祝!薄桜鬼遊戯録発売〜!!
…ということで、沖千小説ですが。(沖千のみですみません…ああ斎千…)
※沖田さんだけが小さく掌サイズになります。
※無茶な設定があります。
※時々…挿絵があります。怪しいスペースはオンマウスでv
こんな感じですが、甘いは甘いと思います。
完全に沖田さん→千鶴ですので。
大丈夫だと思われた方は、ちょっと長いですけどそのままどうぞv
『わがままを聞いて』
「どうして…こうなる」
「さあ、僕が聞きたいです」
新選組一番組組長、沖田総司の周りを今。土方、斎藤、平助、左之、新八の五人が取り巻いている。が、それは傍目にはわからないだろう。
何故なら…
「それにしてもすげえな…何でこんなに小さくなれるんだ?」
「おいおい。落とすなよ?新八。…総司、何か悪いもんでも拾い食いしたのか?」
「道に落ちてた饅頭とかさ」
掌に簡単に乗せることのできる大きさ。
そこいらの人形よりも小さいのではないだろうか。
時間が経つにつれて、驚きよりも感心の方が強くなってくる。
ひょいっと総司をつまみあげて、掌に乗せると新八がマジマジと小さい総司を見ていたが…
「…新八さん、顔大きいですよ。近づけないでください。左之さん、平助…僕を何だと思ってるの?」
いとも簡単につまみあげられて、物珍しげな視線をずっと浴びせられていては、総司も気分がよくないというもので。
「・・・・副長。これでは隊務は無理です。一番組にはこれから各組と行動して、その都度その組長の指揮下に入ってもらわなければ…」
「そうだな…それはまあいいが…おまえ、それ本当に心当たりないのか?」
「ないです。歩いていたらいきなり縮んで…こうなっていたんです」
一番組組長が、このような事態に陥っている、などと噂が立てば何を言われるかわかったものではない。
嘲笑されるのも我慢できないが、何か怪しい薬でも作っているのではないか、などと新選組をきな臭く思っている輩に知られては…後々面倒だ。
「総司、これから部屋を出るな。一般隊士にはくれぐれも見つからないようにしろよ」
「ええ〜そんな窮屈な生活無理です。」
「てめえは…今の現状をもっと痛感しろ!!!この馬鹿が!」
こんな時にまで、慌てず、自分たちよりも平然としている総司。
本当に何も知らないのだろうか。とつい疑心に満ちた目をぶつけてしまうが…(それくらい呑気に見える)
「副長。総司には言って聞かすよりも、見張りをつけた方がよいかと」
「…それはわかるが…見張りったってなあ…」
あまりこの事態を広めたくない。
かといってこの場にいる者は皆、自分の持ち回りがある。
総司に付きっきりなど不可能だ。
「あ、それなら僕千鶴ちゃんに見張って…「駄目だ」
間髪いれずに、土方に拒否されたことに総司は一度瞬きをして、その後すぐに不機嫌を露わにした。
「…他に人はいないんでしょう?じゃあ彼女でいいじゃないですか」
「千鶴は一応監視対象だろうが。監視対象に監視役が見張られるってことはおかしいだろうが」
「でもよ、事が事だし…総司の奴、見張ってないとどうせ勝手に千鶴の部屋にでも向かうんじゃねえか?」
渋る土方に、左之がまあまあ、と懐柔するように口を挟んだ。
そんな左之に新八や平助も続く。
「そうだよなあ。いきなりこんな総司見たら…千鶴ちゃん気を失うんじゃねえの?」
「そうだよ!キャーとか叫びでもしたらさ、その方が何事!?ってことになって大事だとオレは思うけど」
「そんなの、千鶴に最初から話しておきゃいいことだろうが」
それでも首を縦に振らない土方を無視して、皆の足元をすり抜けて総司が部屋を出て行こうとして…
斎藤に捕まった。
「ちょっと!斎藤君首根っこ掴むのやめてよ!!」
「・・・・・・・・副長、やはり一人にするのは危険です」
「・・・・・・・はあ、ったく情けねえな…これが一番組の組長のすることかよ…仕方ねえ、千鶴を呼んで来い」
「はっ」
斎藤は頷くと、総司を平助の方へと差し出した。
慌てて掌を添えた平助の手に総司がちょこんと乗っかる。
「・・・・・・ははっ!本当に小さいな!総司〜!!たくさん食べないからだぞ!」
「・・・平助、斬られたいの」
「じょ、冗談だよ冗談!その姿でも殺気は同じくらいなんだな…こ、怖・・・・」
呑気な組長を目にして。土方は止まらない頭痛をどうにかしたいとばかりに眉間を押さえた。
「という訳で…今日総司のやつを見ててくれるか?」
「そ、それははいっ!もちろんですけど…ほ、本当なんですか?沖田さんが小さいって…想像できないんですけど」
斎藤に連れて来られた千鶴はキョロキョロっと室内を見渡すも、総司の姿はどこにもない。
いきなりうろちょろしている姿を見れば千鶴が冷静に話を聞けないと、その姿を隠されていたのだけど。
ただ、声だけは聞こえる。どこかにいるのだろうけど…
「見りゃわかる。おい、平助もういいぞ」
「了解〜っと。…千鶴びっくりすんなよ〜?」
『いいから、早く開けてよ』
平助が取り出したのは…掌に乗る小さな包み。
風呂敷でやんやり包まれているようだが…確かに中に何かが動いている…
あ、あの中に沖田さんっ!!!???
想像よりもずっと小さそうで…千鶴がじっとそこ一点に注目すると…
ふぁさっとのけられた風呂敷の中から小さな小さな総司が本当に…
「・・・・・・・・・・す、すごい・・・ほ、本当に小さい・・・・」
「平助、千鶴ちゃんと交代。さっさとしてよ」
「…総司ってさ、小さくなっても態度はでかいままだな…ほいっ千鶴、よろしくな」
「は、はいっ!」
おずおずと、総司を掌に受け取ると、小さい総司がにこにこしながら千鶴にぶんぶん手を振っている。
「千鶴ちゃんよろしくね。じゃあ部屋に行こう〜」
「・・・・・・・・・・」
「・・・?どうした千鶴」
千鶴が無言で、小さく震えているのに気付いた斎藤が、千鶴を気遣って声をかけると…かえってきた答えは…
「か、かわいい〜〜!!!」
思わず、ドテっと皆がこけるような音が聞こえたのは気のせいだろうか。
「すごいっ!かわいいっ!!沖田さんお人形みたいですね!どうして服まで小さくなるんですか??不思議…あっご飯ってどうしたらいいんでしょう?
お米だって数粒ですよね、きっと…わあっ何して遊びましょうか」
「い、いや・・・千鶴待て。遊ぶのではなく、見張りを・・・」
斎藤がどうにか訂正しようとしたのだが。
「まあ、見張りって言ってもな。遊ぶでいいんじゃねえか?どうせ…仕事なんてできないだろ?その体じゃあな」
「だな。よかったな総司。いつもみたいに悪さしねえで、今日は子供みたいに遊んでもらえよ」
新八と左之がにやにや笑いながらからかうように、人差し指一本でで軽く総司の頭をくりくりっとしたのだけど。
それが思いのほか総司には痛かったらしい。
「痛っ痛い。・・・馬鹿力でいじくるの止めてくれます?・・・?」
「大丈夫ですか?沖田さん」
同じく人差し指で、先ほどくしゃくしゃになった頭をゆっくりゆっくり、力を入れないように撫でる千鶴。
いつもより大きく綺麗に見える瞳がじっと自分に向けられて、その視線の威力たるや…
「…大丈夫。」
「そうですか。それじゃ・・・今日一日私がお世話させていただきます」
「一日だけ?元通りになるまでじゃないの?」
「えっ・・・?え〜とじゃあ元に戻るまで」
ちらっと土方に目を向ければ、それで構わない。と言ったようにこくんと頷いたのが目に入って。
土方さんがそのおつもりなら、断る理由などない、と千鶴もにっこり微笑んで頷いたのだった。
ちなみにその様子を見て、からかって憐れんでいた者も少し羨む気持ちもあったりなかったり。
「沖田さん、いつもお暇な時何しているんですか?」
どうやって時間を過ごそうかな?と千鶴が声をかければ。至ってしれっと…
「昼寝か、千鶴ちゃんからかうか、近所の子と遊ぶか、土方さん困らすか、千鶴ちゃんからかうか…」
「…私、二回も入ってましたよ」
「うん。最近はそれが一番多いから」
悪気のない笑顔が…いつもなら溜息ついてしまうけれど、今日は小さいせいか可愛らしい、としか思えない。
「じゃあ、今日はどうしましょうか」
「千鶴ちゃんからかうのでいいよ」
「・・・それはなしです」
その姿でどうやってからかうと言うのだろう。
沖田さんは本当に小さくなっても変わらないんだな…と違う意味で感心していると…
「じゃあ、昼寝」
「・・・お昼寝?でも沖田さん用の布団になるようなものとかないですし…何か掛けるようなもの…」
「別にいいよ、そんなこと…でもちょっと寒いから千鶴ちゃん、ここに入れて」
「ここって・・・・・む、無理です。無理ですっ!!」
(総司さんがどこを指したのかは想像してください。)
「ケチだね…」
「そういう問題ではないです。本でも読みますか?沖田さん普段読む時間ないでしょう?」
「本?それなら僕の部屋に笑えるぴったりなのがあるよ。千鶴ちゃん僕に読んでくれる?」
「はい、いいですよ。取りに行きましょうか?」
「うん。豊玉発句集っていうんだけど・・」
「やっぱりいいです」
何をするかまとまらないまま、こんなやりとりが続いて。
それでもいつも一人でいる時間を、ずっと誰かとともに過ごすということが、千鶴にはとても嬉しかった。
「千鶴〜晩飯…って…」
「ん?どうした?二人ともいるんだろ?」
食事当番の平助と左之が千鶴の部屋を覗くとそこには…
千鶴の部屋にしてはちょこちょこ物が散らばっていて。
遊び疲れたのだろうか。千鶴が畳で布団も敷かずに横になっていたのだけど。
その千鶴の手。
両手を丸めて畳につけて、自分の掌を布団にするように、大事そうに寝かせているのは総司だった。
「・・・・何か、いいよなあ・・・」
「俺らには逆立ちしたって出来ねえからな。さて、どうやって起こすか…起こしたらびっくりして総司のやつ握りしめるかもしれねえぞ」
「じゃ、先に総司を退かすか」
平助が手を伸ばした途端。それを嫌がるように総司が動き出して…
ちゃっかり千鶴の頬にぴたっとくっついた。
「総司…何だおまえ狸寝入りか?」
「違います。人の気配に聡いから…起きちゃうんですよ」
「あんまりベタベタくっつくなよ!飯だぞ、飯!」
「でも千鶴ちゃんが、私から離れないでくださいねっていうから…僕は仕方なくくっついているんだけど?千鶴ちゃん、食事だって」
・・・・千鶴の見張りに賛成しなければよかった、と左之と平助、二人は同じことを思っていたのだった。
晩御飯。
広間で食事は難しいかと思われたが、幹部しかいないのでまあ、いいだろう、と土方の言葉もあって。
けれど総司の目の前には…
「普通に盛ってるものを、この体でどうやって食べろっていうのかな」
「文句ばっか言ってんじゃねえ。てめえで食え。それくらい出来るだろ。・・千鶴、手伝わなくていい」
「で、でも…」
手伝おうとした千鶴に、そんなことするなら自分の飯をしっかり食え、と促す土方。
それでも横にいる総司が四苦八苦しているのを見ると放っておけない。
今の総司にとっては、刀よりも大きな箸。せめて楊枝でも、と千鶴がこそっと渡すと、総司はそれを手にとって。
「あ、これなら何とかなるかな・・いい子だね千鶴ちゃん」
よしよし、とその小さな手で、千鶴の指先を撫で撫ですると、よっと芋の煮物に楊枝を刺した。
それを持ち上げようとした時。
「総司〜ほれほれ、飯。これなら食えるだろ?」
「新八さん…指に乗っけられても…それにそんなにたくさん入らないですよ」
「何だよ遠慮すんなって!ほら!うまいぞ!たくさん食え!」
「本気でいりませんから」
総司は顔をさっとそらすと、漸く芋の煮物を持ち上げて…食べるのかと思いきや。
「千鶴ちゃん、はい、あ〜ん」
「・・・・・・・え?わ、私?」
「うん。食事手伝ってあげるよ、はい、あ〜ん」
「でも沖田さんも召し上がらないと…」
先ほどから見ていても、ちっとも食べられていないのにと千鶴が心配そうに顔を曇らせる。
「平気。昼間千鶴ちゃんがくれたお菓子でお腹いっぱい。餡子食べ過ぎたくらいだし」
「沖田さん。お菓子ばかり食べるのは駄目なんですよ」
「でも…これは一口分が大きすぎて、とても食べる気しないよ」
「それなら・・・・・はい、これくらいなら平気ですか?少しずつ食べましょうね」
「その前に僕のを食べてよ。はい」
「・・・・え、ええと・・・」
必死に差し出す体の総司の厚意を無にはしたくないが、やけに周囲の視線が集まっていて…とてもじゃないけど、無理だと思う。
「昼間は…お菓子の食べさせあいっこしたのに。遠慮しなくていいよ」
食べさせあいっこ!!そんなことをしていたとは…やはり千鶴に任すのは間違っていただろうか。
広間にいる全員が、そんなことを思っていた。
「遠慮じゃなくて…」
「千鶴、俺は手伝わなくていい、と言ったな?総司に構うな。キリがねえ」
ビシっと青筋を浮かべながら、土方が低い声を広間に静かに響かせて。
「総司、おまえがそんな態度では千鶴は自分の食事もままならないだろう。黙って…切り分けてもらったものを食べろ」
張りつめた空気をよりピンと張らせるように、斎藤も土方に賛同して総司に厳しい視線を向けて。
せっかくの飯が食べ辛いったらねえよ…と心の中で愚痴る人もしかり。
そんな空気を壊してくれたのはまさかまさかの…
「おや、沖田君。その身なりは…」
山南さんが広間に入って来る。
何やら昨夜からこの時分まで部屋に籠ってしていたようだが…総司を見て、ほうっと含み笑いをする・・・・・
ああ、山南さんの薬か・・・
広間にいた全員が、納得して小さく溜息をついたのだった。
「う〜ん、この体とももう、お別れだね」
「・・・・・・・・・・・・」
「そう思うとちょっと残念な気がするんだけど」
「・・・・・・・・・・・・」
「聞いてる?千鶴ちゃん」
先ほどから正座して、放心してる千鶴の膝に総司はよいしょ、とよじ登ると、その足の上をとことこ歩いて。
俯く千鶴の視線の真下に来ると、顔を見上げた。
ぼうっとしていたのに、総司と目が合うと、途端に顔を逸らして。
「・・・そんなに嫌。あ、そう・・・」
「いい嫌とかじゃなくて…だって急に…いろいろ…信じられないし、違ってたら沖田さんどうなるかわからないし」
「うん。言ってることが支離滅裂だね」
千鶴がこうなるのも仕方がないことだった。
山南さん曰く、小さくなるこの薬。いろいろ研究していて偶然出来たものらしく。
偶々、薬を入れる容器がなく。
偶々、勝手場にあった湯呑を拝借して入れておいたらしいが…(夜中だったので誰のものかはわからなかったとか)
そしてそれを言うのを忘れていました。すみませんね・・ふふと笑顔を作る山南さん。
偶々がかなり怪しく、信憑性はないが。
『男性の体を形成する成分を収縮させて、その均衡を破り、最小限で形づくることができ…』
『山南さん、説明はいい…どうすりゃ治る?』
『ですから…男性の成分を増加させればよいのではないかと。沖田君が好意を抱く女性に協力してもらうしかないですね』
それを、どこか他人事のようにぼんやり聞いていた千鶴に、皆の視線が一斉に集まった。
・・・え?な、何??
『まあ、薬はそれほど強くはないです。口付け程度で大丈夫でしょう』
『く、口付け〜!?駄目だよ!無理無理!二人は別に恋人同士でも何でもないんだからさ!』
・・・平助君、沖田さんの好きな人知ってるんだ・・
すっごく慌ててるけど、どうしたんだろう?
『総司。おまえの尊敬する、敬愛されている方は局長だな』
『だな。よし、近藤さんが帰ってから頼むか』
『・・・・・あのね、斎藤君、左之さん。山南さんは女の子って言ってるでしょう。そもそも、好きの次元が違う話だし』
…私も、「あ、なるほど」と思ってしまった…
女の子じゃないと、駄目なんだよね。・・・・・誰だろ・・・・・
『間違った方とすれば、変な効果が出て戻れないかもしれませんよ』
『・・・山南さん、その薬、いつ効果がきれる?放っておいても戻るんだろう?』
『まあ、一週間くらいでしょうか』
『よし。総司。一週間そのままで過ごせ。許す』
『許す、じゃないですよ。これじゃあ何の役にも立たないでしょう』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・誰なんだろう・・・・・・
『じゃ、千鶴ちゃん。僕に口付けして』
『・・・・・・・・・・・・・・・・・はい?』
『うん、いい子だね。』
『い、今のは、はい。じゃなくて、はい?です!好きな女の子じゃないと駄目なんですよ!?沖田さんっそんな冗談言ってる場合じゃ…』
『ないよね。だから、君にして。って言ってるんだけど』
・・・・・・・・・冗談、じゃない・・・なら、それは、つまり、だから、きっと・・・・・・・・
そんなこんなで今に至る。
なかなか口付けしてくれない千鶴に、無理強いさせるな、と息巻く者も多く。
「違うよ、恥ずかしがってるからだよ、ね?千鶴ちゃん。」
その言葉に半ば放心ながら頷いてしまったが為に、今は部屋に戻されている。
「嫌じゃないんでしょう」
「・・・嫌、ではないです」
「じゃあ何の問題があるの」
「・・・・・・・・だって、私じゃなかったら・・・」
好きなどと、言われたことなどないのに。
間違った方とすれば戻れないかもしれない、と…そんなことも言っていたし。
それなら一週間、我慢した方がいいのでは。
そう考えるのが当然だろう。
「君以外に思いつく人なんていないから、大丈夫だよ」
「でも、本当は他にいるのに、自分でも気付かなかった恋心がどこかに…とかだったら…大変じゃないですか」
「だから、他には興味なんて一欠片も湧かないから。僕がこんなに自信たっぷりなのに、何を疑うの?」
・・・今までのからかわれぶりと、態度と言動を考えれば…疑いたくなります。などとは言えない。
「・・・今はのんびりしてるけど、いつ、何があるかわからないんだよ。近藤さんに何かあった時に、この姿じゃ何もできない」
「・・・・・・・」
「・・・それにこのままじゃ、君みたいな小娘一人、守れないし」
「・・・・・・・」
「守りたい人を、守る力が少しでもあるのに、それを放棄したままにしておくなんて嫌なんだ」
小さい体なのに、意思は大きくて強くて。
戻ることに少しの不安も見せない総司の言葉は、まるでそれだけ「君が好きだよ」と言われているようだった。
ぎゅっと握っていた拳の力を緩めて。
何と言っていいかわからず、黙ってその手をゆっくり広げると、嬉しそうにそれに総司が乗った。
「・・・・わ、私からは出来ません・・・」
「え〜何で」
「小さくて、どこに当たるかわからないし」
「・・・・・・・・じゃあ、僕からするよ、いい?」
頷く代わりに総司を乗せる掌をゆっくり、揺らさないように高さをあげていく。
緊張で、思わず震えそうな手をごまかすように、ぎゅっと目を瞑って口を横に引き締めれば、くすっと笑う小さな吐息を感じた。
そっと何かが触れる感覚があって。
でも手にかかる重さは変わらない。元からあまり感じなかったけど…
心臓がドキドキうるさくて、その心音がうるさいだけで、総司の声は変わらず聞こえない。
・・・・・・・・・・・もう、いいのかな?
目を開けて、まだ目の前にいたら恥ずかし過ぎる、とそ〜っとそ〜っと目を開けて。
徐々に開ける視界。
だけど、総司がいない――
・・・・・・・・・・・沖田さん?・・・まだ、戻っていない?・・でもどこにも…
視線を目の前にぐるっと彷わせて、立ち上がろうとした瞬間、ふわっと総司のにおいに包まれた。
ぎゅうっと抱きしめられて、そのまま、またぺたんと、畳に座らされた。
自分を抱きしめる腕は、いつもと同じ。
すりよせる顔も、いつもと同じ。
背中に感じる温かさも、いつもと同じ。
・・・・・いつもと同じって・・・いつもされていたんだ、こんなこと…
当たり前のように思っていたけれど、今更考えればすごいことで。
急に恥ずかしくなって顔が熱くなる。
「・・沖田さん、戻れたんですね・・よかったです」
「ありがとう。やっぱりこっちの方がいい」
一層ぎゅうっと抱きしめる腕に力を込めて。
体ごと、総司に預けて。
戻れたのに、違うのは・・・違うことは手が拒まないことだろうか。
いつもからかわないでくださいっと逃げていた足には、力が入らない。
いつも、総司を振りきろうとした腕は、総司の腕に抱きしめられたまま、抵抗さえ見せない。
からかいじゃないから。
それがわかってしまったから。
時が止まったように、ずっとそのまま、抱きしめられて。
ドキドキしてどうしようもなかった心臓が、トクントクンと、僅かに高揚しつつを保って、ここがいい、と告げているようだった。
「ねえ、千鶴ちゃん」
「は、はいっ」
不意に語りかけられた言葉に、肩を揺らせば、耳の傍に温かな気配。
後ろから、抱きしめらたまま、頬に落とされた優しい口付けに、かっと頬が染まる。
その頬を嬉しそうに、愛でるように、千鶴を抱きしめることで不自由な手の代わりに、総司は自身の口唇でゆっくり添わして、撫でて。
「僕の姿は元には戻ったけど、他は戻れないよ」
「え・・・?」
総司の言葉に、僅かな戸惑いを滲ませる千鶴。
好きだと、一度伝えてしまえば。
冗談でもなく、戯れでもないことを証明してしまった今は…
こんなにも千鶴を望んでいたのか、と自分でも呆れるほどに気持ちが向いて。
僕のわがまま、聞いて。と、口だけを動かして、心の中で呟く。
千鶴の赤く染まった耳と頬に、淡雪のように優しく、けれど熱を与える言葉と口付けが届けられた。
「戻るなんて、嫌だ。変わらないなんて、嫌だよ。僕は、君と…こうしていたい――」
な、長くてすみません<m(__)m>
遊戯録。ミニゲーム楽しそうです。
そんな賑やかな話のような…ものを目指していたんですが。
もう沖千にしよう、と決めた時点で甘くなってしまいました。
ワンパターン…にどうしてもなってしまいます。すみません。
設定とか、もういろいろめちゃめちゃですみません。
でも書いてて楽しかったです!
私にはそれが書くことに絶対必要なことなのでv
絵も…雰囲気と違っていたらすみません。
最初に絵を描いて、後から小説つけたので(汗)
ここまで読んで頂きありがとうございました!