拍手御礼 ラギVSアルバロSS



『見るな覗くな後ろに立つな!』




「・・・・」
「・・ラギ?どうした「シッ・・・・・」

先ほどまで、お昼をお腹いっぱいに食べてご機嫌そうにしていたのに。
昼寝でもするか、と湖のほとりまで来て、気持ち良さそうに寝ていたのに。
急に黙って眉間に皺を寄せている。

・・・何か感に障るようなことをしたかな。
恐る恐るラギの様子を覗えば、そんなルルに気付いたのか、やや顔を和らげてくれた。

「・・別に、何でもねー…気のせいだったみたいだな」
「?何が?」
「いや、こーいう時は…なんつーか大抵…」

ごにょごにょと、肝心なところを言いきらないラギに、ルルは首を傾げた。
こういう時…何だろう?
とにかく怒っているわけではないようだ。

「?よくわからないけど、ラギもう眠くないみたいね。戻る?」

うつらうつらして、閉じかけていた瞳は今はせわしなく周囲に向けられている。
とても寝られる状況ではなさそうで。

「眠くはねーけど…」
「うん。じゃあ戻る?」
「いや、昼寝の為だけに来てるって訳ではないっつーか…このままここにいてもいーっつーか…」
「?」

黙ってラギの様子を覗って、そのままじっと言葉を待つルルにラギはふと視線を向けて。
バチっと視線が絡めばそのまま静止できなくなり、慌てて顔を逸らした。

「・・ラギ、やっぱり何か怒ってる?」
「お、怒ってない。そこは誤解すんなよ」
「うん。それじゃあ…」

ぽかぽかの陽気。
絶え間なくさんさんと降り注ぐ日差しに、少し喉が渇いてきた気がする。

「ここでちょっとお話する?」
「・・それでいー」
「わかった!じゃあ私ちょっと飲み物とお菓子取って来るっ」
「っ!?おい、ルルっ!・・・ってはえーもう行きやがった・・・」

先ほどお昼を食べたばかりで、もうお菓子の準備をする辺りの気持ちはラギにはよくわからないけど。
それでも、まあ、いーかと思いながら顔を顰めて周りを見渡した。

女は苦手だ。
キャーキャーうるさいし、うざい。
ルルだって…違わない、ことはない。そんなところもあるけれど。
だけどルルだけは違う。
トラブルが持ち込まれるってわかっていても…自然にツッコまずにはいられないし。

それが何故か、はっきりと自分の気持ちを言えるほど、器用ではないけれど。
それでも、今はこんな風に過ごすのが心地いい。

・・・なのにその時間を見計らうように、何だそのタイミング絶対狙ってんだろ!?って思うくらいに。
いつもあの男の影がちらつく。
さっきはそれで少し警戒しすぎただろうか。ルルが訝しんでいたけど…

けれどラギは、後で爪が甘かったと後悔することになる。



「ルルちゃん、ご機嫌だね」
「あ、アルバロ!こんにちは…アルバロの方こそニコニコしているわ」
「そうかな。どうしてだろうね」

お菓子を取りに向かう途中、後ろから声をかけて振り向けば、いつもより割増しの笑顔を湛えたアルバロの姿。
つられて微笑めば、いつの間にか横に並んで歩いている。

「アルバロはどこに行くの?」
「うん?そうだな…することもないし、暇だから暇つぶし。かな」
「そうなの・・暇なら私と一緒に来る?丁度ラギと一緒にお茶をと思って・・・」

ね、そうしたら?と笑いかけるルルに、アルバロは困ったような笑顔を作った。

「是非、ってお願いしたいところだけど。さすがにそれは可哀想かな」
「可哀想?誰が?」
「誰って…こうまで鈍い子を好きになった人が可哀想かな」
「???ますますわからないわ」

眉を寄せて、困惑した顔を見せるルルに。
今頃、ルルを待ちながらきっと自分を警戒しているであろうラギを頭に浮かべて、首をすくめた。

「ねえ、ルルちゃん。お茶するなら、美味しいお菓子を知ってるから…今度の休みに俺と一緒にどうかな?」
「もちろんいいけど…今日は一緒にはしないの?」

そりゃそうだ。第三者として様子を覗う方が退屈じゃない。自分に合ってる。
そう思ったけれど、いつの間にかマントに添えられたルルの手が目に留まる。

「・・・・・」
「決まりね!ラギが待ってるから早く行かないと!」

すぐに離された手と共に、ふわっと目の前を駆けていくルルの後ろ姿を見ながら、言葉が咄嗟に出なかった自分にアルバロは首を傾げていた。



「・・・で、何がどーなってこーなってんだよ」
「さあ、俺もよくわからないんだよね。あの子に強引に押し切られたっていうか・・」
「てめえ!ふざけんなよ!さっきもいただろーが!絶対いただろ!?」
「何のことかな」
「二人とも、お茶飲まないの?」

ルルの背後で不穏な空気漂わせる二人に振り返り尋ねれば、「飲む」「頂くよ」と簡単に返事はしてくれるものの…
一向に用意されたお菓子やお茶に手をつけるでもなく、何やらごそごそ話をしている。

・・・あの二人、そんなに仲良かったかな。
ま、いいか。お茶もお菓子も美味しいし…

ルルが見当違いの考えに落ち着いて、ゆっくり午後の一時を過ごしている背後では・・・


「いっつも背後から突然現れやがって…尾けてるって思われても文句言えねーぞ」
「それは心外だなあ。たまたまルルちゃんを見かけて、ほら、ルルちゃんってトラブルメイカーだからつい、何かあるかなって…」
「…それを尾けてるって言うんだろーが」
「そんなに剣呑としなくても…ラギ君とルルちゃんの逢瀬を邪魔しちゃったのは本当にたまたまだから」
「お、逢瀬って…」
「いやしかし、ルルちゃんも毎日毎日お茶飲む相手がいていいよね。次の休みは俺と約束してるんだけど」

ここでアルバロの笑顔の種類が変わる。
にこにこ、まるで感情のないような笑顔を湛えていたのに、目がすっと細められて何か焚きつけるような、そんな…

「・・・てめー・・・オレの邪魔は散々しといてそれか!?」
「ああ、やっぱり邪魔だったんだね。じゃあルルちゃんにそう言って、俺は退散しようかな」
「ま、待て!・・ちくしょ〜!てめーもうルルの周りうろつくな!見るな!覗くな!というか、後ろに立つな!」
「随分いっぱいお願いされたけど…それならラギ君もルルちゃんの周りをうろつくなって言ったら聞いてくれるのかな」

ルルの背後でそんなやり取りがあるとは露知らず。
もう何個目かのマカロンを口に運んで、一人、ルルは幸せそうにしていた。



END






バロさんとラギのVSです。た、楽しいっ!!
二人とも…こんなこと言わないような気がするけど。
ワンドは仲良しメンバーで、絡ますのが楽しいですv