かりん

間章1







「うおおっ!?ま、まじか!?」

少しばかり小雨が降る中、廊下をどしどし歩いていた新八は庭に手ぬぐいが落ちているのを見つけ、しょうがなく取りに降りたところ、なんだか奥の方から微かに気配を感じる。
・・・・・あんなところに人?間者ってわけじゃねえだろうが・・・
そっと気配を消して近づいてみると、目に入ったのは信じられない光景で・・・・

さ、斎藤に千鶴ちゃん!?あいつら何してやがんだ!し、しっかり抱きしめあって!!
思わず声をあげてしまったけれど、二人が気づく様子はなく・・・

だ、大丈夫だ斎藤・・・このことは俺の胸に秘めておくから・・・

そ〜っとその場を離れて、廊下にあがろうとすると、

「あ〜新八っつぁん!何してるんだよ!そんな汚い足で上がるなら後で掃除しろよ!?」
「平助!てめえ声がでかい!静かにしてやれ!」
「・・・・・何で」
「あ?な、何でだろうな〜」

ははっと明らかに態度がおかしい新八に、疑わしさ満開の平助は、

「大体、庭に下りて何してたんだよ!何かあんの?」
「これを拾ってただけだよ、さ、行くぞ」
「行くってどこに〜」
「あ?・・・・何でもいい!この場を離れてやるんだ!」
「・・・・・・怪しすぎるなその態度」
「!?左之!!・・・ちっ余計なやつまで・・・」
「左之さんもやっぱ怪しいと思う?」
「あ〜何か隠してやがるな、これは。おし、下に降りてみようぜ」
「おお!」
「だ〜!!待て!!斎藤の邪魔するんじゃねえ!」

つい二人を止めるために名前を出してしまい、しまった!と思うも後の祭り。

「一君がどうかした?」
「?何か任務でもしてんのか?」

余計に気になったように奥を覗き込もうとする二人を見て新八は、

「ば、馬鹿!覗くな!・・・・・千鶴ちゃんと逢瀬してるんだからな」
「お、逢瀬って・・・え!?」
「へえ〜やるな斎藤も」
「ただ、話してるとかなんじゃないの〜?新八っつぁんはそそっかしいからな〜」
「あんな奥で話しこむのは人前ではできない話なんじゃねえの」
「そうだ!左之はやっぱりよくわかってるよな!ところがだ、話してるだけじゃねえ!・・・しっかり抱きしめあっていたんだ・・・」
「だっ!抱きしめっ!?一君が!千鶴と!?」
「それはまた・・・いつの間にか進展してるな〜」
「そうだ、だからそっとこの場を離れるぞ!二人にしてやろうぜ」
「千鶴が・・・一君と・・・」
「なんだ平助、嫌なのか?・・・まあでも、気持ちはわからなくもないけどな」
「・・・・・・なんだ、お前ら二人とも千鶴ちゃんが・・・?まあ、あれは無理だ、あきらめろ」
「相手が一君じゃな・・・」
「・・・・・・・俺らはまだいいけど、総司にはこの話聞かれないようにしろよ、あいつ知るととんでもない騒ぎになりそうだからな」
「「あ〜そうだな」」

総司は何するかわかんないよな〜と二人が左之の言うことに、うんうんと同意していると、すぐ背後から・・・

「僕が何」
「「ギャっ!!!そ、総司!!」」

二人が過剰に反応するのを見て余計に怪しむ総司に左之は、

「おまえ、聞いてたの?」
「僕が何するかわかんないって、何で?何かあった?」
「い、いや、・・・土方さんが総司の仕事量増やしただろ?このまま続けてたら・・・って話してたんだ」
「あ〜そうだね」

総司がいとも簡単に納得したのに平助と新八は左之に心の中で拍手を送っていた。
だけど、総司がそんなに簡単に納得したのは、他に気になることがあるからで・・・・

「ねえ、ところで、千鶴ちゃん見なかった?」
「ち、千鶴?知らねえな〜厨房にでもいるんじゃねえか?」
「それがどこにもいないんだよね、邸内のどこにも・・・」

そういって庭の方に目をやる総司の視界を遮るように平助と新八が目の前に立ちはだかって、

「雨降ってるし、邸内のどこかにはいるだろう?すれ違ってるんじゃねえか?」
「そうそう!今頃部屋でくつろいでるかもな!」

そう説得しながら、ほら、俺らも向こうで休もうぜ!と4人連れ立って歩いて行こうとすると・・・

「じゃあ、斎藤君知らない?」

しーーーーーーん。

「斎藤君も見当たらないんだよね、でも斎藤君も出かけたわけじゃないみたいだし」
「し、知らねえな〜」
「一君のことだから、まだ土方さんの部屋で手伝いでもしてるんじゃないの!?」
「それか人知れず特訓とかな!」
「・・・・・・・・・・千鶴ちゃんと一緒だったりしてね」

しーーーーーーん。

「何で黙るの」
「おまえ考えすぎなんだよ!」
「そうだぞ!あんまり監視するように見てると離れていくぞ!」
「大体最近は総司とばかりいたじゃん!たまに、一君と一緒だからって見逃してやれよ!」

しーーーーーーん。

「・・・・へえ、やっぱり一緒なんだ」
「ち、違う!何言ってんだよ平助!」
「そうだこの馬鹿!総司が誤解するような言い方すんな!」
ゴンゴンッ!!
「痛っ!わ、悪い!総司今のは違うんだ!」
「・・・・・・戻る」
「「「ちょっと待て!」」」





斎藤が一生懸命告白している間、こんなやりとりがあったというお話。