70000hit御礼ラギルルSS




「虫除け」




「ルル、もう夕方だぞ、起きろ」

いつものように休日。少し話をして、りすさん達からの供物を食べたラギはお昼寝モード。
ラギが気持ちよさそうに寝てしまえば、ルルもおのずと眠くなってきて寝てしまう。
そして大抵起こされるのは…ルルの方だった。

「う~ん…おはよう、ラギ!…どうしたの?何か私また寝言言ってた?」

自分を見て、小さく笑いを零すラギに、そう問いかければ、いや、と答えが返ってきた。

「オレよりよく寝て、頭に寝癖までつけて、ぼーっとしてんじゃねーよ」

ピンとおでこを小突かれて、え、え?と頭を何となく触れば…確かに何だかぼわぼわなような…?

・・・・は、恥ずかしい!!

「ちょ、ちょっと待ってて!髪、結びなおすから!」
「おー別に焦んなくていーぞ」

ルルの傍らに、またゆっくり腰をおろして、楽しそうにこちらを見上げる。
そんなラギに、ルルも微笑み返しながら…いつもは高く、くくるだけの髪を上にまとめあげた。
おだんごにしたのである。(だってそうでもしないと…ぼわぼわが直らなかったんだもの!)

いつもと違うルルに、少しドキドキしていたラギの心など知らず、いつもと同じように手を繋いで帰ったのだけど…?

「あ、ルル。出かけていたの?」(ちなみにラギさん、ぱっと手を離しました)
「ユリウス!うん。お散歩してたの」
「へ~…あ、ルルその髪型よく似合ってる。うん。かわいいよ」
「ありがと「おい、ユリウス。てめーさっきからさり気にオレを無視すんな」

寮に戻れば…大体がこうなる。
ルルに話しかける者の多さったら…たまにうんざりするけど。
超鈍感のルルを放置することはできないラギだった。

「何故だ、何故君には出来て僕には出来ない・・・う~ん謎だ・・・」
「謎でも何でもありません。もういいですか?」

・・・・・・・また来た・・・・
胸の内で盛大に溜息を吐くラギとは別に、ルルはにっこりとノエルとエストに微笑んだ。

「二人とも、何してるの?」
「やあ、ルル!聞いてくれ!僕がずっと貸りたがっていた本。パルーのやつ僕を無視してエストに貸してしまったんだ…ったくどうしようもないだろう?」
「それは困ったわね、どうしてノエルだと駄目なのかしら?」
「そんなの決まってんだろー?ノエルは・・・「わ~!!わ~!!何か言ったかな?」

ますます賑やかになっていきそうな雰囲気に、エストはそっと抜け出そうと試みるも…・

「エスト、ずっと黙ったままで具合悪いの?」

こういう時、大抵ルルセンサーが反応して、エストは捕まる。

「・・・貸りてきた本を早く読みたいから、部屋に戻るだけです。もう、いいですか?」
「うん、具合が悪いんじゃないならいいの!・・・だけど、何でこっち見ないの?」

顔を覗きこむルルに、エストは思い切り顔を逸らした。

「エスト?「おい、ルル・・・そこはそっとしといてやれ」

ルルのこんな行動に、いつも心穏やかでいるということの難しさを実感しているラギが、同情的に声をかけた。
というより、早く解散して、ルルを女子寮に戻したい。このままだと面倒くさいやつらまで来そうな…

「ルルが可愛いから、照れてるんだよ、きっと」
「ユリウス!そそそういうことを平然と喋るな!」

後ろでギャイギャイ言っているのは放っておいて…
赤くなりながら。何だかんだとその場を動かないのも、放っておいて…

「ルル、さっさと部屋に戻れ。オレは腹減ったんだ」
「あ、はーい…「ラギ、その言い方はひどいデス」「うん。別れ際はもっと優しくしたらいいんじゃないかな?」

・・・・・・・・・・・・・来ちゃったよ・・・・・・・・・・・・

「ルル、その髪型、とってもかわいいデス」
「ありがとう、ビラール・・・でも、これ寝癖ごまかすためなの」

えへへっと恥ずかしそうに笑うルルに、アルバロがへえ、と楽しそうに目を細めた。

「ラギ君と二人でお散歩…それで寝癖ねえ…何してたのかな?」
「ばっ!!何って何だよ!!」「何って…お昼寝だけど?」

あっさり横で返事するルルを見ると、動揺する自分が馬鹿みたいに思える・・・

「お昼寝ねえ…あ、ルルちゃんここ、赤くなってるよ?」
「・・・・あ、本当だ・・・虫にでも刺されたの?ルル」
「ユリウス。こんな時期に…蚊なんている訳ないだろう?考えが単純だな」
「ノエル。蚊だと断定するあなたの方が単純かと・・・」
「虫は・・・赤い虫じゃないデスか?ルルの傍にいつもイル…」

ビラールの言葉に、アルバロは面白そうに。
ユリウスはえ?と目を瞬いて。
ノエルは口をぱくぱくさせて…
エストは赤くなって黙りこんでいる。

ルルは、というと・・・きょとんとしていた。
「赤い虫?それ何の虫・・・「だー!!!ルル!!もういい、聞くな、しゃべるな、部屋に戻れ」
「ラギ、そんなに慌てなくてモ、大丈夫デス。違うと、わかっテいますヨ?」
「まあ、人がつけた印とは見た目違うしね」

ビラールとアルバロ…この二人はこれだから嫌だ・・・

ラギのうらめしそうな目を避けて、ビラールはルルに香水の瓶らしきものを差し出した。

「今の時期でも虫にハ気をつけテ…コレを・・・」
「?これなあに?」
「ハーブから抽出した香りです。いい虫除けになりマスし、…虫除けのようなにおいもしまセン」
「へー…もらっとけよ、ルル。確かにあの独特のにおいがしねーし」

ひょいと顔を出して進めるラギに、ルルは小首を傾げた。

「・・・・いいの?」
「?いーだろ?ほしくねーのか?」

ラギがそう言うなら、と受け取ったルルは満面の笑顔で…

「これでラギと心おきなくお昼寝出来るわね!来週もしようね!」

と言って、約一名…というか一名を視線の嵐にあわせて、噴火寸前かと思われるくらい赤く染めたのだった。



そして約束後?の一週間後。

先週と変わらず、ルルとラギはぽかぽか日差しの下で心地よい眠りに浸って
変わったのは…ルルが身に繞う香りだけ。

いつもと同じように目が覚めて、ルルを見やると穏やかな寝顔。
時折むにゃむにゃ何か寝言を呟いているけれど。

そんな寝顔を優しい表情で見つめていたラギの表情が不意に曇る。
ハーブの香りのせいか、虫に刺された様子はないけれど…


「・・・・・ん?おはようラギ…どうしたの?何だか元気ない?」
「なんでもねー」
「あ、もしかしてお腹空いた?実はこっそりポケットにお菓子をね・・・」

ガサゴソとポケットを探り、小さい包みを取り出す。
包みを開ければ小さないろんなお菓子が入っていた。

「ほら!ラギと出かける時は必ず何か持つようにしているの!」
「・・・・くっ・・・いつもの間違いだろー?」
「え、ち、違うよ!もう!」

口を尖らせるルルとは反対に、ラギは笑顔になる。

「菓子のにおい…だったのか?」
「?何?何の事?」

ルルの言葉に、ラギが答えるには…?

「いや、いつもルルから何か甘においがするっつーか…」
「・・・・甘いにおい?」
「ああ、今日はそれがなくて…ハーブのにおいがプンプンにおってくるから・・・なんつーか…い、いや、別に…」

自分の発言を思い返して、照れくさくなったのかラギがしどろもどろになっていくのが余計に…
ルルには嬉しいもので。

「ねえ、ラギ。においはいつも同じだった?」
「?あーいつも…同じだな」
「それなら…」

ルルは掌にのるお菓子を見てふふっと笑った。
いつも違うお菓子を用意しているのだから、お菓子のにおいじゃないと思う。
恥ずかしがるラギには、お菓子のにおいということにしておこうかな?

「どっちが好き?いつものと、ハーブのと」
「そりゃ…」

いつもの、と素直に口に出すのもどうかと思い、顔を逸らしているけど…傍から見るとほとほとわかりやすい。

「明日から、つけないでおくね」

その言葉に、気まずそうに顔を赤らめて視線をどこか遠くに漂わせながら、ラギはゆっくり頷いたのであった。






END





ラギルル!!これ…続きをとっても書きたかった…
とってもしょうもないけど…どんなラギルルでもどんとこい!なお方は…下の方に…どうぞv

ワンド、オールでラギルル贔屓するのがとっても好きですv
こういうのを、もっと増やしていけたらいいなあと思ったり。
というか、全員出すと長くなるという罠。ラギルルっぷりがたらない気がする…(>_<)

予告の好き、嫌いのくだりは、ハーブの虫除けのことです。
そりゃラギさんはルルのにおいの方がいいよねえ♥(←)






これをオチにしたかった、という続き。



次の日の朝。
一緒に登校しようとルルを待つラギに、ルルの大きな声が嫌でも届いた。

ラギ!意識集中!!

皆がその声に何事かと振り向く。
ラギはと言うと、タタタッっと勢いよく駆けてくるルルに…嫌な予感が・・・

当たった。

ルルは勢いそのままラギに抱きついてきたのである。

「ば、バカか!くっ・・・!!は、離れろ・・・ヤバい!!」
「もう少しだけ!・・・ねえ、今日はいつもと同じでしょう?」

すりっと髪を揺らせてから、ラギから少しだけ離れた。
このくらいの位置なら、きっと変身しない。

「・・・あ、そーだな・・・甘いにおいがする」
「・・・でも、今はお菓子持ってないけど・・」

にこっと微笑んで、ラギを見上げるルルに。ルルの言葉に。
それがどういう意味かを考えて・・・途端に顔を真っ赤にして。

「好きなんだよね?ありがとう♥」

顔だけ近づけて、もう少しで唇が触れるんじゃないかと思う至近距離で・・・

「無理だ、チクショー!!」

ぼわんと変身してしまったラギに、抱きついていないのにどうして変身したかわからないルル。

遠巻きに見ていたいつものメンバーはうらやましいやら気の毒やらだったそうな…(でも助けてはくれなかった)









こんなオチでした<m(__)m>