発売まであと6日!!



ユリルルSS



『いつだって君のこと』




「あれ?」

午前の授業が終わって、ようやくお昼!と足取り軽く食堂へ向かう時、ふと後ろから疑問のような声があがる。
振り向けば、細く開かれていない目でも何か驚いているようなマシューの顔。

「こんにちは、マシュー。どうしたの?」
「あ、こんにちは。・・突然なんだけど、その杖見せてもらってもいいかな?」
「?どうぞ!私のお気に入りの杖なの!」

ルルがすぐにはい、と手渡せば、それをじっと見たマシューが何やら小さく笑って…

「何かおかしいところでもあるの?」
「え?いや、違うんだ、実は・・・・」

その言葉にルルの頬は赤く染まって、そわそわ落ち着かない。
ルルの様子にも小さく笑った後、マシューの視界の端にユリウスが映った。
何やらじっと立ってまた何かを考えているようだ。

最近のルームメイトの日々の様子を思い出し、
マシューは気を利かせてルルにユリウスがいることを教えると、その場を後にすることにした。

「ユリウス!一緒にお昼食べ…どうしたの?」

いつもなら、ぱっと顔を笑顔にして、話しかけてくれるユリウスが、今日は何やらすごく困ったような顔をして悩んでいるようだった。

「うん、何でもないんだ。いや何でもないことはなくって、すごく気持ちが悪いっていうか・・・」
「気持ち悪いの?大変!今日はもう部屋に戻って休んだ方がいいんじゃない?」

熱でもあるのだろうか?と、柔らかい前髪に指を插し入れて、おでこに手を触れると…

「あっ!やっぱり熱があるんだわ!顔も赤くなったし!」
「違うよ、それは今君がすごく近くにいるからドキドキして…うん、だって急にこんなに近くに顔が…」

言われてみて、ユリウスの端正で整った顔が間近にあることを自覚して、ルルも同じように赤くなる。
その様子を見たユリウスは…何故か困った顔。

「・・・やっぱり、好きな子が近くにいたら、ドキドキするし、触れたくなるし、赤くなるし、意味がわからなくなるけど…
 それって好きな人にだけだと思うんだ」
「うん、私もそう思うわ」
「でも、さっき君はマシューと話してて赤くなってた」
「・・・・え、さっき?・・・・・あ!」

ルルが理由を話す前に、ユリウスがもっと困った顔で、息つく暇もない程に喋り出す。

「それってどういうことだろう?って思って…だって、俺は君にしかこんな風にならないけど。
 君はいつも俺に見せるような可愛い表情になってて。遠目から見てもすごく可愛いかったから、いつもなら幸せになるのに何でだろう?
 すごく胸の中が落ち着かなくて、ざわついて、意味がわからないくらい気持ち悪くて・・・」
「ユ、ユリウス!落ち着いて。それは誤解でね・・・」
「誤解?」

うん、と頷いて。
こんなこと自分で聞くのはどうかと思うけど、でも、ユリウスをこのままにしておくのは…

「あ、あのね?ユリウス。私の杖みたいなロゴの入ったマグカップ。使ってるの?」
「あ、どうして知ってるの?
 そう!この間街に出かけた時に見つけて、あっ!ルルのに似てる!って思ったらもうそのまま買ってたんだ」

ちっとも動揺せずに、こちらが恥ずかしくなるようなことを平気で笑顔で話しだすユリウスに、ルルも思わず笑って。

「あのね、そのことをさっきマシューに聞いて…赤くなってたの。そんなの知らなかったから…それに…」

ルルのほっぺの温度は急上昇。
聞いていても恥ずかしかったのに、本人に聞き返すのは何とも言い難いけど…

「ユリウス、マグカップ見てぼうっとしてることが多いから心配してたんだって。でも原因がわかって安心したって・・マシューが・・」
「ああ、だって、ずっと傍にいたいけど寮じゃ無理だし・・・マグカップの杖の絵見てたら余計にルルに会いたくなって・・・
 それで、早く明日にならないかなあって考えること増えたんだ・・ううん違うかな、うん、ずっといつも君のこと考えてるんだ、そうだ、そうだと思う!」

はじけるような笑顔を向けられて、ルルも同じように笑顔を返すが、
二人の間の熱々ぶりに比例するように、周囲の目がこちらに向いている。

「・・・そっか、じゃあ俺のことを考えて赤くなったんだね。よかった・・・・あれ?」
「?今度は何?」
「・・・いや、何だか胸の気持ち悪いのなくなったから・・・何でだろう?これもルルのことが好きだからなったのかな?」

ためらいもなく、好きだと告げてくれるユリウスに、嬉しさいっぱい。恥ずかしさ、もっといっぱい…

「ユリウス・・ご、ご飯食べよう!ね!」
「あ、うん。・・・ルル、手、繋いでいい?」
「・・・・・・・・・・うんっ」


それくらいなら、と幸せそうに手を繋ぐ二人。
この後ユリウスが、何かと暴走してまた困らせることにきっとなるけれど、それもまた幸せの証――







END









『このマグカップだよ』
『本当!似てるわね!私もユリウスの媒介のカップが欲しいな』
『うん、俺も持って欲しいな』