レッツ苺狩り!!


前編:苺狩りに行く経緯は?



「ラギ!今帰ったの?」
「お〜…よく寝た」

ふああとあくびをしながら寮に戻るラギがルルの傍を通り過ぎた時…ルルはその匂いを嗅ぎ逃さなかった。

「苺、苺のにおいがするっ!!苺食べたの?外で?もしかして供物?」
「い、いっぺんに質問すんな!!…そーだよ。外に決まってんだろ?供物…じゃあねーけど…」
「もしかして、どこかに苺なってるの??」
「何だそのキラキラした瞳は…言っとくけど、オレは連れて行かねーぞ!?」

ぐぐっと迫ってくるルルから一、二歩後退してそのまま部屋に戻ろうとしたラギの体は、しかし戻ることは叶わなかった。
ガシっと誰かに肩を掴まれて…

「て、てめービラール!!放せよっ!!」
「ラギ。一人占め、いけないデス。ルルにも教えてあげてはいかがデスか?」
「一人占めしよーなんて、意地汚いこと・・・・・・・・お、思ってねーよ!!」

その一瞬の間に、ひねくれた人がいたら「本当?」とツッコまれたかもしれない。
ラギはビラールの手を振りほどくと、ぱぱっと服を整えて、はあ、と溜息を一つ。

「夕方だぞ?もーいーだろ?晩飯に食いっぱぐれるのは…オレは嫌だ。絶対!嫌だ。」
「じゃあ、明日ならいいの?」
「おー…って…あ?明日!?おいっルルっ・・・」
「明日きっとね〜!!」

満面の笑顔を湛えて、ルルは幸せそうに女子寮に戻ってしまった。
いや、断られる前に逃げた、とも言う。

「なんでこーなるんだよ!明日は一日ゴロゴロしてよーと…」
「いつものことデス。たまにはお出かけしまショウ・・・ラギ?」
「何だよ」
「まさか、ルルまで一人占めするなんて、言いまセンか?」
「言う訳あるかっ!!」

顔を真っ赤にして否定するラギに、ビラールは笑顔で「では、私も一緒ニ」と返事をしようとした。
けれど、その前に当然のように会話に割り込んだのは…

「もちろん俺も行っていいよね?楽しみだな。ルルちゃんと苺狩り。じゃあ、そういうことで」
「おー…・・・・・・ってアルバロ!!いきなり入ってくるんじゃねー!!」
「ラギ…君の叫びは筒抜けだぞ?…君たちだけでは不安だ。仕方ない。僕も一緒に行くとしよう!いやあ、構わないぞ!何があっても僕が守る!ど〜んと大船に乗った気持ちで…」
「どこに行くつもりだよ!苺狩りだっつーの!!それに泥船の間違いだろ・・・つーか、ノエル。おまえもだ。いきなり入ってくんな」

すでに叫び疲れたのか、少々テンションの下がるラギ。
そんなこと一切介さず、ではまた明日!と張り切り去るノエル・・・

「道案内大変ですが、よろしくお願いしマス。ラギ」
「おー・・・・・あそこにいるのは・・・ユリウスとエストか?・・・まさかまた増えるんじゃ・・・」
「そんな予感はしマス」

にこにこ微笑みを浮かべるビラールに、がっくり肩を落とすラギ。
当然仲の良い者たちはすれ違い様声をかけあって…

「あれ?ラギ。どうしたの?何だか疲れているみたいだけど」
「珍しいこともあるものですね。元気が取り柄では…」

ユリウスはともかく、エストまで立ち止まって声をかけてくれるなんて。
そんなに疲れた顔をしているのだろうか・・?

「ところでさ!さっきルルと話していたよね。何話してたの?明日きっとね〜!ってルルが手を振りながら去って行っていたよね!もしかして明日どこか出かけるの?」

ルルばりに目をランランと輝かせて尋ねて来るユリウス。
見てたのか!!だからか!!!
ラギは心の中で盛大にツッコんだ後、ぼそっと「苺狩り」と呟いた。

「え?何?」
「苺狩りデスよ。ユリウス。エストもご一緒にいかがデスか?」
「えっ!いいの!?うん。もちろん!!ルルも一緒だよね?楽しみだな。」
「・・・ユリウス。明日は課題の薬草を探すのでは…」
「あっ・・・・でも大丈夫。甘いにおいにつられて群生してるって本に書いてあったし…苺のそばにあるよ、きっと」

こいつ、適当だな…ラギが呆れた視線をユリウスに投げかけるのと同時に、エストも同類の視線を送っていた。

「わかりました。では別々に探しましょう」
「え?何で?エストも一緒に・・・」
「いえ、結構です。そのメンバーで何もない確率は無に等しいですから。では失礼します」
「でも、探すあては今のところないのでショウ?それならば、ユリウスの言うことも的を得ていると思いマスが」

確かに、甘いにおいに誘われるように群生する。としか書かれていなかった。
それなら…可能性はないことはない。けれど…

『エスト!』

にこにこ笑顔で人のペースをどんどんかき乱す少女を思い浮かべて…
傍にいない方がいいと思うのに、何で僕は――

「・・・わかりました。でも、僕は苺の周辺を探す為に行くのであって。苺が目的ではありません」
「何でもいーって…結局いつものメンバーかよ」

こうして皆で苺狩りに行くことになりましたとさ。