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「ルル、大丈夫?」
「う〜…まだ痛い…」

突然轢むように痛くなったお腹。
授業半ばに寮に戻り横にはなってみたものの…治る傾向をちっとも見せない。
いつもの笑顔はどこへやら、苦悶に顔を歪めるルルに、アミィは心配そうに覗きこんで。

「・・・風邪かしら?熱はないみたいだけど」
「うん。今はお腹が痛いだけなんだけど…」

少し体が鈍い、というか意識がぼんやりするから、もしかすると夜にでも熱が出るかもしれない。

「ルル、薬のんだ?」
「飲んでないの。とりあえず休もうと思って…」
「そう、あの、あのね?」

何故か、アミィが困ったように苦笑いを浮かべる。

・・どうしたんだろう?

「これ、あの、アルバロさんから預かったの」
「・・・アルバロから?」

アミィの手には、何やら可愛らしい白い巾着。
何だろう?もしかして…心配してくれてお見舞いのもの?
あのアルバロが??

ちょっと、いや、かなり嬉しくて。
痛いお腹を押さえるだけだった手が、自然にそれを受け取ろうと伸びた。

受け取った巾着の中には…

「何だろう、ラムネ?」
「え?・・・ち、違うわルル。それお薬よ?」
「薬って・・こ、こんなにっ!?全部??」

ラムネかと思われた白い錠剤のようなもの。
まぎれもなく全部が薬のようだ。
どれをとっても苦いにおいがする…

「ええ、ルルが先に寮に戻ったでしょう?あの後…」

『これ、ルルちゃんにお見舞い。渡しておいてくれる?』

門の前でアミィのことを待ちかまえていたのか、アルバロがその巾着を差し出して。

『お腹痛いみたいだね…まあ多分拾い食いでもしたんだろうなとは思うけど…』
「ひ、拾い食いなんてしてないっ!」
「お、落ち着いてルル。きっとルルのその反応が聞きたくて言っているのよ」

・・・否定できない

『食中毒、風邪、何かの魔法薬にでもあたったのならこれ。魔法実験で属性拒否でも起こしたんならこれ…』

アミィの前で次々に薬の説明をするアルバロに、アミィは必死で説明を聞いていたけど…
まあ、無理だった。

『まあ、とにかくどれかは効果あると思うからって渡しておいて』


・・・・どれかは効果があるって…

ルルがじっとどの薬を飲もうかと巾着の中に目を落としてみる。
何か、明から様に怪しそうな色合いのものまであるけど…虹色のものまである。

「アルバロさん、早くあなたに治って欲しいのね」
「・・・・・えっ??」

アミィの言葉に、ルルはそんな馬鹿なと顔をあげた。

「だって、薬の説明している時は…見たこともないような顔だったから」

いつもの、うすら笑いではなくて。

そんなアミィの言葉に、ルルは少しだけ頬を染めて、そうかな、と小さく漏らした。
顔を見れば逃げられたりの方が多いけど、たまに交わすキスの時は、しっかりと捕まえられているような気分になる。

・・・私がいなくて、さみしい。とか思ってくれたり…ちょっとはあるの?

明日、聞いてみよう。
ひねくれ者の薬を飲んで、この体を治して・・

そう思い、ルルが選んだ薬は…



「おはようアルバロ」
「やあ、ルルちゃんおはよう。・・・その調子だと治ったみたいだね。どれを飲んだのかな?」

朝から、のんびりコーヒーを飲んでるアルバロに、ルルは笑顔で近づく。

「・・・虹色のやつ。」
「さすがだねえルルちゃん。わざわざあれを…」
「…私が選びそうって思ってわざとあんな色にしたんじゃないの?あの薬…飲んだ後甘かった」
「さあ?俺は調合はするけど、そんな後のことまで知ったことじゃないし」

はぐらかすように視線をずらして、再びコーヒーに口をつけるアルバロに、ぽつっとありがと、と伝えた。

向けられた視線は、特に何の色も込められてない。
どういたしまして、とか。治ってよかったよ。とか、そんな感情など一切ないような…だけど。

・・・いつもなら、もっとわかりにくいところにいて、私が探すの見て笑っているのに…

わかりやすい場所にいた。
目につきやすい場所でのんびりコーヒーなんて飲んで。

・・・・やっぱり、さみしかったのよね?

言えば、変な視線を返されそうな気がしたから、心の中で呟いて満足しておく。

「今日はしないの?鬼ごっこにかくれんぼ」
「・・・・別に、コーヒーが飲みたくて飲んでいるだけだ。おまえが来るとも限らなかったしな」
「そっか…じゃあ飲み終わるまで付き合ってあげる」
「・・・戻って来たとたん、傍に張り付くって?」

そんなこと言いながら、隣に座るのを止めようとしない。

「うん。今日は追わなくてもいいみたいだから…ゆっくり傍にいられるみたいだし」
「はいはい」
「今日は…授業終わったら美味しいケーキ食べたいなあ」
「・・・・昨日お腹痛いって早退した馬鹿は誰だったかな」

馬鹿にするような、そんな皮肉めいた視線に笑顔をつけて。
でもその後、あなたは必ず言ってくれるってわかってるから、期待を込めて見返した。

「いいよ。仕方ないから付き合うよ」


その言葉に、少しだけ、体を彼の方に寄せてみた。
アルバロの肩は私を拒まなくて。

私の好きな場所。
きっと、アルバロにとっても好きな場所。





END