綾様リクエスト




薄桜鬼:沖千SS

※綾様のみお持ち帰り可とさせて頂きます。



『ハッピーエンド』
童話【赤ずきん】のパロディです。




むかしむかし、あるところに、とても可愛らしい女の子がおりました。
可愛らしい女の子の名前は千鶴。
千鶴を溺愛していたおばあさん…いえ、おじさんの土方は、千鶴に似合うだろうと、その姿に似合わず丁寧に赤い頭巾を縫いあげました。

赤いビロード生地で作られたその頭巾は、千鶴に大層似合いました。
もともと可愛い娘でありましたが、その頭巾のおかげで可愛さ倍!
近所でますます有名になってしまい、「赤ずきんちゃん」と呼ばれるようになりました。
まあ、千鶴に近しい者は、だからこそ名前で、とばかりに…「赤ずきんちゃん」とは呼びませんでしたが。

ある日のこと。
庭で花壇を整えていた千鶴に「千鶴」と声がかかりました。
声をかけたのは、千鶴を目に入れても痛くないほど可愛がり、大切に大切に育てていた、お兄さんの左之。

「はい、何ですか?」
「…先ほど知らせが来たんだが…土方さんが倒れたらしいぜ」
「えっ!?土方さんが…それで具合は…?」

いつも可愛がってくれてるおじさんが倒れたと知り、千鶴はいてもたってもいられません。
不安な面持ちで左之の言葉を待つ千鶴に、左之はどうしたものか、と悩んでいるようだった。

「あの、お兄ちゃん?」
「・・いや、何でも…千鶴を見舞いによこして欲しい。って書いてはあるんだがな?」
「お見舞い?はい、もちろん行きます!」

任せて!と張り切る千鶴に、だけどなあ、と左之は困ったように視線を窓の外に向けた。

「おまえ一人で行かす訳にゃいかねえよな。あの家遠いしよ…途中で…狼とか絶対出るしな」
「狼?…私、見たことないけど…大丈夫。お兄ちゃんはお仕事があるし…私が!」
「…手紙には必ず護衛をつけて寄こせ、と書いてある。斎藤と平助はこんな時にどこへ行ったのか見当たらねえしよ…」

斎藤と平助は、千鶴の家の隣に住む幼馴染です。
兄妹同然にずっと仲良く一緒に遊んで大きくなりました。
もちろん、千鶴のことをこっそり好いているようですが…

「あ、斎藤さんと平助君なら・・森の中に入って行くのを見たから途中で会えるんじゃないかな…その時一緒にって頼めば…」

大丈夫だよ、とすっかり行く気満々で、土方に貰った赤ずきんをかぶる千鶴に、左之はしゃあねえな…とぽんと、頭巾に手を乗せた。

「いいか、一人で行こうとするなよ?必ずどっちか見つけてから…それから森の奥に行けよ?」
「はい!」
「一人で…んな可愛い格好してたら、間違いなく狼来るからな?」
「…(狼さんって…怖いものなんだよね…)はいっ!」

力強く返事をする千鶴に、じゃあこれを、と左之は籐のかごを差し出した。

「お兄ちゃん、これは…?」
「ケーキと葡萄酒。あの人ああ見えて甘いもの好きだと思うんだよな…」
「…でも土方さんはお酒があんまり…」

大丈夫なの?と覗うような千鶴の視線に、左之はにっと笑を浮かべた。

「いいんだよ、それ飲ませて、酔わせて、さっさと帰って来い。土方さんだって立派な狼になりそうだしなあ…」
「…?狼?土方さんは狼なの!?」
「い、いや何でもねえ…よし、気にせず行って来い!!」

腑に落ちない様子の千鶴を無理やり外に出して、左之は見送ったのだった。


「ええと、まず…斎藤さんか平助君を探さないと…」

森の中は昼間なのに薄暗くて、視界も悪かった。
いつもは誰かと一緒で気にならなかったけど、確かに一人だと心細いような気になってくる。
獣の遠吠えが聞こえたような気がして、動きを止めた千鶴の耳に、聞き慣れた歌声が入ってくる。

「~♪~♪…て千鶴っ!?何やってんだよ!一人でそんな可愛い格好してさ…危ねえよ、この辺りあいつの縄張りだし!」
「平助君!よかった…あのね…」

心配そうに駆け寄って来てくれた平助に、千鶴は一安心。
土方の許へ向かうことを話し、一緒について来てくれないかな、とお願いすれば。

・・・こ、これって二人きり!!オレにもチャンス到来!!

と心の中でガッツポーズを取りながら、平助は勢いよくブンブン首を振って頷いた。
よかった、これで大丈夫。と千鶴と平助は歩き出したのだけど。

その様子を、森の深淵のような緑を光らせた瞳で、じっと覗っていたものがいた。

「ふうん・・・護衛は平助一人っと…甘い甘い…待っててね千鶴ちゃん」

千鶴を一人にするべく、その者は行動を起こしたのだった。


「ところで、平助君。何してたの?」
「ん?あ~新八っつぁんに頼まれてな?きのこを採りに…人にはんなこと頼んでおいて自分は呑みに行ってるんだぜ?信じらんねーよな…」
「そ、そうなの…それ採ったきのこ?」
「おう!…でもまだまだ全然足りなくてさ~・・」

しょんぼり、と肩を落とす平助に、お見舞いに付き合わせていいのだろうか?千鶴がそう思い口に出そうとした時。

バーン!!

猟銃の銃声だろうか。
鼓膜を破るようなその音に、二人は動きを止める。

「・・・誰だ、こんな森で…一君、な訳ねえし…ちょっと見て来る!千鶴ここで、待ってろよ?いいな」
「う、うん!」

平助が森の奥に走り去った後、千鶴はその場に座り込んで辺りを見渡した。

・・・きのこ、どこかにないかなあ…

「何を探してるの?」
「あ、きのこを…って、え?」

不意に頭上からかけられた言葉に、千鶴が慌てて顔をあげれば。
千鶴を覗きこむようにすぐ近くに、端正な顔立ちをした男の人。弧を描いた口元が優しそうな雰囲気に見える。
翡翠の瞳が細められて、微笑みを向けられた。

・・・誰だろう?この人…

「はじめまして…じゃないんだよ?赤ずきんちゃん」
「私を知っているんですか?あなたは…誰?」
「・・覚えてないか・・・仕方ないよね。小さい頃に会ったっきりだし・・・僕は総司」
「・・・総司さん、こんにちは。・・覚えてなくてごめんなさい」

傷付けてしまっただろうか、と千鶴が申し訳なさそうに頭を下げる。

「ん?いや、い~よ。それより、きのこを探してるの?でもその籠はもういっぱい入っているみたいだけど?」
「あ、これは中身が違って…土方さん・・おじさんのお見舞いで。でも一緒に行こうとしてる平助君がきのこ探しているから・・・」
「…なるほどね…お見舞いってその人、病気?…ふうん」

・・・何故だろう、微笑みは変わらないのに、捕食者が獲物を捕えたようなそんな視線に変わったような…

「・・あの、総司さんは何をしていらっしゃるんですか?」
「ん?僕?僕はね…ずっと欲しかったものを手に入れるために・・・ちょっとね?」
「そうなんですか。あの、お手伝い出来る事ありますか?」

平助が帰るまでにはまだ時間があるだろう。
だから、総司のお手伝いを出来れば、と千鶴は思ったのだが…

「あ~いいよ。君は土方さんのお見舞いがあるんだよね?それ優先して…あ、きのこならあの木の奥をずっと真っ直ぐ行ったところにあるよ。
それじゃあ…またね?」
「あ、ありがとうございます!総司さん・・」

親切に教えてくれた総司に、千鶴が思わずぺこっと頭を下げる。

去ろうとしていた総司は、その足を踏みとどめて、暫し千鶴をじっと見つめた。

「・・・あの?」
「ね、昔・・会ったことがあるって言ってたでしょう?」
「はい」
「その時してた…御礼の仕方でして欲しいな、いい?」

そう言われても、本当にそんな記憶はない。
けれど、忘れていたことさえ申し訳ない千鶴は、少しでもその願いに応えたい、とばかりに頷いてしまった。
ここにもし、左之や土方、斎藤に平助がいたら…すぐその背中に隠しただろう。

「じゃあ、御礼貰おうかな」

言葉と同時に、その薄茶の柔らかい髪が視界を揺らして、優しく千鶴の髪を撫でる。
口唇に愛しく触れるものがある。
その前に、目に焼き付いた総司の微笑みが、頭に浮かんだまま――

触れた唇は離れる寸前に、味見でもするように、千鶴の唇を猫のようにぺろっと舐めた。

「ごちそうさま」

真っ赤になって、何も言えない千鶴に、口角をあげる総司は悪戯っ子のような無邪気な表情。
千鶴の返事を待たずに、手を振りながら去って行く総司の背中は、何だかとても楽しそうに見えた。

総司の行先が一直線に土方の家に向かっていたような気もしないでもないけど…まあ、考え過ぎだろう。

頭の中が大混乱の千鶴の許へ、ほどなくして戻って来た平助は、斎藤と一緒だった。

「千鶴っ!!大丈夫だったか!?」
「ど、どうしたの・・平助君。やっぱり何か・・?」

平助の慌てぶりに、千鶴も顔を引き締めて心配する。
それに答えたのは斎藤だった。

「・・狼が出た。よりにもよって千鶴が森の中にいたとはな・・・大丈夫か?」
「う、うん・・・それで狼さんは・・・」

刀を構えたままの斎藤は、不機嫌そうだった。
ということはまだ捕まえていないってことかな…ん?刀?

そうです。斎藤さんは「俺は銃は使わん」と、刀で狩りをするのです。
勇ましい人なのですが。
それならさっきの銃声は・・?

「狼はでかい図体の割に素早い。神出鬼没でな…まだ…捕えていない、すまない千鶴」
「い、いいんですよ…でも、さっきの銃声は…?」
「ああ、あれな?狼がわざと暴発させたんじゃないかって…壊れたのが落ちてたし…何の為だろうな?」
「さあ…狼の考えることなど、俺はわからん。とにかくもう少し探すことにしよう・・平助、千鶴を頼むぞ」
「了解!」

チャキっと刀を納めてまた森の中に入る斎藤を、千鶴は心配そうに見つめる。

「大丈夫かな…狼さんってそんなに危険なの?」
「ん?あ~…千鶴は覚えてないか…そーだよな、オレらには別にあれだけど、千鶴にはすっごく危険なやつだから!!
オレから離れんなよ?」
「・・うん、・・・あ、平助君!あのね、きのこ…あの木の奥をずっと真っ直ぐ行ったところにあるって…」
「マジ!?…?でもさ千鶴、何でんなこと知ってんの?」

さっき、総司さんが教えてくれて…と言えばよかったのだろうけど。
別れ間際のことを思い出して、途端にアップアップになって頭が回らない。

「え、え~~と…知ってたの!思い出したの!」
「そっか?ん~でも…土方さんの見舞いが先だしな」
「…あ、でももうすぐだからいいよ?」

私の為に、永倉さんに怒られては可哀想だ、と千鶴が気を遣ったのだが…

「いや、…あいつ…狼出たみてえだし…家までは一緒に行く!んで、千鶴送り届けたら…また戻るよ。
あ、迎えも行くからちゃんと待ってろよ?」
「・・うんっ!ありがとう、平助君……」
「・・ど、どうした?顔が赤いぞ??」

まさか、『ありがとう』を言った途端、また思い出して赤くなったとは言えず、千鶴は何でもないっと首を振るしか出来なかった。


一方、千鶴と別れた総司さんは。
皆さまの予想通り、土方さんの家に来ておりました。

「いい様ですね~土方さん」
「くそっ総司てめえ~!!何考えてやがる!!」
「僕の考える事なんて…一つしかないですよ、昔からね?もうすぐ来ると思いますよ?赤ずきんちゃん」
「っ!?…ちっ…」

今すぐ、総司を追い出したいが…体が思うようには動かない状態で。
というか、頭も朦朧としていて、今にも目を瞑ってしまいそうな土方。
風邪の症状はここまでひどくはない。何故こうなっているのか…それは…

「相変わらずお酒弱いんですね…・水と入れ替えたお酒吞んだ位で…」
「うるせえ!うっ目が…回る…」
「ちなみに、左之さんも同じこと考えてたみたいですよ?千鶴ちゃんに葡萄酒持たせてたし…」
「…ど、どいつもこいつもっ!!」

設定上離れた家に暮らさなきゃいけない自分が、こんな時くらい千鶴を頼ったっていいじゃねえか!と…
土方は心の中で泣いてみた。

「それで、土方さんちょっと邪魔なんですよね~…で、これなあんだ?」
「!?そ、総司てめえ!!…だからっ!おまえは嫌なんだよ!!返せ!!」

総司さんが手にしたものは、土方さんがこっそりしたためていた発句集でした。
まあ、大人しく返す筈もなく…

「じゃあ、こうします」

思い切り、窓の外遠くへ投げてしまった・・・

「鬼かっ!!誰かに見られたらどうすんだよ!!…か、体が…動かな…くっだが、あれだけは…」

千鶴が来る前に何とか…と土方は体をふらふらさせながら、外に俳句集を探しに行ったのでした。


「んじゃな、千鶴。また後でな?」
「うん、送ってくれてありがとう平助君!」

ひらひら手を振りあって、千鶴が土方が待ちくたびれているだろうと玄関のドアに向かえば…

・・・開いてる?

「…土方さん?千鶴です。遅くなって…あの、ドア、開いてますけど…」

部屋の中に入れば、いつもはしない酒の匂いが充満しているような気がする。
お酒は吞まない筈なのに…どうして?

「土方さん?こんにちは…寝てるのかな?」

ベッドの方に歩み寄れば、何故か髪がいつもと違う。
顔は隠されているけど…

途端にバっと布団の中から手が伸びて、千鶴はいつの間にか真っ暗な布団の中へ・・

「!?ひ、土方さんっ!!あのっ!!あのっ!!」
「土方さんじゃないよ、僕、もう忘れた?」

…暗い中で響く声は…さっきの…

「…総司、さん?ど、どうしてここに…」
「ん?土方さんとは知り合いだからね…さっき用が出来たみたいで出かけたよ」
「え・・風邪大丈夫なんでしょうか?」
「さあ、大丈夫じゃない?」

声だけが、お互いを知らせる手段のように。
何も見えない。
どんな表情で喋っているのだろう?
暗いのに、翡翠の瞳だけは光って見えるような気がするのは…

「総司さんの瞳は、きれいですね…光ってる」
「…君をよく見えるようにね?ずっと傍で見たかった、見たかったよ千鶴ちゃん――」

最後の名前だけは、切ない響きが込められていたような気がして。
恥ずかしいから、と言って、抜け出してはいけないような気がした・・・

「あ、あの…私あんまり注意したことないんですけど、男の人の手って大きいですね…」
「大きくないと、好きな子を守れないし、抱き締めることもできないから・・・僕の手は、君を抱きしめる為にある――」

ぎゅっと抱きしめられてしまえば、すぐ近くに感じる吐息を意識してしまい…

「そそ、総司さんの唇は猫みたいでかわいいですよね!う、羨ましいっていうか…」
「猫みたいに笑って、君の唇を誘ってるのかもよ?…ね、いい?」

いいも悪いも、返事をする前に重なる唇が。
不思議とちっとも嫌じゃなくて…
こんなことしてる場合じゃないのにって、自分を必死に押しとどめようとする気持ちを流していってしまう。

どれほどの時が経ったのだろう?
軽く触れ合わせたまま、総司の呟く声が、千鶴の唇を撫でいくように。
指先で、溢れた愛しさを伝えるように、千鶴に触れながら――

「昔から、みんなが君を好きで」
「だから・・・僕が君とこうして…キスしているのを見て、みんなが怒ったんだよね、狼呼ばわりされて」

ぽつぽつ呟く言葉に、狼、という単語が出る。
皆が危険だと言っていた狼は、では…

「君に近づかないように、みんなで協力するんだよ。だから…こうして君に会うのに…あんなに時間がかかって…」

どうして、私は、忘れているのだろう?

「あの時、君はまだ小さくて…離れさせられることになった時、わからないまま、みんなにそれでいいって頷いてしまってさ…だけど、今は?」
「今は…僕といたい、と…言ってくれるよね、千鶴ちゃん――」

恋情に満ちた甘く切ない響きが、胸を打つ――

「…大事なこと、忘れてて…すみません、総司さん…総司さんと、いたいです」
「―うん、いいよ。これからは二人だしね」

千鶴の言葉に、もとのような声に戻って、猫のようなキスを一つ落として。

「よし、じゃあ行こう。…そろそろうるさいのが…」
「?うるさいの??」

千鶴を抱えあげて、愛しそうに抱きしめながら、そのまま運ぼうとする総司に、千鶴はえ?え?と状況に流されつつある状態だったのだが。

「千鶴は置いていけ。…総司、貴様こんなことをして…?土方さんはどうした?」

ドアの前には妙な気配をかぎ取ったのか、斎藤が刀を構えて立っていた。
息を整えつつ、肩を揺らしているから、走って来たのだろう。

「土方さん?ああ、発句集をね…豊玉発句集っていうの。あれなくしたみたいで探してるよ?」
「・・・・・・・おまえの仕業だな」

問答無用、とばかりに刀を構える斎藤に、千鶴が慌てて声をかける。

「ま、待ってください!斎藤さん…総司さんは別に何も…」

し、してないことはないけど…わ、私だって同意の上だし…と心の中で付け足して。

「…千鶴、総司のことを思い出したのか?可哀想に…」
「…?可哀想…?」

何故?総司さんが可哀想ならともかく…
千鶴がきょとんとした顔を向けていると、斎藤は辛そうに千鶴に視線を向けた。

「千鶴が幼いころ、口八丁手八丁でおまえを手なずけて…おまえをからかって苛めては喜んでいただろう?」
「・・・・・・・・・・・・」
「おまえが泣くのを見て、ケラケラ笑っていた男だ。それを愛情表現とのたまうのだから・・・おまえには、たまったものじゃなかっただろうな」
「・・・・・・・・あの・・・」

総司さん?と千鶴が総司に目を向ければ、うん?と楽しそうに愛らしい目が向けられる。
ちっとも困っていないし、うろたえていないその瞳は、斎藤の言うことが事実だ、と述べているようだった…

「そのくせ、執着心は人一倍強くて、おまえが他の…たとえば俺などに懐くと怒ってはまた泣かせて…」

可哀想な千鶴、早くこちらへ、とばかりに、斎藤が千鶴に視線を向ける。

「よほど、怖かったのだろう。総司と引き離したら、おまえは総司のことを言わなくなった…いつの間にか、その記憶すら封じたようだしな」
「ちょっと、黙って聞いてれば…言っておくけど、キスは千鶴ちゃんからしてくれたんだよ?」
「…だから、口八丁手八丁だろう?おまえがそう仕向けたんだ」
「僕のことを忘れたのは、僕の事が好きで、会えないのが辛かったからだよ」
「…随分、総司に都合のいい解釈だな」

狼と猟師…総司と斎藤が千鶴を巡って闘気を出す。
そんな中…千鶴を迎えに来た平助到着。

「千鶴~って…・あ、一君もいたんだって…!?そ、総司!!何して…」
「…ああもう、うるさいな!千鶴ちゃんは僕といたいって、さっきそう言ったんだよ。そこ通してくれない?…無理なら力ずくで行くけど?」

ふん、と浮かべた笑は、とても怖いものでした。
狼の本領発揮?
そんな総司の言葉に、斎藤と平助が動揺します。

「なっ…千鶴、んなこと言ったの?マジ!?」
「…信じるな、平助…また言わされているのだろう」

二人の声は、少し弱弱しいのはきっと、総司から離れようとしない千鶴の姿で何となくわかっているからでしょう。

「二人とも、聞いて…昔のことは…正直、よくわからないけど…でも、昔嫌いだったのなら、会った時にもっと…拒否反応が出ると思うんです」
「・・・千鶴、それでは…今、おまえは…」
「総司さんが好きです。また会えて、まだ時間は短いけど・・そんなの関係ない―― 一緒に、いたいです」

千鶴の言葉が一番。
千鶴が決めたことなら、皆が渋々手を引きます。が・・・・

「こ、こんなのってあり!?これ、赤ずきんだろ?何で狼とさ~…」
「それを言うなら、猟師の俺の方が…」

なかなか諦めきれないようです。
もうすぐ戻ってくる土方さんも然り。家で待つ左之さんも然りでしょう。

そんな二人は置いといて、総司は千鶴が言ってくれたことが嬉しくて、嬉しすぎて、つい高い高いをするように千鶴を抱えあげた後、
そのまま胸の中に閉じ込めて抱きしめて。
笑顔が止まらない――

「狼は…赤ずきんがかわいくてかわいくて、食べちゃいたいんだけど…いいのかな?」
「食べるのは困りますっ!!一緒にいてくださいって!!」
「うん、食べるってその食べるじゃないけど…ま、いいか…千鶴ちゃん…ずっと一緒にいようね」
「はい、総司さん――」

見つめ合う二人の甘い空気が、この後瀕死で戻って来た土方に壊されて。
事情を知った赤ずきんに、狼が怒られてへこんでしまって立場逆転。

狼は赤ずきんには適わないのです。
それでも幸せな二人に訪れたものは、間違いなくハッピーエンド――









END








綾様

このたびはリクエストありがとうございました!!
童話パロディ…初だったので大丈夫かな?と思ったんですが…
私はとっても楽しく書かせて頂きました!
オールでギャグも、沖千で甘も!ということで、ちょっとボリュームありますけど…
楽しく、読んで頂けたら嬉しいですv

童話は何にしようか悩んだんですが、
メールで書かれていたタイトルから選ぶのが無難かなあと…
一番書きやすかった赤ずきんにしてみました!
想像の配役と違うかもしれませんが…^^;

こんなものでも受け取ってもらえると嬉しいです!