『当たるも八卦当たらぬも八卦!』







※SSL設定です。









「はあ、何でこんな男同士でわらわら出かけないと行けないの?」

「んなこと言ったって…うちの学校は千鶴しかいない訳で、その千鶴が来れないって言うんだから・・・仕方ないじゃん」

「そんなことわかってるんだよ。・・・僕は、そのたった一人がいてくれたら…それがよかったのに・・・はあ」

「・・・・同感だ」

「ったく、暗いよなあ二人とも。」



今日は春祭り。

こういうイベント事は…想いを寄せる相手と近付けるチャンス!!

そう思って誘えば…



『すみません。もう予定が入ってて…行けそうにないんです』



と、断られてしまったのだった。

それで総司と斎藤は、周囲から見て明らかに沈んでいる。

というか、ご機嫌斜めにも見える。



「あ、あの御神籤引こうぜ!千鶴が去年あれ、よく当たるって言ってたんだよな!」

「・・・・ふうん、去年。千鶴ちゃん平助と一緒だったんだ。それ、自慢?」

「ああいうものは、自分次第だ。当たるということは…千鶴はそれだけ自分の信じることに努力しているんだろう・・」



ますます不機嫌になる総司と、さすが千鶴、と感心するようにどこか遠くを見る斎藤に、

平助はもうげんなり。



「あ〜もういいよ。オレだけ引いてくるから!おっし!すみませ〜ん!籤引かせて…」

「は〜い・・・って、平助君!?今年もここの籤引きに来たの?」

「「・・・・・・・・・・・」」



にこにこ籤の入った箱を持ちながら、平助の前に立つ千鶴は…巫女姿。



一緒に祭りに来れない理由はこれだったんだ。

どうしてここにいるんだろう?

何をしているんだろう?

そして、巫女姿の何と似合っていることだろう・・・



様々な思いが頭の中を巡る。

ぼうっとする三人の意識を取り戻したのは、千鶴の声だった。



「沖田さん、斎藤さん。今日はすみませんでした。お誘い、嬉しかったんですけど」

「・・・いや、いいんだよ。こういうことなら・・・千鶴ちゃん何してるの?」

「あ、お千ちゃんが引き受けたバイトなんですけど、どうしても用事があって無理になったって・・・だからピンチヒッターで私が」



そういうことか、一緒に祭りを楽しめないのは残念だけど。

でもそれを補うのに余りある千鶴の巫女姿・・・・

見惚れる総司と斎藤を余所に、平助は照れを隠すようにさっさと籤を引いた。



「よ、よ〜し!ここのはよく当たるからな!どれどれ・・・」

「・・・いいこと書いてあった?平助君?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



籤を見る平助の顔が曇って青ざめていく。

そんな平助の様子に千鶴は心配になって、様子を覗っていたのだけど・・・



「お、オレ、帰る」

「え?もう?まだ来たばかりじゃ・・・」

「悪いっ!帰るから!!」



瞬く間に走って遠ざかる平助を、千鶴は心配そうに見つめていて。

残り二人はもちろん…きっと・・喜んでいたのだと…



「・・僕も引こうかな。本当は今日、千鶴ちゃんとここの御神籤引きたかったんだ」

「そうなんですか・・・すみません。あ、じゃあ私も沖田先輩の後に引きますね」

「うん。じゃあ引こうかなあ・・・千鶴ちゃん、僕の恋愛運がいいように祈ってて」

「はい」



ごそごそ、と腕を箱に突っ込んで、

何事か強く祈っているように籤を選ぶ総司とは対照に斎藤は微動だにせず。



「斎藤先輩は籤を引かないんですか?」

「・・籤?ああ、そうだな・・・引かせて・・も、もらう」

「?どうかしました?」

「・・・いつもと様子が・・その見た目が大分違うので・・つい・・・その、巫女姿。とてもよく・・・に、に・・「似合ってるよ〜千鶴ちゃん」

「あ、ありがとうございます」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「何、斎藤君。怖い顔して・・さっさと引きなよ」



さっさと言わないのがいけないんだよ。って言っても…言わす気はないけどね。

ふんふん〜と鼻歌歌いながら籤を開けた総司の目に飛び込んできた結果は…



『恋愛…口は災いの元。流れる言葉は相手の気持ちをライバルへと遠ざける。

     気持ちを伝えるには便りが吉。』



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そういえば千鶴ちゃん、さっきありがとうって微妙な顔してたような…





一方斎藤は…



前には…似合っている、と自然に言えたものだが・・駄目だな。

千鶴を好きだと自分で認識した後は、どうしても言葉が詰まってしまう・・・

溜息まじりに籤を開いてみると、斎藤の目に飛び込んできた結果は…



『恋愛…ライバルの気持ちは真剣。いつまでも気持ちを伝えられずにいると奪われる。

     時には強引に相手を引っ張るのが吉』



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

総司は、茶化してばかりだが真剣なのは・・何となく・・・だ、だが強引にとはどうすれば・・・??





黙りきった二人を余所に、千鶴はそれじゃあ私も、と三番目に籤を引いた。



『恋愛…相手はあなたに対して誠実です。迷うことなかれ。』

『総合…自分の信じた道を進めば吉。争い事はただちに解決する』 



「わあっ!いいことが書いてありました!お二人はどうでした?」

「・・・・・・・・・・・・・」

「?沖田先輩?どうかなさいました??」

「・・・・・・・・・・・・・」



身振り手振りで何かを伝えようとしているけど…何だろう?書くものがいるってことかな?

どうしたんだろう・・・



「紙とペンでいいんでしょうか・・?今持ってきますね」



こくっと頷く総司に、千鶴は首を傾げながら奥に入っていった。

斎藤はそんな総司の様子を横目で不審気に見ていた。



「総司、それは何の真似だ」

「・・・・・内緒」

「話せるではないか。千鶴に迷惑をかけるな」

「僕だって、必死なんだよ。黙っててよ」



千鶴が戻ってくるのを見て口を噤む総司。

・・・籤に何か書かれていたのか?それを実践しているのだろうか・・・?

『ライバルの気持ちは真剣・・・・奪われる・・・』



籤の言葉が斎藤の頭に浮かんで離れない。





「はい、沖田先輩…どうしたんですか?急に・・・喉でも痛いんでしょうか?」

【うん、風邪かな。心配しないで】



さらさらっと紙に返事を書く総司。

それを見て千鶴は顔を曇らせた。



「あの、ひどくなる前に帰った方がいいと思います。私、送りますから・・・」

「・・・?千鶴?仕事はどうするつもりだ?」

「仕事は・・・もう終わりの時間だから大丈夫です」

【本当に?】



総司の言葉に、千鶴は優しく頷いて。



「だから、もう少しだけ待っていてください。すぐに帰り支度しますから」

【ありがとう千鶴ちゃん。嬉しいよ・・そんなところ、大好き。】

「・・・っお、沖田先輩大袈裟ですよ・・それくらいで」



こにこしていた総司の顔は、優しい笑顔に変わる。

【本当だよ、大好き】



ゆっくり差し出された紙には、そう書いてあって。

いつものような冗談っぽさは欠片もなくて――



「〜〜〜あ、の・・じゃあ待っててくださいね」



顔を真っ赤にして、手でそれを隠すようにそのまま立ち上がる千鶴。

・・・口を挟めない。横ではそんな千鶴を総司が嬉し気に見ているが…

――当たっているのか?それなら俺のは…いや、俺のも当たっているのか。言いたいことも言えずに・・・



このままでは・・・奪われる――?



そう思った時に、咄嗟に手が伸びていた。

掴んだ手は絶対離さない。引き寄せて・・・



「なっ!?・・・・う・・・・」



口を出そうとしたのか、総司が何か言いかけたけど、そのままぐっと口を閉じた。



「・・斎藤先輩?どうかしたんですか?」

「いや、・・・これは・・・・・」



気持ちを伝える・・・伝えなければ・・・



「千鶴、千鶴を行かせたく、・・ない」

「え?」

「ま、まだバイトだろう?もうすぐ終わりとはいえ、切り上げるのはよくない。一度引き受けた仕事は最後までしなければ・・・」

「・・・斎藤先輩」



違う、そういうことを言いたいんじゃなくて。

伝える、伝えなければ・・・



「その何にでも、真面目で一生懸命で、努力して、そんな千鶴が・・・俺も・・・」



言える――



「好きだ・・・」

「――先輩・・・・ありがとうございます、私・・・」



斎藤から、真っ直ぐに視線を向けられて。

はっきり言葉にされれば、いくら千鶴でもわかる。

戸惑った瞳は二人の間を彷って定まらず、巫女装束に負けないくらい赤に色を染めあげて。



そんな千鶴の言葉に二人が注目する。

大好きな可愛い千鶴に、気持ちを伝えて…

どちらかを選ぶかも知れない。



どちらを――――



「・・本当は、バイトの時間まだ終わらないんです」

「「・・・・・・・・・?」」

「そうですよね、引き受けたことには責任持たないと・・・あの、沖田先輩すみません。送るって言ったのに・・・」

「「・・・・・・・・・・」」



脱力して、そこに倒れこむような、そんな感じが二人を襲う。

御神籤!!どうなってんだ!と思わないでもないけど、こうすれば結ばれる、とは書かれていないので御神籤に罪はない。



「斎藤先輩、沖田先輩お願いしてもよろしいでしょうか?」

「・・・ああ、わかった」

「それじゃあ…」



パタパタと身を飜していく千鶴の姿が見えなくなると…二人同時に座り込んだのだった。







「うう〜緊張した・・・・大丈夫だったかな・・・怒ったかな」



千鶴は籤を広げてもう一度目に通した。

「・・・誠実、だな、私には勿体ないくらい二人とも誠実な気持ち・・・」



あの二人から、どちらかを、と言われれば迷ってしまう――

けれど、あの二人以外の人に、迷うことはない。迷えない。

二人に対して確かな気持ちはあるけれど、今はまだ、その前の段階というか・・・

選んでいいような、そんな立場にないって思ってしまう。



「私自身がもっと自分に自信を持てるようになるまで・・・その努力が先」



自分の信じた道を進めば吉、信じて、努力しよう――









END











沖千斎は楽しいけど、もっと楽しい感じのが書きたい^^;

ちなみに、平助君の御神籤には…このまま残っていたらいいことないんだ!って思うような

ことが書かれていたんだと思います(汗)