むぅ☆様HappyBirthday!!
猛獣使いと王子様:シルビオ×ティアナSS
もちろんED後ですvv
甘めにしたつもりです(^^)/
『愛のモフモフターイム』
トントン…
カウンターで頬杖をつきながら、指で机を鳴らして。
始めゆっくり刻んでいたその音は、中々現れない待ち人に焦れた気持ちが映るのか。
早いリズムで休みなく、薬屋の中に響いていた。
「・・・あ~もう!うるさいわね!仕事にならないじゃないっ!」
「あのなぁ、お前に、ここで何の仕事が出来るって言うんだよ。ここはオレの持ち場だろ?」
横で探し物をしているのか、ガチャガチャと薬瓶の音を立てるゲルダの方がうるさい、とばかりにシルビオは突き放すように言った。
いつものように頼りない魔女に向けたのは呆れた面差ではなく、明らかにイライラしているその表情。
「はいはい。ティアナがまだ来ないから、イライラしているのよね~」
「ちげぇよ。ティアナは自分のこともしながら店だって手伝ってくれてんだ。遅れて来たってそれは・・仕方ない事情ってやつだろ」
オレはこういうことをわかっている猫なんだ、とツンと澄ますような態度に、ゲルダの方が呆れた声を出す。
「・・・なら何をイライラしているのよ」
ようやくお目当ての薬瓶を見つけたのか、ゲルダはそれを手に奥に戻ろうとしながらシルビオに振り向いた。
答えたくないのか、今度はむっつり黙って指でカウンターを弾いている。
「とにかく、お客には笑顔でお出迎えしてよねっ!」
「んなこと、わかってるよ」
扉が閉まって、足音が遠のいて。
ゲルダがいなくなって、一度ほっと息を吐く。
自分だってこんな感情はどうかとは思うが、抱いてしまったものは仕方ない。
ほんの少し前まで笑顔で接客していたシルビオ。
それを曇らせらのはある客からの情報だった。
『いらっしゃいませ~!』
『こんにちは~・・・あ、やっぱりさっきのティアナさんだったのね』
店内を見て、最近は店番としていることの多いティアナがいないのを確認すると、その女性客はくすくすっと笑った。
『・・?ティアナがどうかしましたか?』
今日は用事が済み次第、ここに来ると言っていた。
そろそろかな~とは思っていたのだが…
『ええ、ティアナさん猫に捕まっちゃってて』
『・・・・・・猫?』
一瞬自分のことだろうか、と頭に浮かんだが・・自分は今日は外に出ていないし、何よりまだ愛しい彼女と顔を合わせていない。
『足元で懐かれちゃって、動けなくなったみたいで。座り込んで毛繕いしてたみたい』
『ああ、なるほど』
それはあいつは放っておけないだろうな、と納得する。
自分もよくティアナに毛繕いしてもらったっけ・・と思いながら、そういや最近はしてもらってないな。と気が付いた。
人間の姿で会ってばかりだからだろうか。
客に笑顔で応対しつつ、そんなことを考えていたシルビオに、女性客が言葉を続ける。
『だけどティアナさんの方が最後夢中になってかわいい~かわいい~って』
『へえ、そうなんですかー・・・』
『・・抱きしめてこう・・もう、愛情いっぱい!って感じ。あれなら猫さんも寄って行くわよね。きっと嬉しいだろうし、猫も人の顔を覚えるのかしらね』
『さぁ、オレは猫じゃないんでわからないけど、そうかもしれませんね~』
あははと笑いながら、ちゃんと接客したオレは偉い。
その客が帰った後、数人の客が店を訪れた。
けど、今に至ってもティアナはまだ店にやって来ない。
・・・・・あいつの家のこととか、猛獣使いの為の勉強だとか、そんなことだったらまだ・・だけど・・
たった一匹の猫にどんだけ構ってるんだって、思ったら・・・つい、時計とドアと視線が何度も往復してしまう。
猫の毛繕いしたいなら、オレがいる―
カリカリっと猫が爪とぎするように、カウンターをひっかきだした時。
ようやくカランカランとドアが開いて、こちらの気持ちなど全く知らないティアナが笑顔で店に入って来た。
「シルビオ、ごめんね!遅くなって・・」
「ああ、平気平気。見ての通り、店も暇してるし」
「そう?それならよかった・・・って暇なのはよくないよね」
苦笑いを浮かべるティアナに、シルビオは頬杖ついたまま、何も言わずにじっと金の目を向けた。
少し乱れてふわっと広がったティアナの柔らかな髪。
走って来たのか、猫と戯れ過ぎたのか、少し赤くなった頬。
シルビオにじっと見られて落ち着かないのか、ティアナがあのね、と目の前に籐のかごを差し出してきた。
「あのね、これ作って来たの。夜にでも食べて」
「・・?おっうまそうな匂い!これ魚?」
「うん。シルビオお魚好きだしね。大丈夫、もう冷めてるから」
笑いかけながら、シルビオに手渡そうとしたティアナのかごを持つ指先に、小さいひっかき傷。
シルビオはティアナからその料理を受け取ると、すぐにカウンターに置いて、ティアナの手をゆっくり自分の目の高さにあげた。
「あ~あ、これひっかき傷。やったの猫だろ?どこの猫だよ・・ったく」
「・・どうしてわかったの?」
自分が猫と触れ合っていたことなど、知らない筈なのに・・とティアナが目を丸くしていると、シルビオは顔を俯けたまま、目だけをティアナに向ける。
「オレは、お前のことなら何でも知ってるぜ」
そんなセリフも臆面なく言えてしまうシルビオが、ずるいと思った。
自分にはどうしたって無理だろう。だってそれだけで顔が赤くなる…
「…あ、あのねっ猫の毛繕いしてたらお料理に気がついたみたいで・・少し分けてあげたんだけど『もっと』って言うこと聞かなくって・・」
「んなの、笛で眠らせりゃいいんだよ・・・痛いか?」
傷口にゆっくり唇を添えて、ティアナを見上げるシルビオの顔はどこか面白そうで。
「こんなの痛いうちに入らないから平気っ!ほ、ほらっお客さんが来るかもしれないから・・」
カウンター越しにシルビオを押し返したつもりだった、のだが…どうしてそうなってしまっているのか。
頭はカウンターに付けて、ティアナを離すまい、と腰に手を回したシルビオの「ティ~アナ」と甘い猫撫で声が耳に届く。
「ちょっと、シルビオ。ここはお店!お店なの!」
「今更何言っちゃってんの。ここで抱きしめ合った仲だろ?オレ達」
「違っ…わないこともない・・けど、でも今は駄目!」
「じゃあ、いつならいいんだよ」
腰に手を回したまま、伸びをして顔をあげてくるシルビオの、からかうような笑みにカッと頬が熱くなる。
「い、いい、いつならいいって訳でもなくって・・・」
「ティアナ、オレにも毛繕いして」
「そうそう、毛繕い…え?」
すりっと顔を寄せてくるシルビオの仕草が、何となく猫が頭をもたげているような雰囲気で。
警戒して強張った体の力が少し抜けた。
「・・そういえば、シルビオの最近してないね」
「そーだろ?他の猫に構うのもいいけどさ、まずはオレを満足させろよ」
な?と唇端をあげるシルビオに、ティアナは愛し気に笑いかけた。
シルビオは他の猫を羨ましく思ったのだろうか。
最近はみんな・・呪いを受けた王子達もいなくなって、中々動物と触れ合えなくて。
シルビオとも薬屋の手伝いなどで、人間の時に会うことが多く、毛繕いなどすることもなかった。
だから、先ほど猫とのやりとりで、そんないてもたってもいられない衝動的な気持ちが爆発してしまったのだが。
「私も、シルビオに一番・・触れたいなって思ってるよ」
「――ティアナ・・それ、嘘じゃないよな・・?」
「うん。店番は私がいれば大丈夫かな・・ええっと金の粉、どこだっけ―」
久しぶりに、猫のシルビオを可愛がろう―
そう思ったら自然に顔が緩んでくる。
けど、そんなティアナの緩んだ口元に、ふわっとシルビオの髪がくすぐるようにかかって。
腰に回っていた手はいつの間にか、首に回って。
ティアナを自分の方に引き寄せようと力が込められたせいか、あっという間に彼の悪戯に満ちた顔が視界いっぱいに広がって―
「・・・・っ」
「金の粉は今必要ない。人間のオレをかわいがってって言ってるんだけど」
掠め取られた唇、突然の状況に驚いたまま動けないでいるティアナの様子をいいことに。
猫が親しさを込めてそうするように、瞼や耳、頬、唇と順々にぺろっと舐められて。
意地悪めいた猫目が、愛し気に細まって、捉えられたと思った途端に一気に血が巡るように熱くなる。
胸のドキドキに感情も言葉もついていかなくて。
口だけを動かして、必死に何か言おうとするティアナの唇は、すぐに優しく塞がれた。
唇だけじゃなくて、シルビオが髪に插し入れた指先が、ティアナを優しく撫でて・・
いろんな感覚にどうしていいのかわからなくなる。
「・・・っけ、毛繕いって言ったじゃない!」
「言ったけどさ、別に猫の姿に戻る、なんて言ってないぜ」
「・・・・・・それは・・」
ふっと手が離れ、解放されたように体が自由になったとティアナが思ったのも束の間。
体をふわっと浮かせて、身軽にカウンターを乗り越えたシルビオにたちまち捕まった。
「お前は、オレに一番触れたいって言ったよな」
「・・・・・・・・・・・・それは・・」
「オレはオレ。猫でも、人間でも・・オレだろ?」
「・・・・っでも、人を毛繕いするなんて聞いたことないし・・どうしていいのかよくわからないし・・」
もはや、今は仕事中なんだから無理、という至極当然な言葉さえ出てこない。
真っ直ぐに見詰めてくる瞳をそらさず見つめ返すだけで、いっぱいっぱいだから―
「同じようにしたらいいんじゃねぇの?猫のオレは抱きしめて、グリグリーコロコロッ撫で撫で~ってするのにさ」
「・・・・・・・」
「最後の方にはちゅーもたくさんくれるのに。人間になるとさっぱりなのはどーしてだろうな、ティアナ?」
ティアナはもうどうしたらいいやら、顔を真っ赤にして戸惑いながらも、健気にその瞳にシルビオを映してくれている。
…私が店に入った時、いつものような笑顔じゃなかった。
少し、いじけていたのかもしれない。
猫だから、猫に嫉妬、かな・・?
そう思ったら、毛繕いしてというお願いが、とても可愛く感じられた。
しょうがないな、とティアナがふっと顔を和らげる。
「・・じゃあ、少しだけね。猫の時みたいに気持ちよくないかもしれないけど・・」
ティアナの指先がそっと遠慮がちに髪に触れる。
ゆっくり梳かれているだけなのに、どうしてこんなに心地いいのだろう。
髪を梳きながら、耳の下や首を優しく撫でられて。
猫の時とは違う心地よさ。
猫の時よりも彼女に触れたいと湧いてくる感情。
恥ずかしそうに微笑みながら、これでおしまいね、と優しく口付けてくれたティアナに、もっと、とせがむのはどうしたらいいのだろう―
猫の時のように体を摺り寄せたらいいのか?
でも、それだと今触れ合ってる唇が離れてしまう。
そんなのは嫌だ―
猫の時には、届かなかった言葉。
猫の時には、届かなかった想い。
呪いを受けて、人となって彼女に出会った。
届くようになった言葉、それがとても嬉しかった。
届いた想い、けれど普通に恋をすることは許されないと思った。
離れた決意は、自分をどれだけ追い詰めるように苦しめただろう―
オレは、離れた時に思ったんだ。
また会えたら、離さないって…心に誓ったんだ―
だからティアナが何と言おうと、もう、離さない。たった今、僅かな唇が離れることだって―
離れかけたティアナの唇に、追いすがるように強く、口付けて。
世界の条理から外れた存在とかどうでもいい。
ティアナさえ、腕の中にいてくれたら、それでいい。
求めるようなキスは限りがなくて。
深く口付けて、何度もキスを交わして、漏れる吐息はどんどん熱くなって。
不条理の世界に生きる事を、何とも思わないほどの愛おしい感情を募らせるように――
END
むぅ☆様いかがでしょうか??
シルビオで甘甘!!が、頑張ったよ!?
何というか、どうしてもセリフ考える時にね、脳内ボイス再生のせいで…ウンバラに流されそうになる自分がいました(←)
ちゃんとシルビオ×ティアナSSになっていますように!!
あと、どうしても書きたかったおまけ…を下に!
短いですけど、遊んでますけど、むぅ☆様なら大丈夫だと信じてますので…v
カランコローン
「すみません、傷薬…っ!?」
「いらっしゃいませ~!申し訳ありませんが只今いちゃいちゃタイム中ですので、もう少しお待ちを~♥」
「ち、違いますっ違いますっ!!」
カランコローン!!バタバタ…
「か、帰っちゃった…ああ…ごめんなさい…」
「ティアナ~続き…」
「じゃないの!ほら、お店…」
「ん?ああ、そうだな。鍵しっかりかけとかないとまた邪魔入るよな」
「違う~~っ!!」
「~~♪」
カチャッ
ようするに、ラブラブして周りのことなんて気にしなーい!なシルビオが書きたかったんです(笑)
こんなバタバタ好きです…^/^
楽しんでくださいますように!!