「どうせならほのぼの夫婦!!」




「平助君」
「あ、千鶴!聞いてくれよ~オレ三日連続で…」

愚痴る平助の話をうん、大変だったね、と頷くと千鶴は他の三人が見守る前で平助の前で正座をして手を合わせる。

「おかえりなさい。平助君。お疲れ様でした。・・・・ご飯にしますか?それともお風呂にしますか?」
「・・・・・・・・・・・・・え?」

やっぱり、夫婦と言えばこの言葉でしょう!
ちょっと憧れていた言葉を口にして、なんだか気恥ずかしさにくすぐったい。
平助と、周りの三人もぽかんとする中、千鶴は更に言葉を続けた。

「疲れている平助君のために、今日一日私を嫁にしてください!・・・平助君の疲れが取れるように頑張ります!」
「え、ええええ!?オ、オレの嫁!?」

真っ赤になって慌てふためく平助を、ぽいっと部屋の隅に追いやるのは残り三人。

「千鶴、ちょっと状況がのみ込めないんだが…何で急にそんなことしようとするんだ?」
「というより、もちろん僕たちのもしてくれるんでしょう?まさか平助だけ、とかそんなことないよね?」
「・・・・・何故、平助を選ぶ?」

困惑しつつ、後ろに転がる平助を羨望の眼差しに嫉妬の色も加えて見やる三人に、千鶴は近藤に頼まれたということを口にした。

「・・・それで平助か?俺だって疲れてるぞ?」
「さっき、話を聞いていたら・・・平助君が一番お疲れの様だったので・・・それに原田さんは飲みに行くって・・・」
(・・・くっ聞かれていたのか・・・)

「千鶴、俺は・・・・」
「斎藤さんはいつでもきびきび動いて…比較的元気そうに見えたのですが・・・」
(違う・・・疲れていても動くように努めているだけなのに・・・損だ・・・)

「僕は?風邪気味でだるいのに・・・」
「近藤さんが疲れている者をっておっしゃったので…風邪は少し違うかなって・・・大丈夫です!看病なら山崎さんがしてくれると・・・」
(えええ!?山崎君なんで出て来るの!?・・・・やっぱり起きとこう・・・)

・・・・・・それにしても、と三人は思う。
(平助・・・・運のいい奴!!(涙))


「さ、平助君。疲れているでしょう?今日は休もうね」
「あ、ああ・・・わかった」
「どうする?ご飯?お風呂?」

(ご飯って千鶴が作ってくれるのかな…それならゆっくり食べたいし・・・)

「じゃあ…先風呂入って・・・それから千鶴、と一緒に飯食いたい・・・」
「うん!じゃあ支度するね!ご飯は何食べたい?」
「ちち、千鶴の作るものなら、オレなんでも嬉しいし!」
「平助君・・・嘘でも、嬉しいよ」

(なんだこの空気!!!)
取り残された三人はたまらない。

「オレは、風呂入る支度してくる」
「うん、じゃあお背中、お流しします」
「ありがと・・・・・・・・・・・・って、え・・・・・・?」

千鶴の言葉をゆっくり頭の中で反芻して、みるみる顔が赤くなる平助を余所に、
そしてみるみる顔を青ざめる三人を余所に、
千鶴は一人張り切っている。

「背中流して・・・足、だるいんだよね?私揉んであげる!足だけじゃなくて・・・頭とかも気持ちいいんだよ?」
「い、いや・・・千鶴っその・・・・」
「大丈夫!父様直伝だから・・気持ちいいよ?任せてね!!」

ドンッ!と胸を叩く千鶴に、言葉は詰まるけれど、でもこくっと頷いてしまった平助に、後ろからものすごい殺気が・・・・

「ほ~飯も千鶴のお手製か・・・よかったな~平助?(おまえ、俺の食事当番の時、まともなもん食えると思うなよ)」
「背中流してもらうの・・・よかったね、明日から・・・背後に気をつけた方がいいと思うよ?(あとで覚えときなよ)」
「・・・・疲れが取れるといいな、俺もたまに揉んでやろうか(・・・力の加減はするつもりはないが)」

すさまじい嫉妬の嵐にも、今は頭のネジが飛んで気にならない。
さ、行こう!と手を握られて、ドキドキしながらお風呂に向かう平助の足取りは、先ほどまでとは違いまるで軽い。
それからは、夢のような時間の始まりだった。


「・・・・・平助君、背中大きいんだね、広いし・・・男の子って感じだね」
「////////////そ、そうかな」
「うん!痛くない?」
「ぜ、全然!!」

「体、揉むの出てからでいい?」
「う、うん。千鶴大丈夫か?着物・・・濡れて・・・」
「大丈夫・・・・はい!おしまい、じゃあ先に出て、ご飯の支度してるね!」
「わ、わかった(いつか一緒に入りたいな…ってオレ何考えてんだ!?)」



「千鶴ちゃん、・・・平助のだけ作ったの?」
「はい!皆さんのは当番の方が作られて・・・・・」
「つ~か、よくそんな平助の好みばっかり知ってんな?」
「・・・・あ、さっきお風呂で聞いて・・・」
「風呂・・・・・・・・」
「斎藤さん!?どうしたんですか!?もしかして・・・・疲れてます??」
「!?・・・・・(ここで頷けば…・?)そ、そう「ううん。斎藤君は変な想像しただけ」

(総司・・・・・・貴様!)
(ふん、これ以上抜け駆け困るんだよね)

「千鶴、今度機会があったら俺にも作ってくれよ。俺の好みは・・・・」
「左之さん!!」「左之!!!」

お風呂から出てみればこんな光景が広がっている。
改めて、みな千鶴が好きなのだと実感する。
たった一日だけど、でも、今は・・・・・

「千鶴~うまそうなにおいがする!!」
「あっ平助君。これ食べてみて・・・・美味しい?」
「うん、うまい!!・・・・・あ、あのな?飯は・・・オレの部屋で食べたい・・・」
「・・・・・平助君の部屋?」

三人の唖然とした表情が目の端に見えるけど、気にしない。
今日は、今日だけは・・・千鶴は俺の嫁さんだし!!

「うん、いいよ・・・二人で食べよう?じゃあ、その後体ほぐしてあげる」
「あ・・・・ありがとな」

(丸っきり新婚家庭見てるみたいだ・・・・・・くそっ!!!!)

三人の痛いくらいの視線は今は考えない。

自然に手を繋ぎあって、見つめあう二人はなんだか一日限りの夫婦には見えず。
寄り添って食事を部屋に運ぶ姿は仲睦まじく・・・・

それが将来、日常のことになるのは・・・まだ誰にもわかっていないお話♥




END