Everything ties





序章2




平日の放課後。
部活動にいそしむ生徒たちの声が当然のように響く中。
全く関係ないことで白熱しあう三人がいる。
その三人とは当然――沖田、斎藤、平助である。

「当然僕の隣で…僕の隣って誰だったかな?千鶴ちゃんと交代してもらわなきゃね」
「オレだろっ!?嫌みか!…それなら総司が交代しろ、交代!」
「いや、そもそも千鶴は俺のクラスで引き取る」

そろいもそろって譲らずに、お互いを牽制しあっているのは…バスの座席である。
ちなみにまだ、千鶴が一緒に修学旅行に行くことは決まっていないのに、先走ってウキウキしている様で…

「平助は家だって隣で、これ以上何を望むのさ。言えるものなら言ってみなよ」
「(顔が笑ってねえ!こ、怖っ…いやいや…)そ、そういうのは関係ないだろ?オレだって出来るもんなら傍にいたいし…」
「俺のクラスで引き取る、と言っているだろう」

三人とも、自分たちが今どこで話しているのか、何をしに来ようとしていたのか、すっかり頭から抜け落ちたようで。
それを思い出させる誰かの怒鳴り声が、不意に乱暴に開けられたドアと共に耳に嫌でも届いた。

「てめえら!うるせえんだよ!今職員会議中なのわかんねえのか!」
「嫌だな、土方さん。わかってるから来たんですよ。大事な用事があって」
「わかってんなら職員室の前でギャーギャー騒ぐな…で?用事って何だよ」

土方が総司のことを信じて、その大事らしい用件を聞こうと思ったのは、やはりそのメンバーの中に斎藤がいたからに尽きるだろう。

「ここでは何ですから、中入れてもらえます?」
「・・・・・何だ、みんなに聞かすようなことなのか?」

斎藤がいるとは言え、何か企んでんじゃないだろうな…
疑わし気に視線を流した後、土方はくいっと手で中に入れ、と示した。
…すぐに後悔することになった。


「千鶴を一緒にだあ!?馬鹿言ってんじゃねえよ。あいつは来年だろうが。そんなことで特別扱いなんざ出来ねえ」

まあ、こう言うだろうな、と思われたことをそのまま突きつける土方に、総司と斎藤はいたって動揺することなくその言葉を受けた。
予想の範疇内だ。反対されるのはわかっていた。
でも、他を味方につければいいだけだ…

「でも考えてみてください。雪村千鶴さんは1年で一人だけ女の子で、未だに兄の薫くんとくらいしか接点がありません」

他の先生方の手前、そして提案を押し通す為に、普段らしからない丁寧な言葉遣いの総司に、斎藤と平助は驚いたように視線を寄せた。
それは他の先生方も同じようで。
何を馬鹿な…といった感じから、ちゃんと聞こうとする態度になってくれている。
普段馬鹿をしておくと、こういった点で得なのかもしれない。

「それがどうした。だからと言って連れて行く理由にはならねえよ。雪村自身の新しい関係を築く機会を減らすことはない」

大体、てめえらがいつでもかつでも構うから、そういう事態になっているんじゃねえか…と呆れたように溜息を一つ。
却下だ却下。そう言い放つ土方に、ずっと黙っていた平助が口を挟んだ。

「でもさ、千鶴は俺たちと一緒に行きたいって言ってんだよ!新しい関係って言うけどさ…オレらがいない状態で、薫が千鶴から目を離す訳ないじゃん!」
「ああ…そりゃそうかもなあ…あいつ千鶴ちゃんにツンケンしながらべったりだもんなあ」

新八先生が食いついてきました。いい調子です。
追撃を重ねて、先生たちを説き伏せましょう。

「それに、彼女に執着する輩の数は大勢います。誰かとは言いませんが。特にひどいのが、嫁嫁と言い寄るのを数えきれないほど目撃されている者かと。
 そんな中に放置して行くのはどうかと…」
「ああ、確かにお前らがいつも千鶴といるから・・・今まで変な問題は起きてねえな。ま、別の問題はあるかもだけどよ」

何だかんだ言って千鶴と一緒に行きたい、それが一番なのであろう必死な斎藤に、小さく笑いながら左之先生も同調を示してきました。
止めの一撃をお願いします。

「それに…これを話すのはどうかと思うんですけど…」
「何だよ」

明らかに悲しそうに顔を歪めるわざとらしい総司の表情に、土方は騙されるか!と一層睨みをきかせた。

「千鶴ちゃん、来年のこととか不安に思って…島原女子高校に編入しようか悩んでいるんですよ」
「・・・・・・それは・・」

本当か?と土方が問いかける前に変なものが釣れました。

「それは本当か?総司。何故…」
「オレっそんなの聞いてない!そりゃ確かに誘われてはいたみたいだけどさ、千鶴にそんな気なかったよな?楽しいって言ってたのに…」

総司の狂言ですが、素直な二人は見事に騙されて。
本当にそうだと思いこみ、落ち込む二人の態度は…頑なな土方の心にも少しだけ響いたようだった。
けれど、それ以上に響いた人がいました。

「雪村君がそんなことをっ・・・彼女は・・・薄桜学園にただ一人入ってくれた女子生徒だ。特別扱いはとは思うところもあるが…」
「それでも、彼女が楽しく学園生活を過ごせるように、我々もできるだけ助力してあげようではないかっ!!」

人情にあふれる近藤校長の涙ながらの言葉に、職員室から拍手がわき上がった。

やっぱり、近藤さんは誰かさんと違って優しいなあ・・・

総司はほくほくと嬉しそうに顔を緩めて、千鶴が一緒に行けることが決まったことに、斎藤と平助もほっと目を合わしたのだった。

「…ったく、相変わらず甘えな、近藤さんは…」
「トシ、納得してくれるか?」
「あんたが決めたことなら、文句はねえよ」

ふう、と諦めたように苦笑いする土方に、まあまあ土方君、と楽しそうな声がかけられた。

「いいじゃないですか。雪村君と、2年メンバーがいなくなれば、煩わしさがなくなりますよ。(雪村君がそれで楽しいなら…)」
「おい、山南さん、本音の方が声に出てるぞ」
「ああ、そうでしたか。それはうっかりしました」

ふふ、と笑う山南先生はそれはそれは怖かったようで、土方さんも顔をひきつらせていたとか。
そんな雰囲気を一変させたのが、左之先生の一言。

「まあ、しかしあれだな。千鶴を連れていくなら…どのクラスで受け持つかってことだよな?」
「ああ、考えなきゃならねえな」
「「じゃあ俺のクラスで」」

左之先生と新八先生が二人揃って立候補。
勢い手をあげた二人は牽制するように、睨みあいます。

「千鶴ちゃんを左之のところになんて預けたら問題だぜ!?子供でも出来たらどうすんだよ!」
「出来るかよ…千鶴は女一人だぞ?新八は何かと小さい困ったことなんかに、気付いてあげれそうにないだろ」
「んなことはない」
「ある」
「いや、ない!」
「ある「何言ってんだ。千鶴は特別扱いになるんだぞ?なら、俺が適任だろ」

ばさっと切り捨てる土方さんに、二人は納得しません。
先生同士の争いが過熱する中(土方さん結局嬉しそう…)、生徒たちも再び争いを始めていました。

「だから、千鶴ちゃんは僕とずっと一緒に行動するんだってば」
「何言ってんだよ!オレの方が千鶴が何を見たいとかわかるし!」
「おまえたちに付き合っていては千鶴はどこも見れない。俺が傍にいる」

こうして、千鶴の知らぬところで修学旅行に行くことが決まりました。






続く






割とあっさり行くことが決まりました。
どうしようか悩みましたが、沖田さんと平助君が同じクラスです。
先生達のクラスの受け持ちとかも適当に決めてしまったので、後からあわあわしそうです…
まだ出てきていない人達も…そのうち出します。
序章なので、オールな感じが強いですが…
そのうちちゃんとCPらしくなっていくと思うので。

気長に読んでやってください。