リクエストSS




ワンドオブフォーチュン:ビラルルSS
※リク頂いたお方のみお持ち帰り可とさせて頂きます。




『酔う前に酔いしれて』
FDED後です。



「おいしいっ」

鮮やかに彩られたプレートの上の料理に、ルルが舌鼓をうって。
それだけで春が来たように、比喩な筈の『頬が落ちそうになる』のを押さえるようにして。
幸せそうに笑顔を浮かべて、一口を噛み締めている。

「・・確かに美味だな。ここのプーペはとても優秀だ。ファランバルドに来てもらいたいものだ」
「ふふっそれならずっと食べられるものね!」

また、ソテーされた肉を一口分切り分けて、んん〜と口を緩めるルルに、ビラールは柔らかな笑顔を向ける。

「そうだな、それならもし…ファランバルドのものが口に合わなくても・・我が妃の幸せそうな笑顔を、ずっと目にすることが出来る」
「・・・お、大袈裟だと思うの」

向けられた笑顔に、言葉に、ふわふわと甘く浮く気持ち。
恥ずかしいけれど、素直な言葉がとても嬉しい―

「大袈裟ではない。少々香辛料がキツいものもある。もちろんルルの好きな甘いものもあるが…食は基本だ。そこでおまえに無理をさせることがあれば・・・」
「そんな心配することないと思うの、だって・・」

えへへ、と照れを隠すように、明後日の方向を見ながらパクっとサラダを口にする。

「ビラールと一緒に食べるから・・幸せで、いつもよりおいしい!って思うの。だから・・」

平日、授業の合間の休み時間。
ずっとべったり傍にいる訳ではなくて、ビラールはその時間をルルの時間として大切に考えてくれている。

『ルルを占有したいとは思うが、・・ここで、友達や先生と共に過ごす時間はとても大切なものだ。
私と、これから先の未来を共にする我が妃の、一生の財産となるもの。だから――』

そんな風に言われて、自分がどれだけ大切に思われているのかを知って。
もちろん、無理してまで離れているという訳ではなく、会えばその視線だけで愛を伝えてくれて、必要以上にスキンシップを求めることはしない。

そんな平日の日々。
だけど今日は朝から中々会えなくて、こうして夕食を共にする時間が…とても嬉しくて仕方がなくて。
だから、きっと、いつも以上に顔を緩めていたのだろう。

ルルの言葉に、ビラールは食べることを一端止めて。
褐色の手をルルにゆっくり伸ばした。指先は優しくルルの顎に触れる程度。
ルルはそれでも、確かな意思に誘導されるように、頬染めた顔をビラールに向けた。

「おまえは何時でも・・私を惑わせる術を持っているのだな」
「そんなのしてないっ・・・それはビラールの方でしょう」
「我が妃のその惑わしに、ここまで耐えているのだから・・これくらいはよいだろう?」

まだ賑わう食堂の中、そのビラールの言葉に、二人の周りだけがシンとした音に包まれた気がした。
頬に掠れるように温かいものが触れて、名残惜しそうに去っていく。

「こ、ここは食堂なの!」
「今のはルルの誘いに、私が乗っただけだ。無視するのは失礼だろう」
「さ、誘ってなんかないっ!もう〜…」

恥ずかしさにパクパクっと、勢い口に運んでううっと詰まらせれば、ビラールが罪の意識などまるでない顔で水を渡してくる。

「大丈夫か?ルルの可愛らしい小さな口に、無理して詰め込めばそうなるのは当然だ」
「…大丈夫」

いつか、何かにつけて褒め言葉をさらっと口にするビラールとのやりとりに、慣れる日も来るのだろうか。
そんな日、今は想像も出来ないけど…

「時に、ルル。おまえが飲んでいるのは…」
「これ?これすっごくおいしいのよ。何とかっていう果物を絞ったのに、ココナッツミルクを足してもので・・・アミィがおいしいよって教えてくれたの!」

一番肝心なところを忘れているルルに、ビラールも思わずフッっと笑い声を漏らしてしまう。

「そうか。口に合って何よりだが…それは、この料理にも合うのか?」

甘い香りが、ルルがグラスを手に取り、口に運ぶ度に漂ってくる。
肉にかけられたソースと、香りも風味もぶつかり合ってしまうのではないかと、二つを交互に目を向けた。

「料理に…合ってるかどうかはわからないけど、飲みたかったの。アミィがせっかく教えてくれたから早く飲んで一緒に話したくて!」

今の料理に合うか合わないか、ではなくて、ルルが大事にしているのは…
ビラールはそんなルルに、一層愛おしそうに視線を向けた。
毎日毎日、ルルを好きだと実感する時間がある―

「ビラールはお水なのね」
「ああ、本音はワインでも口にしたいところだが…」
「ワイン…だとこのお料理に合うの?」

興味深そうに首を傾げるルル。
そんなルルを横目で見つめると、ビラールは笑を深くした。

「ルルは、ワインを嗜んだことはないのか」
「ええ、ないわ」

ルルの年齢を考えると、口にする機会はなかったのだろう。
いずれ、一緒に嗜む時などいくらでもある。今、無理して進めることはないけれど…

「ビラール?どうしたの?」

食が進まなくなったビラールに、ルルが心配そうに覗きこむ。
そんなルルに、ビラールはふふっと楽しげな小さな声と共に、大人の笑顔を張り付かせたのだった。

「・・・・・な、なあに?」

ルルがつい、怯みがちになって少し体をずらしたのだけど。
簡単にその体は力強い腕によって引き寄せられてしまった。


「これがワイン?」

夜の帳が降りる中、泉に星が反射して。
僅かな光が藍の幻想で二人を包んでいる。

いつもの場所。
今日はいつものように精霊・リアンに力を戻す為、ではなく。
二人の憩いの為だからか、静かに見つめるように木々のざわめきも少ない。

「そう、これはフルーツの香りが強い。ルルも気に入るとは思うが」
「・・でも、私お酒は…」
「もちろん、無理強いして飲ませる気はない。…愛する我が妃にそんなことを…私がする筈ないだろう?」

確認のように告げる言葉とともに、二人の瞳の距離が近づいて。
ゆっくり重なる口唇―

「―――甘、い…」
「そうだろう、飲まずとも…どのようなものか、知っているというのも悪いことではない」

そうしてまた、ワインを含んだビラール。
ゆっくり嚥下して、コクっと鳴る喉、細める金の瞳がまた近づいて…頭がクラクラする。

「ん・・・っ」

絡まる舌には確かにワインの風味が残ってて。
口にしていないのに、口腔に広がる香り―

口唇が離れて、また近づいて。
キスだけで頬は上気して、目はとろんと落ちて誘うようにビラールを見上げて、口唇はずっと濡れたまま。

「・・・まだ、味見するの?私もう―」

頭がクラクラする。
一滴も口にしていないのに、酔うってこういう状態なのかな・・と思うほど。
体が熱くて、中から熱が騒いでる。

自分とは違って、キスする前に必ず一口口に含んでいる筈のビラールは、全く平気そうで…

そんなところで、大人と子供の違いを見せつけられるような感覚。

「ビラールはお酒強いのね。私その香りだけでもう…くらってする」
「昔から社交で飲むことが多い。そのせいもあるだろうが…私はもうとうに酔っっている」

いつもと変わらない笑顔で、顔色一つ変えずに何を・・?と不思議そうな顔をするルルに、今度は何も含まずに。

「我が妃に――」

その言葉の意味を理解する前に、言葉に体が支配される―
強く抱きしめられながら、何も含んでいない、熱いキスを注がれて。

そのキスに酔っているのだと、ルルが気が付いた時には――





END







ビラルルSSです。
FDED後、甘め…と言われたらこんな風なのしか思いつかない私です。
すみません!!

殿下だと、どうしてもこう艶の方に行きがちになります。
きっと…この後、殿下は魔力をすごく充電出来たことかと…(←)

未成年は飲酒禁止、とかミルスクレアにあったかな…と悩んだんですが。
なので飲んだら駄目とかはっきりとは書いてないですが…日本は駄目ですよ!(当然)

こ、こんなものですが…甘くしたつもりです。
リクしてくださった方、受け取ってください!

リクエストありがとうございました!!