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沖田VS左之・・・「雨の日は」





「あれ?降ってきた」

軒先からそっと空を仰ぐと、空は真青なお天気なのに、パラパラと雨が降り出してきた。
「天気雨かな〜」
「まあ、このくらいの雨ならすぐに止むんじゃねえか?」

独り言に返事をされて振り向くと、同じように原田が空を仰いでいて。
「総司暇そうだな〜暇なら一杯いっとくか?」
「・・・やめとくよ、夜に見回りあるしね」
「なんだ、そっかよ〜」

本当は、それだけじゃないけど。

総司は、ちょっと前に土方に頼まれて千鶴が使いに出かけたのを見ていた。
まだ帰った様子はないから、出かけるふりして迎えに行ってみようかな?と思ったのである。

幸い雨も降ってきて、迎えに行く理由はできたし。

「佐之さん、僕ちょっと用を思い出したから出かけるけど、土方さんがもし何か言ってきたらそう言っておいて」
「おお、本降りになってきたから気をつけろよ」
左之さんの言うとおり、雨はザーザー本降りになってきていた。

「さっ、番傘を持って〜っと・・・」

どうせ迎えに行くなら…うん。そうしよ〜



「う〜ん・・・どうしよう、走って帰った方がいいのかな?」
こちらは本降りになってきた雨に参っている千鶴。
走って帰ったとしても、土方に頼まれた品が濡れてしまうかもしれない。
仕方ない、もう少し待ってみよう・・・そう恨めしげに空を眺めていると、

「千鶴ちゃん?」
「え?あ!沖田さん!沖田さんもお出かけですか?」
「うん、ちょっと用があってね〜どしたの?雨宿り?」
「はい・・・もう少ししたら止むかもしれないし」
「これは止まないよ〜」

なぜか楽しそうに笑みを浮かべながら沖田が言う。

「そう、ですね・・・やっぱり走って帰ります」
「いいの?その包み濡れても」
「・・・やっぱりそう思います?」
「うん。ねえ、僕と相合で一緒に帰る?」
「え?いいんですか?でも、沖田さん用事は?」
「うんいいよ別に、千鶴ちゃんに貸しができるし」

にっこり微笑まれて、その見返りに何を求められるのか…少し怖い気もするけど、この場は仕方ない。

「えと、はい、じゃあお願いします」
「うん、素直ないい子だね」

嬉しそうに傘を傾けて千鶴を入れようとしたその時、

「おっ!千鶴〜ここにいたのか!」
「原田さん!」「左之さん・・・」

二人が同時に振り向くと

「あれ?総司何してるんだ?用があったんじゃ?」
「・・・・・その言葉左之さんにそのまま返すよ、一杯飲む気じゃなかったの」
「ああ、そうしようかと思ったんだけど、土方さんに千鶴を迎えに行くように言われてな」
(余計な事を・・・・)
「ん?何か言ったか?」
「いや、何も」
「あの、原田さんすみません。お休みの時に手間を取らせて・・・」
「いいってことよ!千鶴の体を雨露で冷やすわけにはいかねえし・・・まあそうなったら俺が温めてやるけどな?」
「もう、原田さんったら」

ふふ、ははと何とも言えない甘い雰囲気を二人で醸し出しあっている…
「あっじゃあ、私は原田さんに送ってもらうので沖田さんは用を済ませてください」

さっきまで自分の傘に身を寄せようとしていたのに、今はもう原田からもう一本の傘を受け取ろうとしている。
「へ〜総司、千鶴を送る気だったのか」

にやにや何かを勘ぐるように沖田に視線を向けて
「安心しろよ〜俺がしっかり!送り届けるから。さっ千鶴行こうぜ」

そう言って見せつけるように、さりげなく手を千鶴の背中に回すのをしっかり見た総司は・・・

バキッ!!!

「なっ何するんだよ!?総司〜てめ〜していいことと悪いことがあるだろうが!!」

後ろから不意打ちをくらって見事に壊された番傘を振り回して原田が総司に向かい直ると

「なんのこと?風じゃない?」

飄々と言い放つ総司。

「お前な!嫉妬するにしても被害をだすなよ!」
「何のこと?」
「ど〜せ、用なんかないんだろ!?」
「え?でも・・・」

状況が全く理解できずおろおろする千鶴を尻目に二人はまだにらめっこ。

「どうせ千鶴と一緒に帰ろうとかそんな用だろ?」
「え!?そうなんですか!?」

原田の言葉に赤くなって千鶴が総司を見ると、

「そうだよ、それが何。せっかく相合傘で帰られると思ったのに、でももうわかったからいいよね?さ、千鶴ちゃん僕と帰ろう」

ぱっと千鶴が持つ傘を手にとって原田に投げると千鶴を引っ張ってちゃかり相合傘にして、さっさと帰ろうとする。

「ちょ!?待て!千鶴!俺と一緒に帰ろう、土方さんに迎えに行くように言われたのは俺だしな」

とっさに千鶴の腕をつかみ自分の傘の下へいれようとすると、総司もしっかり反対の腕を持っていかさないように。
二人して千鶴の腕を引っ張りあいながら、そうして千鶴を間にはさんでバチバチ火花が散りあう。
あまつさえ、俺の女的な発言もぽんぽん言いだすから千鶴はたまったものではない。
「腕が・・・痛い・・・」
そんな千鶴の呟きなど、全く聞こえないまま、結局雨がやむまでその場に三人いたそうな。



END



感謝の気持ちをこめて。
みかん。






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