効き目大!

「ルル?随分早いのね、どこかへお出かけ?」

いつも自分が起きて支度した後にようやく起きだすルルが、今日はもう身支度を済ませている。

「うん!ちょっと街の方まで行ってくるね!」
「そう。二人で楽しんできてね」
「え?」
「・・・・え?」

きょとんとした顔でアミィを見ているルルを見て、アミィも戸惑う。

「・・・アルバロさんと一緒ではないの?いつも一緒だから・・・」
「ううん!今日は一人で出かけようと思うの。こっそり行くつもりだから、もう行かなきゃ!じゃあ行ってくるね!アミィ!」

最終試験の後、アルバロと常に共に行動しているルル。
たまには一人でお出かけしたいというのもわからなくはないけど・・・

「・・・・見つからないことを祈ってるわ、ルル」

表面だけの笑顔で微笑んでくるアルバロを思い浮かべて、それが難しいことだと思ったアミィは、友がゆっくり1日過ごせますように。と願わずにはいられなかった。




「今日はなんとしても一人で出かけなきゃ…一人じゃないと聞けないもんね」
「誰に、何を、聞くつもり?」
「それはね・・・って、ア、アルバロ!?いつの間に!?」
「やだな〜ルルちゃん寮の門をくぐった辺りから追い付いてたよ」

にこっと微笑む顔が何か怖い・・・一人で出かけようとしたのを無言で責められているようで・・・

「で、誰に何を聞くつもり?また何か面白いこと考えてる?」
「そういうわけじゃないんだけど・・・」
「ふうん…この刻印の外し方でも調べてるとか?」
「そんなんじゃない!」
「違うの、残念」

そう話しながらしっかりルルの横をキープして帰ってくれそうにないアルバロに、ルルは言いにくそうに、

「アルバロ?今日はね、一人じゃないとダメなの、ごめんね」
「・・・・・・一人でねえ。まあ一人で放っておいてもルルちゃんは自分を傷つけるようなことはしないとは思うけど」
「そうでしょ!?信用して戻ってくれる?」
「でも、馬鹿なことは考えそうだからね、放っておけないかな」

にっと笑って、帰るつもりはありませんと、全身で表現してくる。

・・・・・このままじゃ予定が・・・・・・・

そう思ったルルは最終手段。

「アルバロ・・・お小言は後から聞くから!」
「?」
「レーナ・ルーメンー」

ぱあっと辺りがまぶしく光って一瞬視界がつぶれる。
アルバロはすぐにルルの様子を探るけれど、その一瞬の間に姿が見えなくなっていて・・・

「光の屈折を駆使して、自分の姿を隠す・・・やるね、ルルちゃん」

自分と一緒に今まで勉強していたのだ、光属性の魔法に関しては、かなりの高度な魔法も使えるようになったようだ。

「そこまで、隠されるとますます気になるね」

光の魔法を使っているとなれば見破るのもたやすいことだと思うけれど、敢えて探さずにしばしその場にたたずむ。

「さあて、鬼ごっこの始まりか?酔狂な遊びに付き合うとするか」

そういって、怪しい微笑みを携えながら、どこか楽しそうに歩き出した。




「・・・よし!うまくできた!」

一方安心しながら目的地への道を目指すルル。
はっきり言ってアルバロの目をごまかせるとは思っていなかったけれど・・・
・・・もしかして、わざと逃がしてくれたとか・・・?

一瞬そんな風に感じながら、そうであったらいいなと少しだけ期待しながら足を早める。
そして目的地の宿に着いた。

「・・・・・まだいるかな、ヴァローナさん」

最終試験前、アルバロとのことを占ってもらった時・・・アルバロは私に強く惹かれていて、二人の仲はこれ以上望めないほど、と言われた。その時はとても嬉しくて・・・

今は、どうしても不安になる時がある。
本当は、私のことを嫌っているんではないだろうか?
私の傍から、片時も離れようとしないのは・・・やっぱり嫌がらせ?
いつか、今の状態に飽きて、自由を選ぶことにしたら…私はどうなっても構わないけれど、アルバロが死んでしまうのは嫌。

今の二人を占ってほしくて、足を運んだのだけれど。
心に希望が灯るようなそんな言葉を聞きたい。
・・・もし聞けなかったとしたら、それはそれで受け止めたい。

そんな思いで、そっと宿に入っていくと・・・

「ヴァローナさん!よかった!まだいたんですね!」
「ルル・・・?どうした?」
「あの、実は・・・・」
「占いが望みか?」
「はい」
「あの、アルバロという者との?」
「・・・・・・・はい」
「・・・・・そうか、では、こちらへ」

ヴァローナさんは何も言わずにそのまま占ってくれる。
その口から紡がれる言葉をまだかまだかと待っていると・・・

「彼の者の関心はそなたに強く惹きつけられている。二人の仲は・・・これ以上望めないほどだろう」
「・・・・本当に?」
「そなたは、そう思えないのか?」
「・・・・・・・・いえ・・・あ、あの!ちょうど街に出てきたし、何かプレゼントをっと思って。何が気になってるか教えていただけますか?」

以前に教えてもらって手渡した「真実の鏡」、本当に喜んでくれた。
今、アルバロが何をしたら喜んでくれるのか、楽しいのか、自分を好きになってもらえるのか、そんなことばかりを考えてしまって。
何でもいい、ヒントが欲しい・・・藁にもすがる思いで尋ねると、

「わかった、しばし待て」
「はい」
「・・・・・・・・・彼の者が気になっているものは・・・・・・・・」

いつもなら流暢に紡がれる言葉が出てこない。
何か言いにくいことなのだろうか?不安になりながら、それでも黙って言葉を待つと・・・

「ルル、そなただ」
「・・・・・・・え?」
「彼の者は、今そなたにしか気を向けていない、たった今も」

そう言って顔をあげふっと笑うと

「入っておいで」

そうドアの方に向かって言う。

・・・・・・・え?・・・・・・・・・
ドアの方へ顔を向けると、チャッとドアが開き、入って来たのは・・・

「ア、アルバロ〜!?どうしてここに!?な、何で!?」

頭がボンとパニック状態になる中で必死に考える。
ここにいるということは・・・話の内容を聞かれた!?は、恥ずかしい〜
真っ赤になる顔を両手で隠すようにしてヴァローナの方に向きなおす。楽しそうに微笑んでいるヴァローナがちょっとうらめしい・・

「どうしてって言われても、光が変に屈折した痕跡を辿ってきただけだよ」

慌てている自分とは対照に落ち着き払っているアルバロまでもがうらめしい・・・

「まさか、こんなところで占いとはね・・・ルルちゃん、俺の気持は俺に聞けばいいのに」
「俺は君が好きだよって言ったよね」
「信じてもらえないなんて悲しいな〜」

後ろの方で意地悪げに楽しそうに響く声。

だから!その言い方がもういつもどおりで信じられにくいんだってば!

心の中で盛大に文句を言い放ち、溜息をついて席を立つ。

「・・・ヴァローナさん、すみません一人って言われてたのに、帰りますね」

申し訳なさそうに謝るルルに、ヴァローナは優しい微笑みをひとつよこして、

「ルル、妾は嘘は言わない。妾の先ほどの占いを信じること」

・・・先ほどの占いって・・・・え〜と・・・・

『そなたにしか気を向けてない』

あれも・・・本当かな・・・そりゃ私に何かあったらアルバロまで巻き添えだし気にかけるのは当然で。
でも・・・ちらっとヴァローナの顔をうかがうと、そんな心配など微塵もしなくていいような笑顔を向けられて。

・・・うん!大丈夫。信じる!

来た時とはまるで別人のような笑顔で「ありがとうございました!」と頭を下げて帰るルルにヴァローナは笑顔でうなづいた。



帰り道、ご機嫌なルルの横で、なぜか不機嫌そうなアルバロ。
いつもなら占いのことをからかってきたりするのに・・・どうしたのかな?

「アルバロ・・・まだ一人で出かけたの怒ってるの?」
「・・・・そんなことで俺は怒らないよ?」
「じゃあ、何怒ってるの?・・・・・占い?」
「そうだね」

占いに怒るだなんて、あの結果に腹が立つのだろうか・・・そんな風に自分は思っていないと言いたいのだろうか・・・
ルルが黙っていると、不意にアルバロが口を開いて、

「ルルちゃんは、同じこと言ってるのに俺の言うことは信じなくて、あの占い師の言うことは信じるんだね」
「・・・・・・・え?」
「俺の言うことももっと信じてくれてもいいんじゃないかな?」
「だ、だって・・・それは・・・」
「まあ、君も成長したってことなんだろうけど、騙されにくくなってきたもんね」
「ほ、ほら!そうやって言うから!」

もう!と頬を膨らまして抗議するルルの傍らで、面白そうに笑っていたアルバロだけど、一瞬表情を消して、

「・・・・・・でも、全く信じてもらえないっていうのも、なんだか、ね」

呟いたあと、すぐにいつものように微笑んだのだけど、なんだか様子が違う・・・

・・・・・・よし!
恥ずかしいけれど、私もしたいし、何よりもっと自分に自信を持たなきゃ!

そう思ってルルが思い切ってとった行動は・・・・

ガシっ!

「わ!?・・・ルルちゃんどうしたの?腕組むなんて珍しいね、誰かに見られるかもよ」
「み、見られたって、アルバロと私がいつも一緒なのはみんな知ってることだし、いいの!」
「そう・・・・ふうん、それならこれもいいよね?」
「え?」

ふっと顔に影が差して、くいっと顎を掴まれて上を向いたとたん口に触れたもの。
アルバロからの初めてのキス。
いつもの意地悪な態度とは全く違う優しいキス・・・

そっと離された顔はやっぱりいつもどおりの何か含んだような笑顔。

「アルバロ…こ、こんな人前で〜〜」
「俺を君に惚れさせるんでしょう?これくらいしてもらわなきゃ」
「だって、たらしこまれないんでしょう?」
「・・・何もしないよりは効果あると思うけど」
「私には私のペースがあるの!」
「でも試験後の1回だけで、あれっきり何もなかったし、それが君のペース?」
「・・・・・で、でもたまにするからこそ効果があるのよ!」

自分からキスなんて、本当にえい!って気合い入れないとなかなかできない。
あの1度きりでなかなか勇気が出せない自分に対して、あっさりキスをしてきたアルバロ・・・
秘めている気持の違いがヒシヒシと伝わってきそう・・・そう思っていた時、アルバロがぽつりと呟いた言葉。

「・・・・・・そうだね、効果あったよ」



END






アルバロ難しす!!精一杯です。あんまり甘くしてもいけないのか・・・と悩みながら書きました。
でも・・・どうしても甘くしたくなるんですよね(>_<)
ED後のルルからのキスにはびっくりしました!頑張った!!
アルバロルートのルルはかっこいいと思っています。だから小説書きながら、このルルかっこよくないな、大丈夫かなと思いながら結局そのまま・・・(汗)