『嘘吐き』



アルルSS





「今日は4月1日…嘘を吐いてもいい日なのよね」

身支度をしながらルルは一人呟いた。
頭の中にはいつもうまくやり込められてしまうアルバロが浮かぶ。

「たまには…驚かせたいな。何かないかなあ…」

う〜んと頭を捻れども、いい考えは浮かばない。
ルルはふうっと溜息をつくとそのまま部屋を飛び出したのだった。



「おはよう、アルバロ…珍しい…」
「ん、何が?」
「だって、待ち合わせの場所にちゃんといるっ!最近隠れるの好きでしょう?」

ああ、と顔を緩ませて…何だか今日は距離が近い…?

「大好きな君とお出かけするのに、そんな真似、俺はしないよ」
「・・・・・・・・・?」
「今日も可愛いね。そんな格好されると…帰すの、嫌になるなあ」
「・・・あ、頭でも打ったの??どうしたの?ネジが飛んでる!!」

言いながらどんどんせまる顔の距離。
楽しそうに口の端をあげるアルバロの表情を一瞬みたと思えば、すぐに唇に触れるもの。

「・・・こ、こんなところでっ!!人が、人が見てるかも・・」
「それなら、見せつけてやればいいよ。俺と君との仲の良さをね」
「・・・・・・・・・・・・・・」

どこかの王子様ルートの一場面のように、ルルに絡み合って、睦むのを楽しむ様子のアルバロに。
ルルは文字通り目が点になる。

「・・・そっか、夢かな。私また変な夢見てるんだ」
「夢?・・・こんな夢、たまに見るの?」
「えっと…アルバロが女子寮に忍び込んだりとか、そんな夢は見たことあるかも」
「へえ…つまり、そこまで俺に会いたいって思っているってことだよね、ルルちゃん」

そのまま、ルルの肩においていた腕を頬に固定させると、今度は長い、深いキス――


「で、でもここまで、そんなすごい夢は・・・み、見ない気がするの!」
「すごいかな?これくらいで慌てているようじゃ…次の愛情表現はまだ、期待できないのかな」

吐息が首筋にかかる。
そのまま、アルバロ唇が首をなぞるように。
降下していくキスは鎖骨辺りに到達した時、ルルがついに悲鳴をあげた。

「キャーーー!!!夢じゃないっ!!こんなの夢じゃなあ〜〜い!!」
「うん、夢じゃないね。気付かなくてもよかったんだけど」

このままいけるかなと思ったのにね、と笑うアルバロに、ルルはキッっと見返して。

「な、何がしたいの!変!いつもと違うし」
「・・・・・・・・」
「そ、そんな顔して笑われると、怖いから!!」
「怖いって…失礼だな」

ふうっと軽く息を吐いて、ようやく少しだけ離れたアルバロにルルはほっとする。
でも、何だか、さみしいって気もする…
ちらっと視線を変えれば、カレンダーが目に入って…そうだ!エイプリルフール!!

「ねえ、アルバロ。今日ね、夜、鏡を見ると怖〜いお化けが…」
「へえ、是非とも見てみたいね。忘れないように鏡見ないとね」

うっ…さらっと流された。じゃあ…

「今夜はハリケーン並みの暴風雨だって!!外出できないわね!」
「今日は君とずっと一緒にいるつもりだから、関係ないけどね」

うっ…全然動じない……え、ずっと!?な、何言って…!?

「ねえ、ルルちゃん。それってエイプリルフールのつもり?」
「・・・・・・・・・・・・・だ、だって何も思いつかないんだもの!!」

ふっと笑うアルバロに、また小馬鹿にされた気がして、口を尖らせれば、
その尖りを直すように、優しいキスをくれた。

「俺は、結構君のこと好きみたいだね」
「結構って何…結構って…」
「最近ようやく実感してきたかな…ルルちゃんとこうするの、好きだしね」
「―――ほ、本当に・・・」
「うん、――なんてね。今までの、全部嘘だけど」
「――え」

その時、正午の時を知らせる鐘が鳴り響いた。

「・・・あれ?期待した?エイプリルフールだったんだよね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「顔が面白いことになっているよ。残念。道のり遠そうだね」
「し、知らないっ!!お昼、お昼食べる!!」

もう、と怒っているのか、恥ずかしいのか、顔を真っ赤にして立ち上がるルルに、アルバロは顔色変えずに言葉を続ける。

「ルルちゃん知ってる?エイプリルフールって…嘘を吐いていいのは午前中だけなんだよね」
「・・・それも、嘘でしょう?」
「本当だよ。誰かに聞いてみたら?」

首を傾げるルルに、アルバロは楽しそうに顔をかざして、
先ほど何度も繰り返した、キスをもう一度。

「…ちなみに、俺は…一度しか嘘を吐いてないから」
「・・・・え?一度?・・・・・嘘〜!もうどれが嘘か本当かわからない!!」

ぎゅっと手を強く握って、怒ったようにアルバロを見上げるルルに、アルバロは今度は心の中で呟いた。

『全部嘘だけど』
これだけが――たったひとつの嘘だと言えば・・・
おまえはどんな顔を見せてくれる?






END








エイプリルフールネタで、真っ先に浮かんだ話がこれ。
アルルの甘いお話書きたかった…それだけです。
FDED後は、いっぱいキスしてるといいなあvという願いを込めまして。です!