アリアン様リクエスト




ワンドオブフォーチュン:ラギルルSS
※アリアン様のみ、お持ち帰り可とさせて頂きます。




『Be beside of me』




「という訳なんだ…参るよ。後でご機嫌とらなきゃなあ…はあ…」
「用があるなら仕方ねーのにな…おまえも大変だな」

午前の授業も終わり、いつもならルルが教室に迎えに来るのを待つ時間。
だが、今日は…先ほどの授業で提出する筈だったレポートが出来ていないとかで…残らされている。
比較的話すことの多い目の前の友人も同じ理由で残っている。
こいつとは、最近出来たお互いの彼女の話題が増えた。

・・・もちろん、お、オレの彼女はルルで、あいつの話もよくする。

「そうなんだ…もっと相手しろとか…私のことは二の次なの?とか…私のことを不安にさせないでだの…」
「あ~…」

少し前に、似たようなことでルルと揉めた。
…けど、解決した。

「…?ラギ、何で君が赤くなるんだ?」
「い、いやっ!何でもねー」

まさか、ルルとの初めての・・を思い出していましたとは言える訳がない。

「まあ、それだけ俺を想ってくれてるってことだから、仕方がないか!よし、じゃあさっさと課題を終わらせて…」
「何だ、結局嬉しいんじゃねーか」

惚気かよ、と軽く机をこずき、友人の邪魔をしていると…


「ラ~ギ」

ひょこっとルルが教室にまでやってきて、顔だけを覗かせる。
ルルが来た途端、顔を少し引き締める自分を見て、友人がにやにやこっちを見てる。

・・・何か文句あんのか!

「ご飯食べに…それ…レポート?」
「おー…悪い、一緒に食えそーにねーんだ。ったくめんどーだな」
「そっか…わかった。じゃあ私先に行くね。レポート頑張って!」

ルル自身も似たようなことが多いためか、友人の彼女とは違いあっさり納得して、笑顔を向けた後・・そのままルルが教室を出ていった。
その姿を見届けた後、友人がぽつっと呟いた。

「何か、えらくあっさりしてるんだな~さみしい、とか・・ないのかなあ?」
「・・別に・・メシを一緒に食えねーってだけだろ」

それだけ、ルルがオレの気持ちを・・ちゃんとわかってくれて。
今は前のような不安な状態じゃないってことだ。
それはいーことだ。・・・そーだよな?

「でもさあ、彼女の周りって人が集まるだろ?昼とか放っておくの、心配じゃないのか?」
「はー?心配?・・・・馬鹿バカしー…んなことよりさっさと終わらせてメシだ!急げよ!」
「いっ!?蹴ることないだろう!?…まったく…」
「何か言ったか?燃やすぞテメー!」

頭をかきむしりながら、資料や文献とにらめっこする。
大体、オレは…魔法を習いに来た訳でもねーのになんでこんなこと…

ブツブツ思いながらペンを走らせているつもりなのに、いつの間にか止まっている。

…確かに前は…ちょっと離れるだけでもさみしいって表情見せて…
会えた時にはその分嬉しそうな顔して…
だから、傍にいると色々…問題で、苦労してた訳なんだが…

資料をペラペラめくるけれど、内容は全く頭に入ってこない。

…最近は…少し…あっさりしてる気も…
抱きしめて欲しーとか言ってきて、こいつ何言ってんだ!ってなったけど、何とかなったあれ以来、全然言わなくなったな。
むしろ・・あと少しくらい近づいても大丈夫なんじゃ?ってくらいの距離にいることが多いよーな…

ペンはいつの間にか、くるくる手で回されている。もはやその用途を離れている。

何だよ、そんな…いきなり変わるもんか?
今までずっと傍にひっつこーとしてきてたってのに…

「ってこれじゃオレがまるで今の状態を不満に思ってるみたいじゃねーか!!」
「・・・・・・・・・へ?」
「・・・・・・・・・あ、・・・」
「・・ラギ、とりあえず君は先に食堂へ行った方がいいと思うよ・・・ここにいても進みそうにないしね」

机の上のレポートには、ミミズがのたまわっているような、わけのわからない文字でもない線がいっぱい書かれている。
うるせー!とそのレポートをひったくりながらも、ラギはルルを追いかけたのだった。



「今日のオムライスはおいしいっ!!いつものデミグラスのソースも好きだけど…こんなクリームソースもおいしいわ!」
「ルルは本当においしそうに食べマスね。見ているといつもより、おいしく感じマス」
「だって本当においしいんだものっ!・・だから・・食べなきゃダメよ!!エスト!」

ルルが忘れてないんだからね!とばかりに隣のエストに視線を向けると、エストは無理です、と小さく呟きながらサラダを口にしている。
ちなみに、ルルの真正面にはビラール、その両隣りにユリウスとノエル。そしてルルの隣にはエストとアルバロが座っている。

どうしてこうなったかは…簡単に説明すると。

ラギがいなくて一人のルルを見つけた殿下がまず声をかけて…
また喧嘩でもしたのかと、心配そうに声をかけてきたノエル。
何か面白そうだと、近づいてきたのがアルバロで。
ユリウスにはラギのことでいろいろ話聞きたいっと目をキラキラさせられ…
逃げようとしていたエストは、ルルがせっかくだからみんなで、と捕まえたのだった。

ここ最近はラギと二人で食べる事が多かったから(皆あてられるから、という理由で傍には来なかった)、こんな風に皆で食べるのもたまにはいいな。
そんな呑気に、恋人がルルの様子がちょっと物足りなくて…こちらに向かって来ていることなどルルは知らず――
にこにこ笑顔で、おかずを口に運んでいた。

「いいなあルルは…ラギの成体を見ているんだよね?俺も見てみたいけど…そんなに簡単に見せるものでもないっていうのはわかるし…
ああっでもあんな威厳に満ちた・・鏡の魔獣まで黙らせるあのオーラは、きっと比較にならないくらいまだ上がるんだろうな。それって…」
「ユリウス!!止めるんだ。貴様のその無限の思考論は一人の時に存分にしてくれ。マナー違反にも程があるっ!!」
「まあまあノエルくん。ユリウスくんにそんなこと言うのは・・それこそ今更だと思わない?…っと…」

みんなの会話を聞きながら、ルルが横でくすくす笑っていたのだが…
アルバロと、ビラールは食堂入り口に緋色の頭を見つけた。
見るからに唖然としている様が…面白い―
二人が同時に浮かべた笑はきっと、同じ類いのものだろう・・・



でもさあ、彼女の周りって人が集まるだろ?』

・・・・・・・ものの見事に集まってんな…つか、何でいつものが全員いんだよ!

二人で食べることが多くなった。
自然、あいつらも…空気を読んだのか(奇跡的?)、二人の時にはそんなに…なのに…

オレがいなくなった途端、何でこーなる?
それ、おかしくねーか?いや、おかしーだろ!!つーかルル!!てめーも嬉しそうにしてんじゃねー!!

『ラギは私といる時より、友達といる時の方が笑顔で…』

そんなことを言われた。けど、言い返したい。
何だその笑顔は…そりゃさっき見せてくれたのも笑顔だったけど、比較にならねーほど嬉しそうっつーか楽しそうっつーか…

…何でオレは、さっさとあそこに行かない。



「ふふっ気付きまシタと…合図を送るべきでショウか?」
「俺としては…このまま放っておくのが楽しいけど…お姫様が何と言うかな?」
「?二人とも何を言っているの?」

ルルがスプーンを咥えたまま、首を傾げる。
アルバロもビラールもラギの方に視線を向けていないので、ルルにはまだわかっていない。

「…はあ、やっぱり何も起きずにお開き。にはならないんですね…」
「えっエストそれってどういう意味?何かあるの?何か…あっこの感じは…」
「・・・・・・・・・こ、この間のルルと全く一緒の顔だっ!!」

エストが事情を察知したのか。
ことさらサラダを重々しく口に運んでは溜息を吐いて。
そんなエストにユリウスは目をパチパチさせて周囲の気配を覗えば…探し求めた覇気を感じたような…
そして嫌な予感のノエルは予感的中。この間の「ラギ女の子に囲まれる事件」のルルと…全く同じ顔した…

「あっラギ!レポート終わったの?」
「こんなに早く終わるかっ!!嫌みか!!」

こんな状態でもルルはいつものように笑顔で。
楽しそうに様子を覗うもの数名。何かに期待するもの。煩わしそうにするもの。逃げようとするもの。それぞれの反応がラギを迎えた。

「ラギくん、レポート大変だね。ルルちゃんは俺達が絡まれないように見張っててあげるから、心配いらないよ」
「てめーが一番信用出来るかっ!!」
「大丈夫大丈夫。カリカリしないデ…」
「てめー・・・楽しんでんな?」

ビラールの浮かべた笑顔に気力が萎えて、肩を落とすラギに、エストが無言で立ち上がりどうぞ、と席を譲ろうとする。

「僕はもういいですから…それではルル。言っても無駄だとは思いますが、あまり大声で呼び止めるのは止めてください」
「だってエストそうしないと逃げるし…」
「あっ俺も…せっかくラギが来たのに惜しいけど…図書館行きたいし…じゃあね、ルル」
「う、うんっまたね、ユリウス」
「あ~僕もそろそろ…言っておくが、僕は二人のことを心配していただけであって!故意はないからな!?」
「え?ど、どうしたの?ノエルまだ…」

次々に席を立つ面々に、ラギは何だか自分が来てはいけなかったのかのような…居辛いような気持ちになる。
まあ、それでものんびり居座る面々もいるのだけど…

「ラギ、今日のご飯美味しいよ!ラギは肉が足りないって言いそうだけど…」
「おー…プーペに今頼んでる」
「ラギ?不機嫌が顔に出ていますよ?まだまだデスね」
「不機嫌?ラギ不機嫌なの?」

どうして?と顔を近づけてくるルルに、急に近寄るな!と慌てて離れて…しまった!と思った。
またキツイ言い方をして…落ち込んだりしたら…

「あ、ごめんね。それでどうしたの?」

普通に話を続けるルルに、また素っ気なさを感じて…ちょっと違和感。
そんなラギの戸惑いなど、跳ね飛ばしてアルバロの楽しそうな声が響く。

「まあ、いい気はしないだろうね。自分のいない間に…かわいい恋人は男どもに囲まれて楽しそうってことだし?」
「アルバロっ!てめー!!」
「そ、そうなの?だって…みんなだよ??」
「ルルはカワイイから・・・誰にでも安心はできないのでショウ?ねえ、ラギ?」
「・・・・・・・・・・・・・別に、んなこと言ってねー」

顔を赤らめて、アルバロとビラールに言葉で否定する。
けれど、普段自分から肌を触れ合おうとしないラギが、二人に見えないテーブルの下で、こっそりルルの手を握ったこと。
それは何だか、そうだったんだ。と認めているようで…

ルルは思わず、ラギ以上に顔を赤くしたのだった。




「レポート…手伝おうか?」
「いや、いー…あんなのすぐに終わる。つかやる気しねー…けど、心配すんな」
「…うん」

食堂からの帰り道。
少し長めの昼休みを利用して、二人で並んで湖のほとりを散歩。
その手は遠慮がちに繋がれている。

・・・ラギが、学院内でも繋ぐって珍しい…

それでも嬉しくて、抑えきれずに顔を緩ませていると。
急に足を止めてルルの顔を覗きこんだラギが…何故か少しほっとしたような顔を見せて。

「・・・な、何っ?」
「いや、おまえ笑ってるから・・・一人で笑ってんなよ。余計おかしー奴って思われんぞ?」
「元々おかしくないもんっ!!」

教室に来た時に見せた笑顔とは違って、今は本当に楽しそうな笑顔だった。
だから、ラギの張りつめていた気も緩んだのかもしれない。

「ルル…おまえオレがいないと…いつもあーなるのか」
「・・いつもって訳じゃないと思うけど…でも大体みんな誘ってくれて…ねえラギ?本当にヤキモチ?」
「ばっ!?誰がヤキモチなんか…っ!!…ただ面白くなかっただけだ!ヤキモチとかじゃねー!」

・・・それがヤキモチなんじゃ??
物言いたげなルルの視線に気付くほどの余裕もないのが、その証拠だとも言えそうだ。

「…へらへらオレといる時より楽しそうに笑って…楽しーのかよ」
「そりゃ…楽しいけど…ラギといる時が一番…ってどこかで聞いたセリフみたい」
「おまえがオレに言ったんだろーが・・オレのことばっかり言うけど、お前だってなー…」

そのまま、芝生に座りこむラギにつられて、ルルも一緒に隣に座る。
繋いだ手は、キュっと強く握り返された。

「オレが放っておいても近寄ってきて、オレを惑わせ…いや、こ、困らせてばっかだっただろ?…何急に物わかり良くなってんだ」
「・・・だ、だってラギは近づくと色々困るって…私だって、我慢してるんだよ!だから最近迷惑かけてないでしょう?」

本当は抱きつきたいし、キスだって何度もしてほしいけど…
ラギがチビドラになるのを嫌がっているのはわかるから…

それに、自分を大切に想ってくれているのもわかったから、だから我慢できる――

「ラギがキスを…くれて。待ってて欲しいって言ったから…だよ?」
「・・・・・・・・・」
「ラギ?」
「今のうちに言っておくぞ、いーな」

・・・・・・今の内?

わからないままに、ルルがうん、と頷けばラギは話す前から顔を一気に染めあげていく。

「おまえが…あんまり近づくと、正直まだ色々困る。だけどっあんまりそれを理解して距離を開けるのもどーなんだって話だ」
「…どうなんだって…どうなの?だって困るのはラギで…」
「だからって、その、今までずっと周りをうろうろ近づこうとしてた奴が、そうしなくなると落ち着かないだろ!?」
「だって!近づいても落ち着かないでしょ?」

先ほどから話が進まない気がする。
ラギは何を伝えたいんだろう?適度に近付けとか?そんなの無理だよ…ずっと傍に居たくなるのに…

「落ち着かないけど、何つーか…わかったっつーか…さ、さみしーよりは…いー…」
「・・・・・・・え・・・」

ラギの言葉に、さみしいと言ってくれた言葉に、トクっと胸を鳴らせて顔をあげようとすれば。
繋いだ手毎引き寄せられた体はラギの許に。
赤くなった顔が、まだ明るい光を閉ざして、ルルの顔に影を翳す。

二度目のキスは優しくて、息を止めているのかもわからないくらい…ドキドキして。
感じるのは、熱を持った優しく触れるラギの口唇だけ。
頬に添えられた手が、ルルを愛おしむように・・指先で軽く撫でた後、お互いの心音が聞こえるくらいに抱きしめられた――




「・・・・・・・・・・腹減った」
「うん、もう一度食堂戻ろうね…」

チビドラになったラギを遠慮なく胸に閉じ込めて、ぎゅうっと抱きしめて運べば。
火を吹きそうなほど、熱を持つ体。
ラギに、からかうようにチューっとキスをすると、『つつしみがねー!!』と怒られて。

それでも変わったことがあると言えば、ラギが私の腕の中で暴れなくなったこと。
まるで、私を抱きしめようとしているように、その躰を預けるようになったこと。







END








アリアン様

ラギルルSSリクエスト、ありがとうございました!!
FD後のラギルルで…嫉妬で、甘で!
私にはとんでもない萌え要素でした!!

嫉妬で誰に…と悩んだんですが…ワンドは全員好きなので何故か全員出てしまって…
こんなぬるい嫉妬ですけど、ムカムカしてるラギさんということで…^^;
FDの時とは反対に…ルルがチヤホヤされて、ラギがむっとすればいいと思いました(←)

甘めとのことで、FD後だし、キスくらい…と思ったんですが…
大丈夫でしょうか??

長くなりましたが、受け取って頂けると嬉しいです。
リクエスト、本当にありがとうございました!!