拍手お礼小説



ユリウスVSラギ





「ありがとうルル。君がいて助かったよ」
「ううん!こちらこそ、ユリウスの役に立ったなら嬉しいわ!」

午後、先生の講義もなく一人湖のほとりに足を寄せるとそこで一人困っていたのがユリウスだった。
自分などでも役に立つのなら…と補助を申し出たところ、なんとか魔法もうまく働き、今感謝されている。

「ルル、今から何か用事でもある?」
「ううん、何にも。あとは寮に帰るだけよ」
「それなら、一緒に食堂行かない?なんだか喉渇いちゃって。小腹も空いたし、付き合ってくれないかな」
「うん!喜んで!」

にこっとルルが笑顔を向けると、心なしかユリウスの顔がほんのり赤くなる。

「じゃあ行こうか」
「うん!」

ユリウスは赤くなりながら、ぎこちなく手を差し出してくる。
その手をためらいもせずにキュっと握って歩き出す。

そのまま湖のほとりを離れようとした時、

た、助けてくれ・・・・・

「?今何か聞こえた?」
「え?ううん、君のかわいい声以外は全く」
「もう、ユリウスったら」
「でも本当のことだよ」

「・・・・・・・は、話を聞け!そこの馬鹿供!!」

茂みの奥から聞こえたのはかわいい火トカゲ…もとい、ドラゴンのラギの声。

「ラギ!?どうしたの、そんなところで・・・」
「し、知るか!昼寝して起きたらこの状態で・・・は、腹減りすぎて動けねえ・・・」
「寝てる間に誰かに抱きつかれたのかしら?」
「ただ単にラギに躓いて、体の上に転んだのかもね、よく起きないね」
「う、うるせえ〜!・・・と、とにかく何か食べるもの・・・供物を」
「そうだね、ルル食堂へ行って何かもらってこよう」
「う〜ん・・・・でも・・・・」

そう言うとルルはひょいっとラギを抱き上げて抱える。

「な、何しやがるんだてめ〜!」「ル、ルル!?」
「だって、こっちの方が早いし・・・ラギも早く食べたいでしょ?」
「そ、そりゃまあ・・・」
「じゃ、行きましょ!」

急いで向かうためにギュっとラギを胸に押し当てるように抱いて走り出す。

「うあっ!?」「ルル!」

二人の叫び声にびっくりしてルルが止まると、抱いているラギは真っ赤になっていて、ユリウスはものすごく不機嫌で。

「え、えと・・・何?」
「俺が運ぶ」
「え?」

言うや否やユリウスはラギをひっつかむように自分の腕の中に収める。

「や、やめろ!痛い!痛い〜!!」
「ゆ、ユリウス!あんまり強く抱きしめるから痛がってるよ!」
「ルルと同じようにしてるつもりだけど」

むすっとしながら足早に歩き出すユリウス。
ルルは必死で後を付いていくのだけど、
「だ〜〜!!お前わざとだろう!?息ができない!く、苦しい〜!」

ラギの悲痛な叫び声を聞いて、ルルはユリウスからラギを奪取!

「ユリウス!力の加減できないの!?」
「してたよ!」
「嘘つけ!ごつごつ骨に顔を押し付けやがって!痛くてたまらなかったんだぞ!」
「ごめんねラギ・・・」
「お、お前は悪くないだろう・・・」
「ありがと、急ぐね!」
「おお」


「・・・・・・・・・・・・・・」
後に残されたユリウスは、無言でルルの背中をぼ〜っと見ていた。

「同じように抱いてたつもりなのに、おかしいな・・・そんなに力入れてないぞ?」
「無意識のうちにぎゅうぎゅうにしてたのかな・・・それもあるかも、なんだかむっとしたし。でも・・・」

『骨に顔を押し付けやがって!』

「・・・それは仕方ないよ、ルルが抱いたらラギの顔に当たるものは・・・」

そこまで考えてボン!っと顔が赤くなると同時にラギの体質がうらやましくてしょうがない。

「そうだっ!僕も〜」

そう言って図書館に向かって走り出したユリウス君の考えはみんなの予想通りで。




「ラギ、またここで寝てたの?」
「ん?・・・ルル?あ〜頭使いすぎたから休憩してたらいつの間にか寝てた」
「ふふっラギらしい、何の勉強してたの?」

ルルがラギの横に腰をおろすとふわっと何かいい香りが鼻をくすぐる。
これがルルの香りだと、昨日わかってしまったラギは顔に熱が集まるのを自覚する。
ルルに気がつかれないよにそっと顔を背けて、昨日のお礼を言おうとすると・・・・

「ルル!」

ユリウスの声が突然響いて二人が後ろを振り向くけど、その姿はなく。

「??ユリウスの声したよね」
「いてほしくはないが、したな」

二人が腰を上げて探そうとした瞬間ルルの膝の上に乗ってきたもの、それは・・・

「ウサギ!ウサギだ!かわいい〜!!」

ルルがぎゅ〜っと抱きしめるとそのウサギは異様に赤くなってもじもじしながらそっと抱きつくように身を寄せる。
なんだかそのウサギの仕草がおおいに気に入らないラギは、首根っこを掴んでウサギをルルから引き離した。すると・・・

「ラギ!痛いよ、離してくれないかな」

「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ユ、ユリウス!?」」
「そう、うまくいったよね、どう?」
「ど、どう?ってどうしたの!?」
「ルルはうさぎが好きでしょう?だから・・・ちょっと変身したら喜ぶかなって・・・」
「嘘つけ!!お前魂胆みえみえなんだよ!!」
「魂胆って何?」
「ルルはウサギが好きだからウサギがいいと思ったんだけど、ダメだったかな・・・」
「ううん!そんなことない!かわいいよ、ユリウス!・・・・ところでどうやって戻るの?」
「あ・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・」
「・・・・まさか、わからないとか言うんじゃないだろうな」
「そのまさかだ。もう変身することしか考えてなくって・・・」
「ど、どうしよう!?」
「放っとけ」
「・・・そのうち戻るとは思うけど・・・」
「そっか、じゃあユリウスが戻るまで私が面倒みるね!」
「本当!?」「だめだ〜!!」


二人の叫び声は学校の方まで響いたとか・・・


おまけ。

元に戻ったユリウス君とラギの会話。

「ラギはいっつもあんな思いしてたんだ・・・」
「ユリウス!お前誤解を招くような言い方するな!」
「本当のことじゃない」
「そ、それに、あんなことするのはルルだけだし・・・」
「次から絶対俺がするから」





END




感謝の気持ちを込めて。
みかん