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※沖田さんと千鶴は両想い設定です




「で、何でこうなってるいるのかな?」
「左之、新八、平助…これはどういうことだ」
「おい・・千鶴、千鶴っ!…駄目だ完全に潰れてんな…てめえら!ちゃんと見ておけよ!」

土方、総司、斎藤の三人が少し遅れて島原に到着してみれば…

千鶴が畳に横たわってつぶれていたのである。

「ち、違うって!別にオレらが吞ませたんじゃなくて!!」
「何かこの程度なら大丈夫でっしゃろ?とか芸者に言われて…千鶴ちゃんも断り切れずに吞んでたんだって!」

その新八の言葉に、斎藤が顔をしかめる。
ちなみに総司さんはずっと殺気を隠さずに三人睨み通しです。

「それならば、お前たちがもっと配慮すべきだろう。言い訳にもならん」
「いや、俺らだってこいつには吞ますなって言ったんだぜ。そしたら千鶴がその芸者が落ち込むの見て・・・」

・・・・・・・なるほど。

心優しい千鶴のこと。
どうやらその芸者は初めて仕事を任されたらしく、緊張していたらしい。
だからこそ、断れなかったのだろう…

酔い潰れた千鶴を上から眺めながら土方がはあ、と頭をかいて。

「とりあえず、部屋を用意させる。連れ帰るのは無理だな。そのまま寝かせとけ」
「ここに泊まらせるんですか?土方さん。僕が連れ帰ってあげますよ」
「・・・その状態じゃ、無理だろ」

そのまま土方が部屋を出て。
斎藤も千鶴を気遣うように腰を傍に下ろしたのだが。

・・・・・・・・・冗談じゃない。
ここに置いておく方が危険じゃない?

半開きになった唇は艶めいていて。
酔って上気しているのか、頬だけではなく、細い指先までがうっすら染まっているようで。

「斎藤君、お酒吞んできなよ。ほら、向こうで手を振って呼んでるし」

というか、傍にいてほしくない。
邪魔だよ?とばかりに遠まわしににこにこ笑いかけながら、三人の方を指させば・・

「・・わかった。では千鶴を頼む」
「頼まれなくたって見るつもりだよ」

そんなの決まってる。
この子の恋人は僕なんだから。

横たわった千鶴に目を移して。
・・・やっぱり屯所に連れ帰ろう。

そう思い、千鶴にゆっくり手を伸ばした時。
パチっと不意に目が開かれた。

「・・・沖田さん?」
「大丈夫?」
「・・・は、い・・・・」

明らかに大丈夫じゃない。

「あのねえ、無理なら無理だって言いなよ。我慢したっていいことないよ」
「…はい、すみません」
「大体、人にいい顔しすぎなんだよ。人のことなんて放っておけばいいのに。それで君が倒れてちゃどうしようもないじゃない」

後から後から文句が出て来て。
その文句にいつもならしょぼんとする千鶴だけど、今日はちょっと違った。

・・・目に涙を浮かべてる

「・・・・・・・沖田さん、私のこと、嫌いになりました?」
「・・何でそうなるの。そういうことを言っているんじゃなくて」
「だって、目も合わせてくれないし。こんな醜態さらして・・呆れたんですよね・・すみません」

・・・目を合わさないのが、嫌いになったからとしか思えないのが・・鈍感すぎるよ

「呆れはしたけどね」
「・・・・はい」
「下向かないの。余計気持ち悪くなるよ・・・・・嫌いになんて、なってない」

千鶴が、おずおずと顔をあげているのが気配でわかる。
そう、気配で。
未だに目を合わせられていない。

「・・・嫌いじゃないですか?」
「うん」
「あの、その、それなら…」
「好きだよ、多分ね」

近くにはいないけど、遠巻きにはいつもの仲間がいる。
時折こちらを見ているのがわかるから、あんまりこの話題を引っ張りたくなくて終わらせるように言葉を放つ。

いつもなら、見せびらかすように言えるのに。

「・・・・・嘘です」
「は?」
「だって、ちっともこっち見てくれないし」

その言葉に、千鶴にそうじゃないとばかりに目を向ければ、
涙目でこちらを見上げて…

「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・?」
「千鶴ちゃんだって、僕がじっと見たら目を逸らすじゃない。一緒だよ」
「私は…照れているんです」
「だから、一緒だってば」

顔が熱い――
周りに気が付かれないようにぱっと体を飜せば千鶴にその腕を掴まれて。

「・・・おんなじですか?」
「・・・・・・」
「・・・沖田さん~~~「おんなじだってば!」

からかう方が楽しいのに。
千鶴が慌てる様を見るのが好きなのに。
今はまるで逆だ。

・・・何か後ろで笑われている気がする・・・

スーっと静かな音を立てて、土方が部屋に入って来る。
起きた千鶴に気遣うような視線を向けながら…

「おう、千鶴・・気がついたか。頭がガンガンだろう?部屋取ったから休んどけ」
「・・・いえ、私屯所に・・「じゃあ僕が連れていきます」

確かに頭はガンガンするけど、少休めばきっと歩けるようになる。
そうぼんやり考えていた千鶴の体は、総司によって宙に浮く。

「おまえ、ゆっくり運んでやれよ」
「嫌だな土方さん、そんなのわかってますよ」

すぐ耳の近くに総司の声。
ああ、沖田さんが運んでくれてるんだ、と安心してその着物をきゅっと掴んだ、が――

「今日は僕もそのまま泊まるので・・・よろしく」

・・・・・・・・・・え?

コキーンとその場にいた一同が固まる中、ようやくいつもの調子に戻ったのか、にこにこ笑っている総司の顔は心なしかちょっと怒っているような?

「あ、あの沖田さん冗談ですよね?」
「冗談?何が…」

いつの間にか部屋に運ばれて。
それでも静かに床に下ろされた。

「だ、だってあの!みんな隣にいるし!その!・・戻ってください」
「・・・そんな格好で、あんなこと言われて・・・僕を煽ったのは君だよ?何をいまさら…」

覆いかぶさる総司は楽しそうに、千鶴に口付けを落としたのでした。


甘い長い夜の始まり。






END