レッツ苺狩り!




苺狩りの場所はどこ?




「き、きゃあああ!!」
「ルル、大丈夫大丈夫。朝露でも落ちてきたのでショウ」
「・・あ、そっか・・・ごめんね、騒いじゃって・・・」
「いえ、そんなところも可愛い一面デス」

さらっとそんなことを言われ、顔を真っ赤にするルル。
殿下にずっとこんな調子で傍を守られるように歩き続ける道中で。
そうです。今日は苺狩り。皆で楽しく苺の場所へと向かっている最中なのです、が…
皆、と言うよりは、殿下とルルが二人でラブラブオーラを発しながら(おもに殿下から)先行しています。

「まるでルルちゃんが苺みたいだね。そういうお手並みはさすが殿下ってところかな」
「み、見ていて恥ずかしくなるぞあれは・・・ラギ、場所はまだまだなのか?」
「あの二人は見なきゃいーんだよ。あんなもん目に痛痛しすぎるしな・・・そーは遠くない」
「もう少しか…でも、ラギ。今のは間違っているよ。ルルは可愛いから…目に入っちゃうんだし。ビラール、ずっとルルの傍でいいなあ」
「・・・そう思うのなら・・・彼女の傍にどうぞ。横でずっとそんなことを言われる身になってください」

行ける訳ないだろ、あの雰囲気を見て!!
と心の中で突っ込んで、そのまま歩いていたのはラギとノエルだけ。
ということは…?

「それもそうだね!ルル〜!!待って!俺とも話しながら行こう!」

・・・・ユリウス、すごい(すげー)やつ・・・・・
二人と、そして言い放ったエストも少しだけ驚いた表情をしている横で。

「じゃあ、俺もルルちゃんを苺みたいにしてこようかな」

さらっととんでもない爆弾発言して、ユリウスと同じようにルルの傍に向かったアルバロは…
有言実行。すぐにルルを苺のように赤く染めていた。

「「「・・・・・・・・・・・・・・・・」」」

残った三人は何やら重苦しい沈黙。
それはそう。前の4人組には花があって…何だかんだ言いつつ華やかで眩しくも見えるが、こちらは…
ノエルはユリウスやアルバロにつられて駆けそうになった足を、これまで通り歩くペースにぐっと留めた。

ここで、僕まで前の集団を追いかけて走ったら…僕も同じ気持ちなのだと…ば、バレバレじゃないか!!
何とかそうじゃなく、普通に・・・ルルの傍に行く方法はないのか??
徐々に歩むスピードをあげて…『おや?どうしたんだ?君たち。疲れたのか?おいていくぞ!はっはっはっ…』とか…
よし、これなら自然か?…自然だ!!

一人頷いて、ちらっと横二人の様子を見て、ノエルが足を早めようとした途端。

「大体!!何で道案内のオレを後ろに下げてんだよ。道がわかるならオレは必要ねーだろ!!」

自分でもわからないけど、目の前の光景は苛つく!!とばかりにラギが怒り出して。

「そっ!そそそそそういえば、さっきから・・・全く道案内という仕事を必要としていないな。先頭組はさっさと歩いているが・・・目星でも??」

ラギの剣幕に押され、ノエルの計画は実行できずに終わったのだった。

「そのようには思えませんが。見たところ、前の四人とも視線は景色を見ているようには思えませんし。」

四人?男三人は確かにルルに釘付けのようだけど。
いやでもルルは?
そんな二人の気持ちをわかっているのかいないのか、エストがさらに付け加える。

「彼女は…何にでも心を浮きたてて、落ち着いて周りを見ているようには思えません。それなら・・あんな風に・・・あ、また・・・転ばないでしょう」

すぐさま支えるビラールを目に捉えながら、ラギとノエルは不機嫌そうになるほど、と頷いた。
どうしてあんなに無防備というか、そそっかしいというか・・・・
前方三人組なら、声を揃えて「そこがいい」と言われそうだけど。

「…それでも・・道は今まで合ってたみてーだけど」
「当たり前でしょう?・・・一本道でしたから」
「あっ・・・・言われてみれば!!」

そんなことに今更気付いたかのように、頷く二人。エストは苦々しい表情を浮かべた。
全く、普段ならわかることでしょうに。
…あなたたちも結局・・前の三人同様にある一点にしか目が向けられていないじゃないですか。
そんな嫌みを口に出すのをためらったのは、それを思った時に、エスト自身もその紅一点に視線を向けていたからだろうか。

「このままずっと一本道なのか?」
「いや、・・・もうすぐ道が途絶えてくる。それに脇に入らなきゃいけねーし・・」

・・・あいつ、舗装されてない、道なき道で大丈夫か?
今でさえ、何かに躓いたり、段差に落ちそうになったり、沼にはまりそうになったり…
ラギは心配も不安も含めた視線でルルを見つめた。

一方前方、ルル+男三人組。

「ううっごめんなさい。ビラール」
「大丈夫デス。気にする必要はありまセン」
「そうだよね、殿下は…むしろルルちゃんがドジするたびに喜んでいるよ、きっと」
「え?アルバロそれ、どういう意味?俺はルルが怪我したら嫌だけど」

何度も草や石。何もないところでも躓いて転びかけるルル。
それを当然のように支えるビラール。最初から傍にいれば、そんなことに有利な位置は把握しているのか。
必ずビラールが支えている。

「うん、そうだね。俺もルルちゃんが怪我するのは嫌だけど…俺の方に倒れこむなら、大歓迎って話だよ」
「アルバロの方に…?それなら、俺は…俺の方がいいんだけど。」
「もう転ばない!!転ばないもの!!」

何だかルルはその会話を聞いて、自分が情けないやら、恥ずかしいやらで。
さすがにビラールに申し訳なくなったのか…景色を楽しむ、というより足元を注視しだしたのだけど。

「ルル?足元を見て歩く方が危ないデスよ?私のことなら気にしナイ、気にしナイ」
「でも・・・・ひゃっ!?」

急に背中を引っ張られて、後ろに倒れる!!
そう思ったら…体はふわふわ浮いていて。
楽しそうにアルバロがルルをお姫様抱っこしていて・・・・

「じ、自分で歩けるっ!!」
「ルルちゃん。うん、俺もそうして欲しいのは山々だけど。あのままだとあの太い幹に頭ぶつけていたからね」
「・・・・・・・そ、そうなの?」

ビラールとユリウスに確認するようにルルが顔を見れば…

「枝…あるにはありマスが…ぶつかるなら私の方ではないでショウか」
「うん。そんなすぐぶつかるような枝はなかったけど…アルバロには見えたんだ?何だろう、ここら辺は魔力を他の場所より感じるから、この辺りの植物にも何か作用があったり…」
「まあ、そうではないと思いマスが…アルバロ?」

ビラールの問いかけと共にルルがアルバロを仰ぎ見れば、満面の嘘くさい笑顔。

「俺にはあるように見えたんだけど、幻覚だったのかもしれないね」
「も〜!!違うなら下ろして!!!別に怪我もしてないし!歩けるの!」
「つれないね、ルルちゃん。せっかく君を捉えたのに・・・もう下ろせって?」
「ち、近いってば!お、下ろして…「ねえルル?もし疲れてるなら、俺がしてあげるけど・・・」
「ユリウス…ち、違うからそうじゃないの…」

話がいきなり切り換わり困惑しつつ、ユリウスに笑顔を向けて。
好意なんだか、善意なんだか、ユリウスの澄んだ瞳でそう言われるとどうも調子が狂う。
そんなルルの様子に、アルバロは困ってないけど、困った顔を作って。

「随分態度が違うと思わない?」
「日頃の行い・・でショウ?」
「・・・・・・・」

未だアルバロに抱きかかえられたルル。
その首筋に今度こそ、ぽとっと何かが…

「あ、芋虫」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

その後、ものすごい悲鳴をあげたルルは、アルバロにしっかり抱きついて。
アルバロは一番おいしい役をかっさらって大満足。
ビラールが芋虫をすぐに取り、落ち着かせようとするもルルパニック状態。
ユリウスはアルバロずるいっって叫びながらも、ビラールがルルから取った芋虫が、貴重な鱗粉を取れる蝶になるものだとわかって目を輝かせて。
ルルの悲鳴と、アルバロに抱きつく光景に何が何だかの後続メンバーは…
とりあえず、抱きつかれたのをいいことにしっかり腕を回すアルバロを、真っ赤になって怒りながら引き剥がそうとするノエル。
アルバロの状態に、あれがオレじゃなくてよかった…と安堵しつつ、無性に胸がムカムカするラギさん苛々して先へ進むぞと追い抜いて。
ああ、やっぱり騒がしいと思いつつ…ルルの傍を通れば気になってしまうのも事実。相変わらずトラブル製造機ですね、と冷たい視線でルルを正気に戻したエスト。ちなみにアルバロにはもっと冷たい視線が向けられたとか。

そんなこんなでずっとドタバタしつつ、ルル御一行は野苺広がる野原に到着しましたとさ。