拍手お礼SS



沖千・・・「不戦勝」



「う〜ん、けど総司は本当にすぐ気付いたよな〜」
「?何、なんの話?」
「だからさっきの!薫とかいう人と千鶴が似てるのをさ!」
「ああ、まだ言ってるの」

見あきた顔だし、すぐわかるよと飄々という沖田になおも食いついて

「でもさ、化粧もしてて、感じも違うのに・・・」
「・・・・・平助の将来が不安になるよ」
「何で!?」
「ま、まあまあ」

2人の間に立って

「でも、沖田さんに言われて横に並ぶまで私も気がつきませんでしたし」
と言えば同意を得て満足そうな平助君。
「だろ!あ〜でもあれだな〜・・・・」

じ〜っと私を食い入るように見つめてう〜んとうなった後、

「千鶴も・・・化粧してあんな格好したらすごいべっぴんさんになるってことだよな!」
「ええ!?無理ですよ無理!」
「だって!顔も瓜二つなんだろ!きっとそうなんだよ!それに・・・元もか、かわいいと思うし?」
「平助君・・・ありがとう」

そんなほのぼのコンビを嫌そうな顔で見る男が一人。

「あ〜やだやだ、そんなの二人きりの時にしてくれる?」
「な、何言ってるんだよ、総司〜!!お、俺、じゃあ先行くから」

その後、無言で歩く沖田に気まずくな耐えかねた千鶴が声をかけた。

「沖田さんはどう思います?」
「なんのこと?」
「あの、私がお化粧したらって話・・・」

とたんにブスっと顔を不機嫌そのものに変えて放った言葉が・・・

「ばかばかしい」
「こんなお子様がそう簡単に変わるわけないよね」
「色気のいの字もないのに」
「やるだけ無駄」
「恥の上塗り」

などなど・・・・
あまりにもつらつらと暴言を並べられてついに千鶴が口火を切った。

「沖田さん!私だって、頑張ったら沖田さんが思っているより少しはマシだと思うんですけど!」
「へ〜言うね、じゃあしてみたら?そんな姿して誰かほめてくれるか試してみる?」
「言われなくたって!!」
「でも、どこで頑張るの?」
「???」
「屯所ではそんなこと無理だね、僕の不戦勝ってことで」
「〜〜〜〜〜〜」


屯所に帰って、自分の部屋に戻って、思わず鏡を見ると憂鬱そうな、陰気漂う顔が映ってる。
そりゃ、そんなに大した容姿じゃないけど…あそこまで言わなくても…
はあっと溜息をついていると
「何してやがる、陰気くせえな」
「っ!?土方さん!どうなさったんですか?あっ呼ばれてましたっけ?」
「いや、違う違う、これを近藤さんから預かってな」

受け取った風呂敷包みを開けると中には桜色の着物が

「・・・これ、私に?」
「ああ、たまには華やかなの着て気分を晴らさせないとかわいそうだとか、あの人も甘いな」
「屯所内で着てもいいんですか?」
「ああ、っていっても部屋の中か、幹部しかうろつかないここいらだけになるが、でも1日だけな」
「十分です!ありがとうございます!」

真っ先に思いついたのは昼間の沖田さんとのこと。

トントン
「は〜い」
「沖田さん!千鶴です。今ちょっといいですか?」
「・・千鶴ちゃん?」

襖が開いて私の姿を認めると意外なような顔をしていた。
「どうしたの?」
「屯所で着物着れることになったんです。」
「はあ?何でそんなことに?」
「土方さんが・・・・」
「やっぱりろくなことしないね、あの人」
「近藤さんに頼まれて持ってきてくれたんですけど」
「・・・・・・・・先に近藤さんの名前出してくれる?」
「ということで、頑張って着付けしますから!」
「別にいいけど、誰に見せるつもり」
「え?幹部の皆さんに・・・」
「そんなの、みんな世辞できれいっていうに決まってるよ」
「うっ・・・・でも、土方さんや斎藤さんは本心しか言わない気が・・・」
「・・・・・・・・・・」
「じゃあその二人に見せて感想聞きます。それでいいですよね?」
「・・・・・・・・・・」
「それじゃあ失礼します」

歩き出そうとしたところで腕を掴まれて

「僕の負け」
「・・・・・・・・・・・?え?」
「だから、僕の負けって言ったの。だからそんなくだらないことしなくていいよ」
「くだらないって…沖田さんが最初に言い出したんじゃないですか!私やりますから!」

行こうとするも腕をがっちり掴まれて行けない。

「あの〜・・・腕を・・・」
「あ〜〜〜!!もう鈍いのにも程があるよ!それ計算だったらすごいけど、本気だからたちが悪いよ」
「なっ!?どこが鈍いんですか!」
「・・・・・・・・・・・」
「言わないとわかりません。鈍いですから」

きっぱり言うと、あ〜と手で髪をくしゃくしゃしながら沖田さんが

「だから!!そんなきれいにした姿、他の男になんか見せたくないって言ってるの!!」

大声で、真っ赤になった顔や耳を両手で隠すようにしながら叫ぶように

「化粧なんかしなくたって、着物なんか着なくたって、かわいいんだよ!そんなこと知ってる!」
「わざわざほかの男にそんな姿見せるほど僕は余裕じゃないの!だから・・・・・」

すっと顔をそらして、真っ赤になった顔を片腕で少し抑えるようにしながら
「・・・・僕の負け。・・・・さすがにわかったよね?」



同じく真っ赤になった千鶴はこくこくとうなずくことしかできなかった。




END




押していただいた方に感謝をこめて。みかん。





戻る