Everything ties




※SSL設定です。
 沖千、斎千、その他な感じです。
 お目当てキャラとEDを迎えられますように…



序章




「ねえ、斎藤君」

いつもとは違い、至って真面目な声色。
真剣な眼差しを斎藤に向けた総司には、何かを思慮するように。

「どうした」

こんな表情は珍しい。
ちゃらんぽらんな奴だとは思ってはいたが、一応悩みはあるようだ。
それならば、聞くだけは…

「このまま遅刻続けてたらさ、留年になったりする?」
「・・・・・・・・・は?」
「だから、留年」

心を入れ替えたのだろうか。
遅刻を改めようとしているならばそれに越したことはない。

「留年、までは行かずとも、内申は悪くなるだろうな」
「なあんだ・・・留年は無理か…でも休むのは嫌なんだよね、顔見れないのは嫌だし、一緒に登下校したいし」

一気に張りつめていた空気が緩んでいく。
大方、千鶴と同学年になりたい、とそんなことだったのだろう…
本気で聞こうとするのではなかった、とすでに斎藤は委員会に行く準備を始めた。

「う〜ん、やっぱり無理、か…となると千鶴ちゃんをどうにかするしかないよね」
「何の話をしている?」

無視して教室を出ようとしたけど、思いもかけず登場した名前。
どうにかするなどと穏やかでない発言をしている総司を斎藤が見逃す筈もなく。
その時、教室のドアをバン!と勢いよく開けて、開けすぎて戻って来たドアが体にぶつかり蹉きそうになりながら
教室の中に飛び込んで来たのは…

「…平助、ドアはもっと静かに開けろ」
「えっ?ああごめんごめんっ!総司が呼んでたの忘れててさ…」
「遅いよ平助。まあ、斎藤君もいるから丁度いいや。話っていうのはさ…」

いつの間にか自分まで輪に入れられた斎藤は、迷惑そうな色を浮かべながら立ち止まる。
にっこり笑顔で、総司が告げた言葉は――


「ったく、いきなり泊まりに来るとかさ〜オレにだって都合が…」
「なかったじゃない」
「・・・・・・・・」

『今日平助の家に斎藤君と泊まりに行くよ〜』

放課後、そんなことを突然言われて、はい、そうですか。ともちろん言える筈もなく。
いきなりそんなことを言われても困るっ!と騒ぐもの。
俺にはそんなつもりはない。と切り捨てる者。
それでも。千鶴ちゃんのことなんだけど。の一言で二人は黙って頷いてしまったという理由で、今、三人は平助の部屋にいる。

「それで、千鶴の話とは?」
「そうだよ、何かあったのか?」
「ああ、これ」

総司が取り出したのは先日配られた、修学旅行のしおり。

「何だ?それがどうかしたのか?」

首を傾げる平助に、総司は呆れたように溜息を吐く。
斎藤はじっと黙っている辺り、総司の言いたいことを薄々感じているのかも知れない。

「何だ、じゃないよ。修学旅行。行くのはもちろん2年だけ」
「当たり前じゃん」
「ということは、千鶴ちゃんは行かないんだよ。」
「そうなるよな」
「あの生徒会長を筆頭に千鶴ちゃんを狙う輩は多いでしょう?学校にただ一人いる女の子の千鶴ちゃんを放って…行ける?」

その総司の言葉に、なるほど、と頷く斎藤と、目をパチパチさせてようやく言いたいことを納得し、焦ったように慌てだす平助。
そうだ、自分たちだけではない。土方や左之、新八といった、普段千鶴を目にかける先生たちまで引率でいないのだから・・・

「で、でもさ・・だからって修学旅行を休んで学校行くわけにもいかないんじゃ…」
「・・・平助、それでは解決にはならない。そうだろう?総司」
「さすが斎藤君、僕らが今年休んでも…千鶴ちゃんは来年…薫だけが傍にいる状態で狼の群れに紛れて旅行になってしまうから・・・」

こんな時、学年の違いがもどかしい。
総司が昼間、留年がどうとか言っていたのはこういうことだったのか、と斎藤は頭の片隅で考えていた。

「じゃあ、どうするんだよ。何か考えあんの?」
「うん。でも僕だけだとちょっと…うまくいきそうにないから、ここは真面目な斎藤君と、一応平助にも協力してもらおうかなと思って」
「・・・聞くだけ聞こう」

総司の話は彼にしてはいたって真面目なものであった。
これならば…計画に賛同するのになんら躊躇する気はない。
二人は二つ返事で頷いたのだった。

「じゃあさ、取り敢えず…」

ピピピ…と携帯をいじりだす総司。
メールか何かを打ったのか、携帯をパタンと閉じると徐に窓のカーテンを開けた。

「何してんだ?総司」
「うん?千鶴ちゃんに…窓の外を見てってメールしたんだよ」
「・・・・・・・」

はあっ!?と顔をしかめる平助とは対に、何故か斎藤は黙って窓の方に近づいている。
総司に続いて、外が見えやすい位置についてスタンバイ。

「千鶴はこの時間、もう風呂だって入ってるし…そんなの見られたくないんじゃ…」

ブツブツ文句言いつつ、窓に近寄る平助に二人から厳しい眼差し。

「平助、それ自慢?言っておくけど家が隣で、ものすごく羨ましい状況だけど…僕は覆して見せるからね」
「自慢じゃねえって!何言ってるんだよ!」
「だが、羨ましい」
「・・・・・一君、そんな風に言われても、さ…」

そんなこんなで話していると、灯っている向かいの窓のカーテンがシャっと開いて。
平助の言った通り、お風呂は済ませたのだろう千鶴が・・・かわいらしい部屋着を着て…こちらを見て目を丸くする。
嬉しそうに窓を開ける様子に、三人の顔が緩む。

「わあっどうしたんですか?今日は平助君の家に皆さんでお泊り?」
「うん、そう。千鶴ちゃんその部屋着かわいいね。それで寝るの?」
「あっ・・はい」

自分の格好を思い出して、少し恥ずかしそうに笑う千鶴。
何だか総司と斎藤にそれを見られたっていうのが…特権を取られたようで平助は面白くない。

「ところでさ、千鶴ちゃんに聞きたいことあるんだけど」
「?はい」
「修学旅行…今年僕らと一緒に行くのと。来年行くの、どっちがいい?」
「え・・・?」

三人の結論は千鶴を今年一緒に連れて行く。ということ。
けれど、千鶴にその意思がないならば…無理強いはよくない。
千鶴の意見も聞いてから。
という話に至っていたのだけど・・・
千鶴は意味がよくわからないのか、戸惑った表情を浮かべるも、三人がじっと言葉を待つのを見て、言われたことを考えた。

私は来年修学旅行で…皆さんとは一緒には行けられなくて…
でも、今の学年は薫くらいしかまともに話していないしな…(2年の警備が鉄壁の為)
一緒に行くなんて、無理な話だけど、でも…考えるのは楽しいな――

「そうですね、沖田さんや斎藤さん、平助君と一緒に行けるなら、その方が楽しいんだろうなって思います」

純粋に、素直に、言いながら微笑む千鶴を見て、三人は計画をそのまま進めることに決定した。






続く








序章なので、糖度も何もないですが…
もう丸わかりですけど、修学旅行で仲良くなろうよ〜的な話です。

後々分岐して行くようになれば…また甘くなっていくだろうと…

色々捏造な設定ありますが、そこは気にせずお願い致します<m(__)m>