────一体、何がどうなってそうなったのか。

「ねぇ、千鶴ちゃん。写メとるからこっち向いてー♪」
「あ、あの……沖田さん。今はそういう場合じゃ……」
「へ? 何が?」

皆が楽しむ昼休み。

ホントに何のことだか分からないとばかりに沖田が目を丸くする。
反対に千鶴は一人で困ったように行ったり来たりを繰り返している、────机の上で。

「なぁ、総司。オレもそんなことしてる場合じゃねぇと思うんだけど」
「何言ってるの、平助君。こういうことは滅多にあることじゃないよ? だったら今出来ることを楽しんでおかないと」
「いや……、今出来ることは千鶴を元に戻す方法を考えることだと思うんだけど……」



◇◇◇



事は今朝まで遡る。

いつものように、平助・千鶴・沖田の三人で学校へと向かっていた時のこと。
チャイムが鳴る五分前、三人は学校へと続く通学路を二人は慌てながら、一人は口笛なんぞを吹きながら走っていた。
あの角を曲がれば学校はすぐそこ、というところまで来た時にそれは沖田……ではなく起きた。

『千鶴! 今日は何とか間に合いそーだぞ!』
『ほんと!? よ、よかった〜』
『でも、いつものようにあの二人が待ち構えているからそう簡単には校門くぐれないと思うけどねー』

そんな会話をしながら曲がり角を曲がろうとした時、千鶴は地面に落ちていた何かを踏んでしまった。

────カチ。

そんな機械音がしたかと思うと、いきなり足元から勢いよく煙が立ち込めたのだ。

『キャ────ッ!』

『お、おい! 千鶴!』
『千鶴ちゃん!?』

二人が慌てて煙の中に手を突っ込むが、千鶴に当たった感触がなく。
するりと手がすり抜けてしまう。

『は?』
『どうなってるのかな?』

疑問を浮かべる二人を前に、煙は段々と空中へと消えていき、いつの間にか跡形もなくなっていった。
しかしそこには本来いるべき千鶴の姿が見当たらず……。

『は!? ちょ、千鶴!?』
『え? 何これ? SF?』
『んなこと言ってる場合じゃねーよ、総司! 千鶴のやつ、どこに行っちまったんだよ!』

現状に慌てる平助と、表面上は落ち着いている沖田。
既に始業時間を過ぎていることなどは頭になく、その場に立ち尽くしていた。

すると────…。

『あ、あの……っ!』

『ん? 今、どっかから千鶴の声聞こえなかったか?』
『うん、聞こえた。でもどこにいるのかな? 千鶴ちゃーん?』

『は、はいっ』

沖田がわざとらしく語尾を間延びしながら呼んでみれば、再び千鶴の声が聞こえてきた。
しかし、辺りを見渡してみても千鶴の姿は見えない。
と、沖田が自分の制服のズボンを引っ張る感覚を覚えて、ふと下を見た。

『あ、いた』
『マジ!? どこだよ!』
『ここ』

ここ、と言って沖田が指し示したのは、自分の真下。
平助が見てみれば、そこには沖田のズボンを引っ張る小さな千鶴の姿があった。

『………え?』

一寸遅れて平助がようやく言葉を放ったのはそれだった。


『ええぇぇぇぇぇぇ!?』



◇◇◇



小さくなってしまった千鶴が学校に行く訳にはいかない。
そう思ったのだが、沖田は千鶴を自分の手のひらにひょいと乗せると、そのまま学校に向かって歩き出した。
そして教室へ、ではなく、やってきたのは保健室。

保健医である山南に事情を話してみたところ、山南の提案で保健室で過ごすことになったのだ。
例の怪しい赤い薬なるものを所持している山南は、別段驚く様子もなく。

“まぁ、今日一日は保健室で過ごすと良いでしょう。沖田君と藤堂君はきちんと授業に出なさい。先生方には私から上手く説明しておきましょう”

と、えらくスムーズに話が通ってしまったのだ。
平助と沖田、そして校門の前で小さくなった千鶴を目撃した斎藤と薫は、休憩時間になる毎に千鶴の様子を見に来ていた。
もちろん、保健委員の山崎も同様だったりする。

そして昼休みになり、皆が示し合わせたかのように保健室に集合した……という状況である。

「う〜ん、ちっちゃくなった千鶴ちゃんってホントに可愛いね。あ、大きくても可愛いから安心してね」
「は、はぁ……」
「だーかーら! 早く千鶴を元に戻す方法を調べないと!」
「平助君、君さー、せっかちだよ?」
「総司がのんびりしすぎなの! なぁ! 一君も何か言ってくれよ!」

ソファに座った斎藤は先程からじっと黙ったままだったのだ。
こういう時、真っ先に沖田を諌めるのは斎藤の仕事だとばかりに平助が斎藤へ助けを求めた。
すると……。

「……雪村。一度くるりと回ってみてくれないか」
「え? こ…こう、ですか?」
「…………うむ…可愛い」

「この人もオレの話聞いてねーよ!」

どうやら斎藤は小さくなった千鶴に目を奪われていた。
いつもの斎藤らしからぬ、キラキラと輝かせた瞳で千鶴を見つめている。

「くっ……! ここは頼りたくねーけど、千鶴と血の繋がった薫なら────」

平助は斎藤の隣に座る薫に目を向けた。

「千鶴。何なら俺がお前のフリをして授業受けてあげてもいいよ。────ただし、後で俺の言うこと一つ聞いてもらうけどね?」
「そ、それはちょっと……」

「全然解決する気がねーよ、こいつ!」

薫は斎藤とは違うが、何やら楽しそうに笑っている。
これを機に千鶴に貸しでも作りたいようだ。

「相変わらず素直じゃねーな、こいつ。やっぱここは山崎君だよな!」

一縷の望みをかけて平助は山崎を見た。

「ふむ……、ここまで小さくなってしまうと今日は雪村君に飴をあげられないな。すまない」
「い、いえ。そんな!」
「そういえば保健室に確かトンカチがあったな。あれで飴を砕けば……。ちょっと待っててくれ」

「この人、こんな時まで千鶴に餌付けする気かよ!」

というか、何故に保健室にトンカチが……。
千鶴を中心にまとまっているようで、これっぽっちもまとまっていない面々に平助は肩を大きく落とした。

「ご、ごめんね、平助君。私のせいで迷惑かけちゃって────」
「ん? あぁ、別に気にすんなって。千鶴のせいじゃねーし。それよりもどうしたら元に戻るんだろうな」
「そうだよね……。何か踏んじゃったのは分かるんだけど、煙が消えた後は何も落ちてなかったし……」
「せめてその踏んだのが何か分かればまだ考えようもあるんだけどなー」

平助と千鶴は二人して困ったように唸っている。
いくら考えても原因が分からない以上はどうしようもないのだが。

そんな二人に沖田が口を挟んだ。

「何考えてるの、二人とも」
「何って、千鶴をどうやって元に戻すかをだな────」
「明日には戻ってるんじゃない?」
「何でそんなのが分かるんだよ」
「だって、大体ゲームとかアニメとかだったら、翌日にはすっかり元に戻ってるパターンが多いじゃない」
「いや、そんなゲームとかアニメの話を出されても」

呆れる平助とは反対に沖田は相変わらず笑みを浮かべている。

「だってさ、考えても分からないし。とりあえず時間が経てば戻るかもしれないし、戻らなかったらその時考えればいいんじゃない?」
「……なんかそう言われたらそう思えてくる自分がやだな」
「ほら。習うより慣れよって言うじゃない」
「……それはなんか違うと思うんだけど」

しかし、沖田の楽観的な物の考え方も分かると言えば分かる。
結局、いくら考えても答えなど出はしないのだから。

「千鶴。とりあえず、一日様子を見てみようぜ。それでダメならオレが何とかしてやっから!」
「ありがとう、平助君!」

千鶴が平助の指先に手を置いて、平助の顔を見上げながらお礼を言う。
その仕草が平助のポイントを突いたのか、見る見るうちに顔が赤くなっていった。

「べ、別に礼なんて────! オレはただ思ったことを言っただけで────」
「それでも嬉しかったから。ありがとね、平助君」

何やら良い雰囲気だが、もちろんそれはこの男によって壊された。

「ちょっと。何勝手に美味しいところを持っていってるの」
「うわっ! そ、総司! 急に人の顔を覗きこむなよ!」
「平助君が胸キュンワールド繰り広げてたからじゃない。────それより、千鶴ちゃん。“美味しい”と言えばお腹、空かない?」
「そ、そういえば……」

身体は小さくなってもお腹は空くらしく、タイミング良く千鶴のお腹がキューっと鳴ってしまった。

「す、すみませんっ」
「もう、千鶴ちゃんってばさっきから可愛すぎるよ。そんな千鶴ちゃんにはい、これ。僕のお菓子、あげるね。お弁当は食べ辛いだろうし」
「あ。……ありがとうございます」

そう言って沖田が差し出したのは沖田の常備菓子であるポッキーだった。
千鶴の持ちやすい大きさに折って差し出されたそれを、千鶴はおずおずと受け取った。

「何だかおっきなポッキーを一人占めしてるような気分です」
「ねぇねぇ。早くそれ、食べてみて」

沖田が急かすように言う為、千鶴は両手でしっかりと持ってリコーダーを吹くような感じで一口齧ってみる。
すると、そこらからパシャ、パシャというシャッター音が聞こえてくる。

見れば、平助以外の四人が一斉に携帯で千鶴がポッキーを食べるところを撮っていた。

「おいおい、お前ら────」

平助が止めようとすると、沖田が楽しそうに携帯画面を見つめている。

「いつもの千鶴ちゃんも好きだけど、小さい千鶴ちゃんもまた格別だよね。────あぁ、何だろう、この気持ち。あれかな。こういうのを“萌え”って言うのかな」
「総司の萌え論はどーでもいいよ」

「そのままでも充分可愛いが、ポッキーを食べている仕草はまた一味違うな。雪村とポッキーの相乗効果は抜群と言えるだろう」
「いや……一君。真面目な顔して言ってる割りに大したこと言ってねーからな?」

「別に俺はお前のことなんて何とも思っちゃいないけど、こうしてお前の写真を撮っておけば後々何かに使えるかもしれないだろ?」
「そう言いながらちゃっかり待受けにすんなよなー。ホント薫は素直じゃねーよ」

「人が物を食べる姿にここまで魅了されるとは……。いや、これは『人』ではなく『雪村君』だから感じることなのだろうか」
「山崎君、哲学っぽく言ってるようだけど、中身すげーどうでもいいことだぞー」

かつてないボケの量に平助は疲弊してきていた。

「何なんだよ、この状態。オレか? オレがおかしいのか?」

そんな平助をよそに、千鶴に餌付けタイムが始まったらしい。
皆が千鶴相手に各々の食べさせたいものを与え始めた。

「千鶴ちゃん。今度はさ、このイチゴ抱きついて齧ってみて」
「雪村。このクリームパンに上にダイブしてから食べてみてくれないだろうか」
「千鶴。俺のデザートであるこのドーナツの真ん中に入って内側から食べなよ」
「雪村君。この砕いた飴を先程のように両手で持って舐めてみてくれ」

「なんかそれぞれの注文がどうでもいい動作付きなんだけど……。何、抱きつくとかダイブとか」

千鶴は一度にお願いされ、困った様子で皆の顔を見上げていた。

「あ、あの……こんなにたくさんは」

いつもなら皆の好意に甘えて受け取っているところだが、いかんせん今は小さくなっている状態。
これら全てを食べるのはなかなかに大変なことである。

困った千鶴を見かねて、平助が千鶴を手のひらに乗せ、四人から距離をとる。

「千鶴が困ってんじゃん! もーお前ら教室に帰れって!」
「わっ、平助君っ」

急に高い位置まで上げられ、千鶴が驚いて平助の指にしがみつく。

「ちょっと平助君。一人占めはよくない。実によくない」
「一人占めじゃねーし! 確かに今は様子見だけど、お前らただ千鶴遊んでるだけじゃん!」
「別に遊んで何かいないよ? いつものように千鶴ちゃん遊んでるだけだもん♪」
「もん♪じゃねーよ! 可愛かねーんだよ!」

「しかし、雪村も一人でいるよりは気が紛れていいのではないか?」
「斎藤さんのいうことも一理ありますね。確かに一人でいては色々と後ろ向きに考えてしまうこともある。雪村君、授業中一人にしてしまってすまなかったな。保健委員である俺が傍にいればよかった」
「そんな! 山崎さんも授業があるんですからそういう訳には────」
「とか何とか言っちゃって。どうせ俺の妹を一人占めしたいだけなんだろ?」
「そ、そんなことは断じてない! 断じてないからな、雪村君!」
「動揺しながら言われても説得力ないよ、山崎君」

まとまりがあるようで全くない面々が口々に話す中、斎藤が抜け駆けしようとした。

「雪村。まだ昼休みの時間は残っている。良ければ、俺と一緒に校内を散歩でもしないか? ずっと保健室にいては息も詰まるだろう」
「えっ? で、ですがこの大きさでは……」
「俺の制服の胸ポケットに入っていれば大して目立たないだろう」

さぁ、と斎藤が平助の手のひらに乗っている千鶴に向かって両手を出してくる。
こちらの手のひらに乗れ、と言いたいらしい。

「斎藤君? 何勝手なことしようとしてるのさ」
「勝手なことではない。俺は雪村のことを思ってだな────」
「それにしてはすっごく楽しそうだけど?」

とかなんとか言いながら、沖田もすっと千鶴の前に両手を差し出す。

「ねぇ、千鶴ちゃん。僕の方においでよ。それでさ、僕と一緒にラブラブランデブーで、ナウでヤングな校内デートしようよ」
「うわー、ちょくちょく出てくる単語が妙に古いんだけども!?」

「千鶴? こういう時、最初に頼るのは普通、兄であるこの俺……だよね? 分かってるなら俺の手に乗りなよ」
「怖ーよ! その笑顔が妙に怖ーよ!」

「雪村君。君に何かあった時に他の者では対処出来ないだろう。だから保健委員のこの俺に────」
「保健委員だからって何が出来んだよ、山崎君」

とりあえず一通りにツッコミを入れておく平助。
だが、皆がこうして手を差し伸べているので、何となく自分も千鶴のことを想っているのだと暗に伝えておきたい。
平助は既に自分の手のひらに乗っている千鶴に向かって口を開いた。

「千鶴、一人が不安だったらオレがいてやるからさ。だから、このままオレと一緒にいろよ。な?」
「平助君……、みんな……」

小さくなった自分を気味悪がる訳でもなく、いつものように自分と接してくれるみんなに千鶴は感謝の思いで一杯だった。
自分が今後どうなるかは分からないが、みんながいてくれるなら何とかなる気がしてきた。

「ねぇ、千鶴ちゃん。どうする? 僕とデート、するよね?」
「言い出したのは俺だ。雪村、俺と共に行こう」
「馬鹿だね。こういうのは兄である俺の役目だろ」
「一番安全なのは俺のところでしょう」
「何言ってんだよ。既に千鶴はオレの手のひらにいるんだから、オレでいーじゃん」

まとまりがあるようで……以下略。
ぎゃんぎゃんと言い合いをしている五人に向かって、千鶴は今の自分の想いを告げた。

「皆さん、私のことを気遣ってくださってありがとうございます。最初は不安だらけだったんですけど、皆さんのおかげで何だか気持ちが楽になりました。なので────私は、皆さんとお散歩がしたいです」


「「「「「なっ!?」」」」」


千鶴は笑顔でお礼を言いながらペコリと頭を下げる。
まさかの全員、という選択に皆が動揺を見せた。

しかし、満面の笑みで千鶴にこう言われてしまうとそれを無下にも出来ない。

「仕方ないなぁ。全員でデートだなんてすごいやだけど」
「というよりも千鶴は小さいから実質、男五人で歩いているだけだな。傍から見ると」
「一君、何だかテンション下がるようなこと言わないでくれよー」
「というか、何でこの俺がお前らと並んで歩かなくちゃいけないんだ」
「この五人で歩いて何か揉め事でも起こらないかが心配だ」
「山崎君、不吉なこと言うなよ!」

何はともあれ、みんなで仲良く校内をお散歩……とはいかず。
沖田が出鼻を挫いた。

「じゃあさ、みんなで行くとして、誰の胸ポケットに入るかってのは僕でいいよね」
「何言ってるんだ、沖田総司。お前なんかのポケットに入れておけるか!」
「もっともだ。こういうのはやはり言い出しっぺである俺が─────」
「あなたたちに任せておいては揉めた際に雪村君が怪我をする可能性があります。やはり俺が────」
「だーかーらー。既にオレの手のひらにいるんだからオレでいいじゃんか」

また新たな揉め事が出来てしまった。
個人だろうが全員だろうが、結局は千鶴独占権を得る為に皆が必死なのである。

そんな五人を一蹴するように、静かな声音が保健室に響いた。


「でしたら、ここは私とデート、でいかがでしょう」


いつの間に保健室に戻ってきたのか。
気付けば姿のなかった山南が戻ってきており、いつものようにその微笑みを携えていた。
そしてスタスタと平助に近づくと、ひょいと千鶴を自分の白衣の胸ポケットへと入れてしまう。

「ちょ、山南先生!」

思わず平助が声を出せば、山南はキラリと眼鏡を光らせながら言った。

「あなたたちは今から午後の授業があるでしょう? お忘れかもしれませんが、あと3分でチャイムが鳴ります。個人的にサボるのは干渉しませんが、全員で一斉にサボられると目立ちますし、土方先生に見つかれば煩いでしょうからね。ここは私が雪村君の面倒をみましょう。────雪村君、今から私と一緒に学園長室へ行きましょう」
「え?」
「大丈夫です、学園長には話を通してありますから。今から一緒にお茶でも飲もうとしていたところですのであなたも一緒に午後のティータイムを楽しみましょう」

有無を言わさず。
山南はそのまま笑顔で保健室を後にした。
残された五人は、皆大きく肩を落としたのであった。


(((((はぁ………………)))))



◇◇◇



────山南が千鶴を連れて保健室を後にした頃、職員室では。

「おい、原田。このプリ────ぶぇっくしょん!」
「何だ、土方さん。風邪でも引いたのか?」
「いや、そんなことはねぇと思うんだが」
「じゃああれだ。誰かが土方さんの噂でもしてるんじゃねぇのか?」
「だとしたら、どうせ誰かが俺の悪口でも言ってんだろうよ」
「ははは。えらく後ろ向きな発言だな」
「うるせぇよ。いいから黙ってこのプリントを受け取れ」
「何だよ、何でそんなにイラついてんだ? あ、もしかして千鶴が今日休んでるからか?」
「……何でそうなるんだよ」
「だってよ。土方さん、今朝、山南さんから千鶴が休みってのを聞いてからずっとそのまんまだぜ? 眉間の皺」
「別に……そういうんじゃねぇよ。ただ────」
「ただ?」
「ただ、山南さんからの言伝ってのが引っかかってな。なんかやな予感がすんだよ」
「何だよ、土方さん。そのやな予感って」
「いや、そりゃ俺のただの勘なんだが────」
「あ、もしかして山南さんに変な薬飲まされて、千鶴ちゃんがちっちゃくなっちまったとか、そんな感じか?」
「新八……お前、テレビの見過ぎだろ。いくら山南さんでも、んなもん持ってる訳ねぇって。なぁ、土方さん」
「……いや、案外そうだったりしてな」
「おいおい、あんたまで新八と同意見かよ!」

────という、話がされていたのは誰も知らないことである。

ちなみに、千鶴はこの一時間後には無事大きくなったらしく、放課後はいつものように皆で仲良く帰ったらしい。
何故、千鶴が小さくなったのか。
千鶴が踏んだものとは一体何だったのかは不明なままである。


「え!? そんな終わり方かよ! オレ、ほぼツッコミしかしてねーよ!」




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