相互記念SS



薄桜鬼オール『その役、頂きます!!』




「という訳で、これ以上の調査を進めるには何か考えなければ、と…」
「なるほどな。…山崎、おまえはどう思う?」
「――やはり、雪村君が適任かと。しかし彼女をまたこちらのことに巻き込むのは・・・」
「いや、俺も同じ意見だ。千鶴には…俺が話しておく」
「了解しました」

ある日、深夜に土方の部屋で行われた山崎の報告は、
幹部同士の争いの引き金の始まりだった――



「ちーづるちゃん、・・・・・千鶴ちゃん。千鶴ちゃん、千鶴ちゃ〜ん!」
「聞こえてます!聞こえてますので連呼しないでください!」

慌てて部屋から出て来た千鶴は、顔が真っ赤である。

「だって、君がいつまで経っても返事しないから・・・ところで」
「な、何でしょう?」

にっと弧を描くように唇を象る総司に、千鶴は悪い予感がして後退する。
後退する千鶴の腕を捕まえて、逃げるのは駄目〜と自分の許に引き寄せようとした時。

「千鶴、もう用事済んだのか?ちょうどいい時間だし茶でもしようぜ!」
「おっそりゃいいな!千鶴ちゃんの淹れた茶はうまいからなあ。頼めるか?」
「淹れて来てもらうには…この手が邪魔だよな、総司?」

三馬鹿の出現。
瞬く間に腕が離され、二人の距離が開けられる連携はいつもながら見事である。
そう、いつもこんなことをしているのです。

「…いつもいつも邪魔してくれますよね。人の恋路を邪魔する奴は、僕に斬られて何とやらってね」
「いや、そうじゃないだろ?斬るつもりかよ!そんなこと言うなら…おまえだって、俺らの恋路を邪魔する権利はないよなあ」
「そうだぞ、総司。千鶴ちゃんはみんな好きなんだからな?」
「そ、そうだなあ〜オレも…好きだし…」

午後の穏やかな一時は、千鶴に自分の想いを伝える機会。
少しずつ、いや、かなりもう大っぴらに皆が好き好き言っているのだけど、言いすぎてその「好き」には特別を感じないのかもしれない。
事実、千鶴は妹のように好いてくれているのだ、とありがたく勘違いしている。

「もうお茶の時間なんですね。皆さんの分お淹れしてきます」
「一人では大変だ。手伝おう」
「え、いいんですか?」

いきなり現れた斎藤に、千鶴以外の四人はびっくりすれど、千鶴は慣れたものなのかにこにこ微笑んで、じゃあお願いします、と答えている。

「…ねえ、斎藤君ってどこにいたの?いっつも突然現れるよね」
「俺も総司しかいないとばかりに思っていたんだが…」
「俺が茶の用意する時には、斎藤が手伝ってくれたことなんてねえぞ?贔屓が明から様だな」
「だよなあ…結局千鶴をかっさらっちゃうしさ」

何故だか、斎藤ならば邪魔せずにのんびり傍観する三人に、総司は顔を曇らせた。

「は?何言ってんの?僕は大人しく見てるつもりはないよ…千鶴ちゃ〜ん!!ち〜づ〜る〜ちゃ〜ん!!」

勝手場に向かいかけてた千鶴は慌てて駆け戻ってきた。
何だか斎藤の許から自分の方に来てくれたみたいで、その光景に総司は少し満足していた。

「…っはあ・・そ、そういえば、沖田さん用事があったんでしょうか?聞いていなくて…」
「うん、そうだよ。なのにさっさと行かないでくれる?」
「すみません…」
「だからと言って、あんな風に千鶴を呼ぶな。…見ろ。赤くなっている」

それが可愛いけど、という心の声は漏らさないように総司に苦言を呈したつもりだけど、斎藤の顔は緩んでいるのでわかりやすい。
斎藤に指摘されて、赤くなっている自分の顔を何となく恥ずかしく思った千鶴の顔はますます林檎のように。

「…千鶴はこういうところがいいんだよなあ。初々しくってよ」
「わかるっ!わかるぞ!左之。疲れている時、癒されるんだよなあ」
「オレは疲れていない時だって癒されてるぞ!千鶴と話すると、ほっとするっていうか、幸せだっていうか」
「…同感だな」

呼び戻したのは総司なのに、いつの間にか蚊帳の外にされて、千鶴を取り囲まれて…

「ああもうっ!!話が進まないってば!ちょっと黙っててよ。鬱陶しい。揃いも揃ってにやにやにやにや…千鶴ちゃんに同情するよ。えらいのに好かれて大変だね」

よしよし、僕が救い出してあげるよと頭を撫でようとすれば、おまえには言われたくない、と四人から鉄拳がその手に浴びせられた――

「あ、あの・・それで、沖田さんの用事って…」
「ああ、部屋でさ、何してたの?わざわざつっかえ棒までして誰も入らないようにしていたでしょう?」
「部屋でって…あの、着替えを…」
「着替え?でも、見た目変わっていないよね」

千鶴の返答に総司だけではなく、他の四人も首を傾げる。

「はい。潜入捜査の為の準備を…」
「――ああ、…でもおまえ何で知っているんだよ。あれは俺ら幹部だけしか知らないことだぞ?」

左之が訝しむのも無理はない。今朝がた、会議で決まったことだった。
さる小さな宿屋に長州の間者をかくまう節あり。
その間者は放っておくわけにはいかない、何とかそいつを見つけ出せと…
確かな証拠を得て踏み込む為に、その宿屋にしばらく誰かを客として潜入させるから、人出が少なくなるぞというお達しだったのだけど。

それに着替えとどんな関係が?

「あ、土方さんからお話があって。隊士さんの妻として一緒に潜入してほしいって」
「「「「「・・・・・・・・」」」」」
「それで衣装とかいろいろ…」
「ちょっと待て。何で千鶴なんだ?危険だろ?そんな仕事…」

たまらず左之が冷静に突っ込めば(他の人はいろんな意味で動揺中)あっさりと返答が。

「あ、私が医学を少しでもかじっているからだそうです」
「…確かに、だけどそれが関係あんのか?」
「?その宿に…薬売り夫婦として泊まるから…ですよね?」

薬売り??そんな話は聞いていない。
そこまで話が進んでいたのだろうか??

「それで、そのかくまっているのは娘さんみたいだから、私が近づいて油断させて…っていう…話ですよね?」

・・・そうだったのか。
朝の会議ではそこまで話が進んでいるようには見えなかったけど…

「千鶴にまた頼むことになるとはな…大丈夫か?」
「大丈夫です。私は…嬉しいくらいです。頑張ります」

千鶴と一緒に潜入となれば、それなら幹部隊士でなければ駄目だ。
何かあった時に、千鶴を傷つけるようなことにならないとも限らない。
なるほど。だから・・・

「…ところで、千鶴。誰と一緒に行けって言われてるんだよ」

左之の言葉に、皆がカッと目を見開いて反応した。
皆、そこが気になっているのである。

「あの、まだ聞いていないんです。…私もここにいらっしゃる方のどなたかだとばかり…」
「だよな!だよなあ!千鶴ちゃんを多少でも危険な目に合わせるってんなら、この俺が一緒じゃないとやばいだろ!?だけど、俺そんな話聞いてねえぞ!!」
「…新八と二人きりなんてさせられる筈ねえだろうが。ここはやっぱ俺だろ?土方さんのことだ。今夜にでも俺のところに話に来そうだな」
「二人とも無理!!無理だって!!酒呑み二人が何言ってんだよ!それに・・左之さんと二人なんて冗談じゃないし!!夫婦として潜入するなら…こ、ここはやっぱり年頃近くて…こう並んでもかわいいオレと千鶴が…」
「平助。話を聞いていたのか?薬売りの夫婦だ。おまえには…そんな知識を培っているように…
ここは、やはり俺が。もともと守るように常日頃千鶴を気にかけている。いざという時、動けるだろう」
「斎藤君には、決定的に社交性が足りないと思うけど。宿屋の主人、おかみさんとか、娘さんと話して和めさせられるの?こういう時は普段から子供と遊んでて、早く子供がほしいなって思ってるくらいの夫婦を演じられる僕がいいと思うんだけど」

お互い譲らないぞとばかりに、いつの間にか千鶴を中心に五人で取り囲むようになっている。
頭上で繰り広げられる舌戦は終わりそうになく。
お茶は、お茶はどうするんだろう?千鶴がそう思っていた時。

「雪村君との潜入は、もちろん俺がします」

不毛な戦いを聞いていて、頭が痛くなって仕方なく登場したのは山崎。

「・・・君が?千鶴ちゃんを守れるとは思わないけど・・・」
「沖田さん。考えてもみてください。これは監察の仕事です。乗り込むとかそういうことではなく、情報を引き出す仕事です。俺に任せてください、――雪村君」
「はいっ!」
「と、いうことで頼む。そ、その夫婦を演じるには…もう少しお互いのことを知っておくべきだと」
「あ、そうですね・・・」
「君の好きなものや、嫌いなもの。興味のあるものなど…教えてもらえるだろうか」
「はいっ!今からですか?」

・・・・・・・な、なんて羨ましい!!!!
そして悔しいが、反論できないという・・・・
だけど、でも、しかし!!!このまま指咥えて山崎に夫役を譲るのは嫌だ!断じて嫌だ!!(目的が変わってきています)
五人が共通の敵を認めて、これを倒すべく一致団結しようとした時――

「何言ってんだ。山崎、それは俺の役だろう?」
「・・・・・・・は?」「・・・・・・・え?」

突然現れた副長、土方歳三。いつもの鬼らしからぬ呑気な言い方。いや、それだけではなく…
その内容に皆が目を丸くして。

「ふ、副長自ら行かれるおつもりで!?そんなこと…」
「千鶴を巻き込むんだ。何かあったじゃ済まねえだろ?それに…薬売りって言ったじゃねえか」

俺以外の誰が務まるんだ、当然、俺だ。と言わんばかりに千鶴の傍に寄ると…

「と、いう訳だ。別におまえが何を好きか嫌いかなんて興味なんざねえが…まあ、聞いてやる。俺のも覚えておけ」
「わ、わかりまし・・・「ふざけないでくださいよ。何ですかその言い方。」

総司さんついに耐えきれなく、口を挟みました。

「知りもしたくないなら、しなくて結構です。僕は知りたくてたまらないので、僕がします」
「お、オレだって千鶴のこともっと知りたい!!オレなら喜んで引き受けるからオレに代わってくれよ!土方さん!」
「副長が…わざわざ!…屯所をこんなことで空けることもねえだろ?俺も引き受ける。千鶴の為なら何でもしてやりてえしな」
「ぐ、ぐおおっ!おまえら何でそんなにスラスラ言葉が出るんだ!…お、俺だって引き受けたいって気持ちは強いぜ!?千鶴ちゃんを守れるのは俺みたいな肉体美のある――」
「守るのは、俺だ。そこは譲れん。・・・いえ、千鶴の傍にいたい、ということではなく。その、夫婦を演じてみたい、ということではなく。あまつさえ、これでもっと仲良くなどではなく。この任務が適任なのは自分かと」
「こ、これは元々、俺の仕事の筈です。皆さんにはそれぞれの仕事がもうあてられている筈ですが…今回は譲る気はありません。俺の仕事です!決して雪村君がどうこう、というのでは…な、ないです」

一人増えてすごい口撃になりました。
く、こいつら…何て鬱陶しい…仮にも俺が、…誰にも役を渡したくないとか言える訳ねえだろうが!その辺りの意図を汲もうってやつはいねえのか!?

いる筈ないです。みんな必死です。

「とにかくだ。もう、薬売り夫婦としてということで準備は進んでる。今更ぎゃあぎゃあ言ったって遅いんだよ」
「薬学の知識だったら、俺にだってあります。ここは譲れません」
「何が知識ですか?あんないんちき薬で何をのたまっているんだか…」
「だよなあ、それに擦り傷切り傷に効き目があるってんなら、オレにだってわかるし。」
「まあ、こんな仕事してちゃ普通にな」
「・・・お、俺はよくわからないかもしんねえなあ・・・」
「石田散薬を売る薬売りなら、俺に、俺にやらせて頂けないかと…」

最後、一人だけ的外れなことを言ったのはもちろん斎藤さんです。

うわあ、一君…頭下げてるよ…
どんだけあの薬信じているんだよ、なあ?
…千鶴ちゃんの夫役したいっていうのもかなりあるとは思うけど
さすがの土方さんもちょっと困ってんな
…これは、俺の仕事です…

「斎藤。き、気持ちはありがたいが、こればかりは譲る訳にはいかねえんだよ」
「それって、薬売りのことですか?千鶴ちゃんの夫役のことですか?」
「・・・・・・どちらかというわけじゃねえよ。この任務全般だ」

うまく逃げたな。

誰一人納得しないまま、土方を睨みつける面々(一人は打ちひしがれています)。
何を言われても、これは決定事項だと構える土方。
後ろからそっと…おろおろしながら見守る千鶴。

「納得できません。千鶴ちゃんの夫に誰が一番ふさわしいか、皆で決めましょう。まあ僕だとは思いますけど」
「沖田さん、これは…雪村君の夫役、が主ではないんですが…」
「でも、みんなが揉めてんのはそこだろ?俺もそれでいいと思うがな」
「よっしゃあ!勝負なら負けねえ!」
「オレだって!!」
「・・・して、何で決める?」
「勝手にやる気になんなよ!てめえら!俺の言うことが聞けねえのか!!」

しかし土方の叫びは…むなしく屯所に響いただけだった。
かくして、どれだけ千鶴のことをよくわかっているのか、皆が勝負することになったのである。
その勝負方法は…?

「よし、じゃあ…自分だけしか知らない千鶴発表…で、いいんだな?」
「何だそれ、くだらねえな…」
「あ、土方さんは何も知らないんですよね。わかります。いいんですよ無理しないで」
「誰が知らねえと言った!!後で吠え面かくなよ!?」

土方さん勝負に乗ってしまいました。
だけど、ここで平常心でいられなくなったのは…もちろん千鶴で…

「ちょ、ちょっと待ってください!!!そんなの、私が嫌です」
「じゃあ…誰から??」

千鶴の叫びは…悲しいほど夫役に執着する七人には届かず。

「じゃあ、…オレから!!」

…平助か…いろいろ知っていそうではあるけど…?
皆が見守る中。

「千鶴は…熱いものを食べる時…ほら、焼き芋とか、蒸しまんじゅうとかな?必ず、頬に一度ぴたっと当てるんだ」
「・・・・そうなのか?千鶴」
「え、え〜と…い、言われてみれば…」

本人もそういえば、程度なことなのに、どうして覚えているんだろう…すごい…
千鶴が妙に感心する中、他の六人はそこを想像して…思わず頬を緩める。

「うん。可愛いね。今度温かいもの買ってきてあげるよ。見せてね」
「こりゃ平助いいところいったな」

平助は満足そうです。

「じゃあ、次は俺だな」
平助の有利を覆すべく、左之さん登場です。

「千鶴に寝癖がついてるの、見たことないだろ?毎朝、ちゃんと鏡で確認して、身なり整えてから部屋出てんだ。髪なんかものすごく丁寧に梳くんだぜ?」
「…左之、何でそんなこと知っているんだ」
「そりゃあ…俺と千鶴の秘密だな。な?千鶴」
「え!?」

わたわた慌てる千鶴に、意味ありげにしーっと指を口にあてる左之。
皆が思った。左之には絶対夫役をさせない、と…
(実際は…酔って間違えて朝方に千鶴の部屋に入っちゃったことがある、という…)

「じゃあ、次は…俺でお願いします。雪村君は…」

山崎は、大して千鶴と接する機会もない。
そう高をくくっていた幹部隊士は…

「皆さんの巡察の後などの隊士服を見て、小さな傷でも隠していないか、確認しています。そして傷がありそうな場合、様子を見てその通りならば、皆さんが気付かない程度に、食事に薬を混ぜたりしています」
 
この言葉に皆、不覚にも言葉が詰まってしまった。
千鶴の思いやりに…愛情に限りなし。深まる愛を実感したと同時に、そんなことに気付いていた山崎に焦燥感。
千鶴も驚いてじっと見ている。これは、やばい。

「…くっじゃあ、次は俺が言う。」
土方副長のご登場です。

「千鶴は…なんつうか、俺の言いたいことが…わかるんだよ」
「・・・・・・はい?」
「だから!俺が…何か言わなくても動いてくれるんだ。わかったか」
「わかったかって…そんなの、ねえ?」

総司が同意を求めれば、皆が頷く。
今のでは説得力も何もない。
土方は仕方ねえな、と呟きながら千鶴をじっと見る――

「…土方さん、お茶ですか?」

満足そうに頷いた後、もう一度、見る――

「…土方さん、寒いんですか?羽織るものでも…」

見たかおまえら、と心の中で自慢しつつ、もう一度、千鶴を見る――

「…土方さん、肩が凝ったんですか?じゃあ私が…「もういい。いいぞ、千鶴」
「何だよ!小姓って立場を利用してそうなったに過ぎないじゃんか!!」
「違う!今までの時間がものを言うんだ!利用したとかじゃねえ!」
「というか、いつも何させてんですか?もう小姓やめさせたらどうですか?」

騒ぎだす面々のさなか、斎藤がそっと、土方のように思いを込めて千鶴に視線を向けてみた。
斎藤の視線に気付いた千鶴は…にこっと笑って首を傾げるだけだったが…
それでも今の彼には十分らしく、皆が争う中ちゃっかり見つめあって喜んでいたのだった。

「よし!じゃあ次は俺な!!」
勢いよく飛び出した新八さんですが、皆さんすでにツッコミの構えを取っています。

「千鶴ちゃんは…見た目通り胸がち「じゃあ次僕です。左之さん。そのまま口押さえててくださいね」
「おう任せとけ」
「〜〜〜〜〜(もがもが!!)」

「あの、永倉さんは何を言おうとしたんでしょうか?」
千鶴が振り向くと、平助、土方、斎藤はわかっているような顔をしていたので聞いてみた。けれど答えは…

「さ、さあ…オレわかんねえな…」
「・・・まあ、気にすんな」
「俺は気にしない」
「?」

得られなかった。

「では僕の番。これは…本当は教えたくない。教えたくないけど、勝つためには仕方ないですね」
「勿体ぶんなよ、何だ?」
「…千鶴ちゃんの真価は太ももにあり。膝枕で昇天しますよ」
「「「「「「・・・・・・・・」」」」」」

「ねえ、千鶴ちゃん?ああでも、他の人にねだられてもしちゃダメだよ?僕だけの秘密だったのに…言っちゃってごめんね?」
「頼まれなくても、そ、そんなことしません!!恥ずかしい事言わないでください〜大体沖田さんがいつも、いつの間にか膝の上に来ているだけで…」
「でも、結局はそのまま寝かしてくれるよね…僕だけの特権かな?今日も後でお願いね」

総司!!何てお得なやつ!!!!
悔しいけど、これは真似できない。
してほしい。だけどそんなこと言えない!!こういう時、一般常識や理性が憎くなる。
皆が頭を抱え込むのを見て、満足そうにする総司と、困惑する千鶴がいた。

「さ、最後は俺だな」

総司さんの膝枕発言に動揺しつつ、最後は斎藤さんです。

「千鶴は…」
無表情で何を語るのか…

「そんなところで、何をしているのです?」

皆が斎藤の口元に集中した時、冷やかな声が背後からかかる。
この声は…

「ああ、山南さん…いや、今度の潜入役をこいつらがやりたいって駄々こねやがってよ…」
「…皆さん、そんな暇はないでしょう?今はどんな時期かわかっていますか?」

うっ…目が、怖い――

「それに、その件ならもう片付きました。女と親しくしている友人と思われる男が情報を提供してくれましたから」

え―――――

「ということで、よろしいでしょうか?この件はおしまいです。皆さん。持ち場に戻られてはいかがですか?」

千鶴の夫役。そして泊まり込み。
こんな素敵なことを目の前で奪われた幹部隊士たちの悲しみいかばかりか―――

取り敢えず、千鶴への執着度は以前にも増して増えたようだった。





「斎藤さん。少し、よろしいですか?」
「千鶴、どうかしたか?」
「えっと…斎藤さんは、何て言う筈だったのか気になって…」
「ああ、そうか。それなら…その…―――――」

耳元で小さく呟かれる声、それだけでも赤面しそうだけど、言われた言葉は――

「そっそれは…あの、皆さんに聞かれなくてよかったです」
「そうなのか?」
「はいっ!出来れば…言わないでください…お願いします」

真っ赤になって頭を下げる千鶴。
あの場では…夫役を引き受けたいが為に話そうとは思ったけれど、今はもとよりそんな気は欠片もなく。

出来ればずっと、自分だけが知っていればいい、と思いながら斎藤は俯く千鶴の頭にそっと手を置いた。
優しく頭を撫でられた千鶴が、皆の大好きな微笑みを湛えて顔をあげて斎藤に告げた次なる言葉は――

「そういえば、永倉さんのも気になっているんです。聞いて来てもいいと思いますか?」






END







何ですか?このオチはっていう…(滝汗)
こんなものでも、相互記念SSです。

『しし日々』の文月様に捧げます。
小説をたくさん書かれていて、私が小説なんかあげても大丈夫かなって不安になりましたけど^^;
一応リクエストの薄桜鬼オールです!
相変わらず長くなってしまい、申し訳ないです。本当に。
千鶴がみんなに愛されているのは…いいですよねv私も大好きです。