですよ〜気にしないでください」

「ごめんね千鶴ちゃん。何か拭くものを・・・」
滴り落ちる水を着物ごとギュっとしぼる千鶴に、今度ばかりは反省して。
「大丈夫です!着替えてきますね」

「「じゃあせめて、部屋までこれを」」
「え?」

そういって2人が同時に差し出したのは

斎藤がいつも首に巻いている首掛け
沖田は上掛けを。
二人がまたお互いを嫌そうに見ていて。

「ええっ!?大丈夫ですよ、部屋までそんなにかからないし」
「いかん、風邪でも引いたら申し訳が立たない」「だめ、風邪引いたらいけないし」

また同時で声をかける二人。そしてまた嫌そうにお互いを見やってて。
その様子がなんだかおかしくておかしくて。

「二人とも、やっぱり仲がいいんですよ」
くすくす笑いながら、二人が差し出したものをありがたく受け取って
沖田の上掛けをはおり、斎藤の首巻きでそっと濡れた髪をぬぐいながら二人を見上げて。

「ありがとうございます。また一緒に涼みましょうね?」


濡れた髪に、白い肌。少し潤んだように見える瞳にほんのり赤い頬。
それで上目使いで微笑まれ、首をかしげるのだからたまらない。

千鶴が走り去った後も、まだポーっとなっている二人が佇んでいたらしい。



END





押していただいた方に感謝をこめて。
みかん。